借金の債務整理をおすすめする人の4つの特徴

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金がかさんで生活が苦しくなった場合、解決方法としては「がんばって返済する」「思い切って債務整理を行なう」の2つに大きく分かれます。

もし借金の額がそれほど多くなく、収入も安定しているのであれば、なんとか完済までこぎ着けられる可能性もゼロではありません。

その場合は、返済の管理を楽にするための「おまとめローン」などの利用を検討してみてもいいでしょう。

一方、多額の借り入れをしていて今の収入では完済のめどが立たない場合は、債務整理を検討したほうが経済的・精神的に楽になります。

ここでは、どちらを選ぶべきか迷っている方のために、借金の債務整理を検討したほうがいい人の4つの特徴についてご紹介します。

①借金の返済のめどが立たない人

「借りたお金はなんとか自力で完済したい!」と思うのはもちろんいい心がけなのですが、借金の額によってはそう言ってもいられないこともあります。

返済が楽になるイメージのある「おまとめローン」も、要は借金の借り換えに過ぎませんので、借金の額が大きく、収入も今後増える見込みがない場合は、思い切って債務整理を検討するのがおすすめです。

借金がどれぐらいふくらんだら債務整理をするべきかについては、よく「借金の返済額が年収の2割を超えた場合」が基準といわれます(住宅ローンを除く)。

つまり年収400万円の人の場合、返済額が年80万円(月に換算すると約66,000円)を超えるようであれば、債務整理を考えたほうがいいということです。

これはあくまで一般論ですので、ほかの支出が多い方であればもっと基準を低くする必要があります。普通に考えて、年収400万円の人が住宅ローン以外の借金を月々66,000円返済するだけでも、かなり厳しいものです。

さらに車など他のローンも組んでいる場合は、それも入れて計算しなくてはいけません。

いずれにしても、自分の収入と支出のバランスをじっくり見直した上で「このままでは完済が難しそうだ」と思ったら、まずは弁護士の無料相談に行ってアドバイスをもらうことをおすすめします。

②失業や病気などで返済が難しくなった人

借金をコンスタントに返済していくためには、当然ながら安定した収入が必要ですので、何らかの理由でそれが断たれてしまった場合は債務整理を検討する必要があります。

リストラや倒産などで突然職を失うこともありますし、病気で休職せざるを得なくなってしまうことも人生にはあります。その間、失業保険や傷病手当などで最低限の生活費は確保できたとしても、借金の額が多い場合は返済が間に合わないかもしれません。

すぐに元通りの収入を得るのが難しそうな場合は、債務整理も視野に入れて考えてみてください。

③古くからの借金がある人

取引期間の長い借入先がある場合も、債務整理を検討してみましょう。

古くからある借金の場合、現在は撤廃されている「グレーゾーン金利(最高29.2%)」が過去に適用されていて、本来払う必要のない利息を払っていた可能性があります。

今は貸金業法が改正されたことで、どの貸金業者でも利息制限法の上限(年15.0~20.0%)を守って貸付を行なっていますが、改正前(おもに2007年以前)に借金をしていた場合は、過払い金が発生しているかもしれません。

弁護士に債務整理を依頼すると、現在の利率での引き直し計算が行なわれ、もし過払い金がある場合は返還請求をしてもらうことができます。その結果、借金の総額が減ったり、人によっては借金自体がなくなったりすることもあるのです。

古くからの借金がある方は、まず弁護士に相談してみてください。

④借金の督促をストップしたい人

返済が遅れているために借金の督促が来て悩んでいる方も、早めに債務整理を検討するべきです。

弁護士に債務整理を依頼すると、「受任通知」が各債権者に送られ、その時点で債権者は債務者に直接取り立てを行なうことができなくなります。これは貸金業法という法律で決められているため、違反すれば刑事罰の対象になるのです。

弁護士に債務整理を依頼する場合は、それが任意整理・個人再生・自己破産のいずれであっても、まず各債権者に受任通知を送付しますので、督促はぴったりと来なくなります。

また、連絡もすべて代理人である弁護士を通して行なうため、精神的にとても楽になるはずです。

 一部の借金だけを整理したい人は、任意整理の検討を

債務整理の中でも、もっとも優先して行なわれる「任意整理」では、整理したい借金を自由に選ぶことができますので、以下のような方におすすめです。

  • 保証人を立てている借金がある人
  • 車や住宅のローンがある人

たとえば保証人のいる借金がある場合、その借金だけは任意整理の対象からはずすことで、保証人に迷惑をかけずに済みます。

また車や住宅を手放したくない場合も、それらのローンだけは整理せずにこれまで通り返済を続けることが可能です。

ただし、任意整理ができるのは「減額後の借金を3~5年で完済できるケース」に限られますので、あまりに借金の額が多い場合は個人再生自己破産などを検討することになります。

個人再生や自己破産では、整理先を選ぶことはできないため、保証人がいる場合は迷惑がかかってしまう点に注意が必要です。

まとめ

以上、借金の債務整理をしたほうがいい人の特徴についてご紹介しました。

債務整理は、どの方法を選んだ場合でも信用情報に傷がつきますので、がんばって完済できるのであればそれに越したことはありません。

しかし、すでに負債がふくらんでいるのに漫然と自転車操業を繰り返すのでは、逆に自分の首を絞めることになってしまいます。

任意整理の項でご説明したように、債務整理の中でも個人再生と自己破産では整理したい債権者を自由に選ぶことができません。

そのため、保証人がいる借金も整理の対象となり、残債の支払いは保証人に請求がいきます(支払えない場合は、保証人も債務整理を行なう必要があります)。

また、個人再生と自己破産では国の発行する「官報」という機関紙に氏名と住所が掲載されるほか、ブラックリスト期間が任意整理より長引くことがある点もデメリットです。

債務整理をするなら、比較的簡単でデメリットの少ない任意整理ができるよう、負債が大きくふくらむ前に早めに相談することをおすすめします。

債務整理では借金の理由は問われる?

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

債務整理をする場合、借金の理由は問われるのでしょうか?

結論からいいますと、任意整理特定調停個人再生の3つでは、借金の理由は一切問われません。つまりギャンブルや浪費で作った借金であっても、問題なく行なうことができます。

借金の理由が問われる債務整理は、自己破産のみです。

自己破産は借金の返済を免除してもらう手続きですので、借金の理由によっては認められないこともあります。ただしその場合も救済措置はあるため、必ずしも自己破産ができないわけではありません。

以下で詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

任意整理や個人再生では、借金の理由は問われない!

債務整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4つがありますが、自己破産を除く3つの手続きはいずれも借金の理由にかかわらず行なうことができます。

特に任意整理は、債権者と直接交渉することで借金を減額してもらう方法ですので、裁判所の許可も不要です。

債権者としても、個人再生や自己破産をされるよりは回収できる金額が多いため、借金の理由にかかわらず合意に応じることが一般的です。

一方、個人再生は自己破産と同じく裁判所を介して行なう手続きですので、再生計画案の認可を受けるにあたって、借金を作った事情などをまとめた書類を提出する必要があります。

しかし、個人再生では「こういう理由で作った借金はダメ」という決まりはないため、再生計画案が認められれば借金の理由にかかわらず認可は下ります。

もう一つ、簡易裁判所の仲介のもとで行なう特定調停でも、借金の理由は特に問われません。

自己破産では「免責不許可事由」にあたる可能性がある

債務整理で借金の理由が問われるのは、自己破産です。

自己破産は、裁判所に申し立てを行なって借金を免除してもらう手続きです。任意整理や個人再生では解決が難しい場合に行ないます。

ただし、借金が多ければ誰でも自己破産ができるわけではありません。「破産法」という法律の中で「免責不許可事由」というものがいくつか定められており、いずれかに該当する場合は免責が受けられない、つまり借金がそのまま残ってしまうことがあるのです。

免責不許可事由にあたる借金とは?

免責不許可事由は複数ありますが、そのうち借金の理由にかかわるのは「破産法252条4項」の部分です。

浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

e-Gov「破産法(平成十六年六月二日法律第七十五号)第二百五十二条」より

「浪費または賭博」とありますので、パチンコ・パチスロ・競馬・競艇などのギャンブルはもちろん、高額な買い物やエステ、キャバクラ、旅行などで借金を作った場合も免責不許可事由にあたります。

また「射幸行為」とは、「偶然に得られる成功や利益を当てにした行為」のことですので、宝くじや株取引、FXなどが該当します。

上記のほかにも、財産隠しをした場合や、特定の債権者だけに返済を行なった場合、前回免責許可の決定を受けた日から7年以内に再度申し立てをした場合なども免責不許可事由にあたります。

免責不許可事由でも、「裁量免責」を受けられることがある!

「それじゃ、浪費やギャンブルで作った借金では自己破産できないんだ…」と絶望する方もいるかもしれませんが、実はそうとも限りません。

破産法252条の2項では、以下のように規定されているからです。

前項の規定にかかわらず,同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。

e-Gov「破産法(平成十六年六月二日法律第七十五号)第二百五十二条」より

つまり、免責不許可事由に該当する場合でも、さまざまな事情を考慮した上で裁判所が免責を許可できるということです。このことを「裁量免責」といいます。

実際の破産手続きでは、よほど特別な事情がない限り、免責不許可事由があっても裁量免責が認められています。

ですからギャンブルや浪費でこしらえてしまった借金であっても、自己破産できる可能性は十分にあるということです。

ただし、同じような借金で何度も自己破産の申し立てをするなど、生活を立て直す努力がみられないような場合には、さすがに裁量免責も認められにくくなります。

また、故意に財産を隠したり、自己破産をすることを分かっていて新たな借金を作ったりするなどの悪質な行為がある場合は、免責を受けられない可能性がさらに高くなります。もし自己破産が認められなければ、個人再生などの債務整理を検討しなくてはいけません。

どのような理由で作った借金であっても、1回目であればほとんどの場合は裁量免責を受けられますが、一度自己破産をした後は二度と次がないように、生活をしっかりと見直すことが大切です。

ギャンブルや浪費で作った借金は、「管財事件」になることも

免責不許可事由にあたる借金でも、裁量免責で自己破産が認められる可能性は十分にありますが、注意したいのは「管財事件になる場合がある」ということです。

自己破産には、大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」の2つがあり、前者は財産がほとんどない人の簡易的な手続き、後者は一定以上の財産がある人のやや複雑な手続きになります。

通常、財産がない場合は同時廃止となるのですが、ギャンブルや浪費で借金を作った場合は例外的に、「免責観察型の管財事件」として扱われることがあるのです。

管財事件になると、「破産管財人」が裁判所によって選任されます。破産管財人は、申立人の財産を調べたり、必要に応じて財産を換金して債権者に分配したりするため、申立人は報酬(30万~50万円)を支払わなくてはいけません。

また免責観察型の場合、破産管財人が債務者を呼び出して生活状況を見たり、反省しているかどうかをチェックしたりします。その上で、最終的に裁判所に免責に関する意見書を出します。そこで、管財人との面談や管財人に与える印象が非常に重要となります。

特に2回目以降の申し立てや、額の大きいギャンブルや浪費があった場合は、管財事件になる可能性が高くなります。ただし、「いくら以上の借金を作れば管財事件になる」という明確な決まりがあるわけではないため、同時廃止で済むか管財事件となるかは申し立ててみないとわかりません。

参考:自己破産の「同時廃止」と「管財事件」の違い

まとめ

債務整理と借金の理由の関係についてまとめてみましょう。

  • 自己破産以外の債務整理では、借金の理由は問われない
  • 自己破産では、ギャンブルや浪費で作った借金は「免責不許可事由」にあたる
  • よほど悪質でない限り裁量免責が認められるが、管財事件になる可能性がある

任意整理や個人再生は、どのように作った借金であっても関係なく行なえますし、自己破産も1回目の申し立てであれば、裁量免責が認められる可能性が大です。

ただし2回目以降の申し立てや、よほど悪質とみなされた場合などは認可を受けられないこともあります。

ちなみに、どのような債務整理をするにしても虚偽の申告をするのはいけません。特に裁判所に申し立てを行なう個人再生と自己破産では、虚偽の申告がバレた場合、認可(免責)を受けられないリスクが跳ね上がってしまいます。

たとえギャンブルや浪費で作った借金であっても、個人再生では関係ありませんし、自己破産でも免責を受けられることがほとんどですので、借金を作った事情や財産などは正直に申告するようにしましょう。

任意売却と代位弁済の関係

執筆者

西岡合同事務所

司法書士 西岡 容子

任意売却とは、住宅ローンの支払いが難しくなった際に債権者の競売ではなく、債務者自らが売却を行う方法です。

任意売却ができる時期は法的に決まっているわけではありませんので、銀行の後ろについている保証会社が「代位弁済」をしてしまった場合でもなお行うことが可能です。

ただ、いつまでもできるわけではなく、できる時期の限界(終わり)がいつなのかということを覚えておきましょう。

任意売却とは?

「任意売却」とは、「競売」と対になる言葉と考えればよいでしょう。

競売とは債権者が裁判所に申立てをし、裁判所が主導で手続きを進めていく売却方法です。もし債務者が住宅ローンを滞納して、そのまま何もせずに放置すれば債権者は時期を見て競売の手続きに入る流れになります。

任意売却はこれに対し、債務者が自らが不動産を市場に出して売却する方法です。外形的には不動産業者を入れた通常の売買とほぼ同じ形になりますが、物件の売却代金で抵当権をつけている債権者に完済することができない(それでも抵当権を抹消してもらうよう交渉が必要)のが特徴です。

住宅ローンの滞納につき債権者に相談すると、リスケジュール(弁済期間の伸長など)で対応できない多くの場合に「任意売却」をすすめられます。

任意売却は一般的に競売より高値で売却できるため債権者の取り分も多くできますし、債務者にとっても通常の売却と同様の流れで売ることができて、競売よりも心理的負担を軽減することができるというメリットがあるからです。

参考:任意売却と競売徹底比較!

任意売却はいつから始めることができるのか?

実際に住宅ローンを滞納していなければ任意売却を始めることができないという情報も出回っていますが、これは間違いです。

すでに住宅ローンを完済できない可能性が高い、という状況であればあとは債務者さえ決意すれば手続きに着手することはできます。

つまり法律上、任意売却の始期が明確に決まっているわけではないのです。

ただ、上記のように債権者が「売却代金をローンの返済に充てても完済してもらうことはできないが、それでも抵当権を消す」という判断をしなければならないわけですから、まだ普通に債権を回収できる状態である(=任意売却に踏み切る段階ではない)とみれば債権者が抵当権抹消を拒否してくる=事実上、任意売却できないというだけなのではないでしょうか。

代位弁済とは?

住宅ローンにおける代位弁済とは、銀行などの後ろについている「保証会社」が債務者がローンを一定期間(おおむね3か月くらい)滞納した際に債務者本人に代わって銀行に返済するシステムです。

これは、債務者と銀行が「住宅ローン契約」をする際に「保証委託契約」といって、保証料を支払って保証してもらう契約をしているからです。

ただし保証とはいっても「団体信用生命保険」のように、支払いをしてもらうことによって債務者が免責されるというものではなく、保証会社が代位弁済をすると今度は銀行に代わって保証会社が債務者本人に請求をしてくることになります。

この状態になるとすでに住宅ローンとしての性質は失われているので債務者は「期限の利益(分割払いできる権利)」を失っており、原則的に一括請求を受けることとなります。

銀行がこのようなシステムを取っている理由としては、自行で不良債権の回収まで行うノウハウを持たない、あるいは業務としてそれを行う余力がないことが考えられます。

保証会社が直接債権回収を行うこともありますし、そこからさらにサービサー(債権回収の専門会社)に債権が譲渡されることもあります。

一般的にサービサーは元の債権の1割未満の金額で債権を買い取っていますので、任意売却した後になお残ってしまった債務はサービサーとの交渉次第で減額してもらえる可能性もあります。

代位弁済が行われた後でも任意売却はできるか?

代位弁済が行われた=保証会社から請求が来る状態では、もう任意売却はできないのではないかと考えている人もいるのですが、任意売却の可否は代位弁済とはまったく関係ありません。

代位弁済どころかその後の競売が始まった状態であっても任意売却を開始することは可能です。

債務者と保証会社が住宅ローン契約時に「保証委託契約」を結んでいる場合、登記簿上の抵当権者は保証会社になっているはずです。

これは不動産業者が気をつけるべきことですが、任意売却を進める場合、抵当権抹消(債権者の損切り)交渉の相手は銀行ではなく保証会社である場合も多いことに注意が必要です。

また、事案によっては、登記簿上の抵当権者は銀行になっているので銀行に交渉をしようとしたら「この融資は保証協会がついているので、こちら(銀行)は全額保証協会から代位弁済を受けて抵当権を保証協会に移転させることになります。

よって、代位弁済後に保証協会との間で交渉してください。」と言われることもあります。

交渉をいつ(代位弁済の前後)、誰とするべきなのかはこのようにケースバイケースで判断しなければならない面があり、そのような意味でも債務者(依頼者)は、任意売却の経験が豊富な不動産業者を選んで依頼する必要があるといえます。

任意売却ができる時期の終わりはいつなのか?

任意売却は競売が始まっていてもできると説明しましたが、もちろん、いつまででもできるわけではありません。

要するに、競売を申し立てた債権者が任意売却に対して納得し、競売を取り下げてくれればよいわけなので、それが可能な時期=任意売却への切り替え可能な時期となります。

競売から任意売却に切り替えられる具体的時期は、建前上は「競売によって買い受けた買受人が代金を納付するまで」となりますが、実務的にはもう少し早い段階と考えられます。

債権者が競売の手続きを始めて、すでに入札期日が決まっている状態まで来ているとなかなかそれを覆してもらうことは難しいのではないでしょうか。

その段階までいくともちろん担当者レベルでの判断はできず、銀行内での稟議等の手続きが必要になると考えられるため簡単には進まないと考えておかなくてはなりません。

いずれにせよ、あまりぎりぎりまで引っ張らず、債務者はもう将来的に返済が不可能だと感じたらなるべく早い段階で任意売却に踏み切ることが大切です。

個人と法人の債務整理の違い

執筆者

西岡合同事務所

司法書士 西岡 容子

債務整理をする主体は「個人」の場合と「法人」の場合があります。

法人の債務整理というと大企業の債権者集会などがイメージされますが、実際には社長と従業員数人でやっているごく小さな法人というケースが圧倒的に多いでしょう。

しかし、それでも「法人成り」していたというだけでその手続き過程に違いが出てくることもあるのです。

では、破産手続きを中心に、主体が個人・法人の別によりどのような違いが生じるのか、また法人が破産する際の注意点などを確認してみましょう。

手続きの進行上の違い

自己破産においては「個人」の債務者が自己破産する場合、その9割方は「同時廃止」に振り分けられますが、これは破産手続開始決定の後すぐに終結して免責の手続きに移るものです。

その理由としては、本来破産手続きで行うべき「債権者への配当」をできるだけの財産がないからです(ただ、免責不許可事由といって裁判所から不実な行為等があったと判断されるケースでは破産管財人がつく「管財事件」となることもあります)。

一方で、「法人」の場合は、裁判所の管轄によって扱いが異なることもありますが、法人の破産申立てがされると無条件で管財事件に振り分けられる運用をしているところも多いのが実情です。

たとえば東京地裁の例を見ると、以前であれば営業を停止して資産がない法人については同時廃止を認めるという運用がされていましたが、これは平成12年9月以降は廃止されており、すべての案件で管財事件に振り分けられています。

管財事件になった場合、手続きの大まかな流れとしては「裁判所によって破産管財人が選任される」「予納金を支払う」「破産管財人との打ち合わせ」「破産管財人による財産・負債調査や配当等の業務」「債権者集会・(個人の場合のみ)裁判所による免責審尋」「裁判所から免責許可決定をもらう」のようになります。

同時廃止が2、3カ月以内くらいでスピーディに終わるのに対し、管財事件は半年以上(不動産の売却などを伴う場合はさらに長いことも)とかなり時間もかかりますし、予納金を準備しなければならないという問題もあります。

予納金については、多くの事案で「少額管財」となり20万円程度となることが多いのですが、事案が複雑になれば金額がさらに高くなることもあります。

また、これを分割払いできるかどうかも各地方裁判所の判断に任されている部分があるので、申立ての前に担当の弁護士とよく打ち合わせ、確認しておくことが大切です。

なお、後にも述べますが、法人の代表者が法人の連帯保証人になっていることもよくあるのですが、そのため法人の経済的困窮はその代表者の困窮と連動していると考えられます。

よって、もし代表者個人だけが自己破産の手続きを取ろうとすると、裁判所はその原因となった法人の破産を同時に申し立てるように促します。

法人の場合、個人と異なり主体そのものが消滅する

個人であれば破産手続きを取ったからといってその人がいなくなるわけではありませんが、法人の場合、破産手続きにより「法人そのものが消滅してしまう」という特徴があります。

「免責」のプロセスがない

上記のように法人の場合は支払いの主体そのものがいなくなるわけですから、個人破産のような「免責」の手続きを経る必要がありません。

法人には「非免責債権」もない

個人の破産では、税金や離婚した場合の子供への養育費など、破産、免責を経ても免れることのできない「非免責債権」と呼ばれるものがあります。

しかし、法人では上記のように支払いの主体が消滅しているため、非免責債権という概念そのものが存在しません。

法人の債務整理で特に気をつけること

会社を清算するにあたっては、個人の債務整理とは異なり、周辺に発生するさまざまな問題があります。

債権者や株主への対応

会社の代表者は、会社の清算にあたってはなるべく債権者や株主に迷惑をかけないようにしなければと考えることが当然の感情ですが、いったん破産手続きを決意したら決して債権者相互を不公平に扱うようなことをしてはならない点に注意したいものです。

もし、偏頗弁済(へんぱべんさい:どこかの債権者だけに先に弁済したり、担保を提供するような行為をすること)があれば、後々その行為は破産管財人により否認されてしまうことになります。

また、これから清算しようとする会社が個々の株主から株式を買い取り、その分の資金を返還しようとすることも許されません。

とにかく、弁護士、裁判所、破産管財人などに相談もせず、代表者がその一存で各債権者や株主に個別の対応をすることは厳に慎まなければならないのです。

従業員への未払い賃金等

会社を清算する場合、上記のように法人自体が消滅するため当然従業員は解雇ということになりますが、清算前一定期間の賃金や退職金は支払われていないことが多いはずです。

未払い賃金や退職金は従業員の生活にダイレクトに影響しますので、破産手続きにおいてはこれらは優先的に支払うべき債権となっています。

ただ、やはり破産財団(債権者等に支払うことが前提で確保している債務者の財産の集合体)の金額自体が不足していて、建前上は優先権を有していても支払えないことも珍しくありません。

そこで、「独立行政法人労働者健康安全機構」による立替え払いを利用することも一つの方法です。これは、労災保険の適用事業所(1年以上事業活動を行っていたこと)に雇用されており、賃金等が支払われないまま退職したなど、一定の要件を満たした人に政府から立替え払いがされる制度です。

もちろんこれはあくまで「立替え」に過ぎないため事業主は賃金支払い義務を免れるわけではなく、国に立替え分を返還しなければなりません。

代表者が連帯保証人している債務の処理

金融機関からの借り入れでは、一般的に代表者は会社の連帯保証人となっています。このような場合、会社の破産手続きを行っても代表者個人の債務は残る形になります。

もちろん、代表者個人に返済可能な資産があればよいのですが、会社を畳むほど困窮しているのであれば代表者が個人的な資産を豊富に持っているケースの方が少ないのではないでしょうか。

そうなると、債権者と話し合って可能な範囲での分割弁済をする選択肢もありますが、代表者個人も破産手続きを取ることが一番根本的な解決に適している手段です。

債務整理でおすすめできる弁護士4つの特徴

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

債務整理をするにあたって、弁護士選びは非常に重要なポイントになります。

「債務整理なんてやることは同じなんだから、どこに依頼しても大して変わらないのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

たとえば任意整理では、依頼を受けた弁護士が債権者と直接交渉を行ないますので、できるかぎり有利な条件で和解するためにも腕のいい弁護士に依頼する必要があります。

ここでは、債務整理でおすすめできる弁護士の特徴を4つ紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

①債務整理を専門としており、実績が豊富である

債務整理の弁護士選びにおける最重要ポイントは、「債務整理に強い弁護士かどうか?」ということです。

一口に弁護士といっても、それぞれ得意とする分野は異なります。たとえば離婚問題を専門に手がける弁護士もいれば、交通事故の示談交渉に強い弁護士もいますので、債務整理を依頼するなら債務整理を専門とする弁護士を選んだほうがいい、ということになります。

その弁護士がどんな分野に強いのかを知るには、法律事務所の公式サイトを見るのがおすすめです。弁護士事務所のホームページは、それぞれ得意とする専門分野に関するコンテンツが充実していることが多いため、一つの判断材料になります。

また、実績も必ずチェックするようにしましょう。たとえば最近オープンしたばかりの新しい法律事務所では、債務整理の実績がほとんどないところもありますし、逆に昔からある法律事務所でも「最近は債務整理をあまり手がけていない」という場合があります。

特に債権者と直接交渉する任意整理では、弁護士に実績がないと足元を見られて債権者に有利な条件で決着がついてしまう可能性もあるため、できればここ数年の相談実績や実際の事例をしっかり公開している法律事務所を選ぶと安心です。

もしホームページだけではわかりにくい場合は、電話で問い合わせてみましょう。

②費用の総額をわかりやすく教えてくれる

弁護士に債務整理を依頼するにあたって、多くの人が不安に思うのが費用のことです。

債務整理をしなければいけない状態の人は、経済的に余裕がないことがほとんどですから、一体いくらかかるのか心配になるのも無理はありません。

せっかく債務整理をするのにお金のことで不安にならないよう、少なくとも「おおよその総額」を教えてくれる弁護士を選ぶのがおすすめです。ホームページを見てもよくわからない場合は、直接確認してみましょう。

特に債務整理の弁護士費用でわかりにくいのが、「報酬金」です。いくつかの法律事務所のホームページを見てみるとわかるのですが、たとえば任意整理の場合、以下のいずれかの料金体系になっている事務所が多くみられます。

  • 1社につき着手金40,000円・減額報酬なし
  • 1社につき着手金20,000円・減額報酬10%
  • 着手金なし・1社につき基本報酬が20,000円程度

①は着手金のみとなっているため総額がわかりやすいのですが、②は着手金が低く抑えられている代わりに、実際に減額できた金額の10%を報酬として支払う必要があります。つまり、実際に和解してからでないといくらかかるのかわかりません。

また、③のように着手金なしで基本報酬制となっている事務所もあります。この場合、もし和解が成立しなかった場合は費用がかかりません。

どれが一番お得なのかはそれぞれのケースによっても違いますので、一概にはいえませんが、後からびっくりしないためにも「大体どれぐらいになりそうか」を教えてもらうようにしましょう。

費用についてわかりにくいことがある場合は、遠慮せず直接確認してみてください。

法テラスの立て替え制度について

「法テラス(日本司法支援センター)」では、経済的に苦しい人のために弁護士費用の立て替えを行なっています(収入や資産の条件を満たす必要があります)。立て替えてもらった後は、月々5,000~10,000円の分割払いで返済していくことが可能です。

民事法律扶助は、法テラスと契約を締結している法律事務所でのみ利用できます。今の状態では費用の支払いが難しい場合は、法テラスの契約弁護士に相談してみましょう。

③無料相談や分割払いに対応している

債務整理を考えている人は、経済的に苦しい状況にあることが多いため、初回の法律相談が無料になっているところを選ぶのがおすすめです。

通常、弁護士への法律相談は30分につき5,000円ほどかかりますが、最近は弁護士業界の競争が激しくなっていることもあり、無料で相談に応じる法律事務所が増えています。無料になる回数や時間などは事務所によって異なりますので、事前に確認しましょう。

また、債務整理の弁護士費用を一括で支払えない方は、法テラスの民事法律扶助を利用するか、それが難しい場合は分割払いできる法律事務所を選ぶことをおすすめします。

④債務整理後のアフターフォローを行なっている

自己破産を除く債務整理(任意整理や個人再生)は、借金を減額してもらう方法になりますので、手続きが終わった後も3~5年間は返済の義務があります。

その間、とどこおりなく返済していけるようなアフターフォローがあることも、弁護士を選ぶ際のポイントです。

たとえば、以下のようなアフターフォローがあるかどうかを確認しましょう。

債務整理後も引き続き「代理人」になってくれる

債務整理の手続きが終わった時点で、弁護士が代理人を辞めてしまうと、もし返済が遅れた場合は債権者から債務者に直接連絡が入ることになります。

また、途中で失業するなど思わぬトラブルが起きた時、誰に相談していいのかわからなくなってしまいますので、完済までの間ずっと継続して代理人を務めてくれる弁護士を選んだほうが安心です。

債権者に毎月まとめて返済してくれる(代行弁済)

債務整理を行なって借金が減額された後、決められた金額を毎月債権者に返済していくことになりますが、複数の借入先で整理を行なった場合、それぞれに返済するのは手間がかかります。

そこで便利なのが「代行弁済」です。代行弁済では、債務者が弁護士の口座に月々の返済額を一括で振り込み、弁護士が各債権者に返済します。

これなら、債権者によって返済日が異なっていたとしても月1回の振り込みで済みますし、弁護士が責任をもって期日までに返済を行なってくれます。

ただし、1社につき1,000円程度の代行弁済手数料がかかる場合が多いため、事前にしっかり確認しておきましょう。

追加の手続きを低額で依頼できる

たとえば任意整理を行なった後も、その後の生活の変化によって返済の継続が難しくなることもあります。

そんな時は、2回目の任意整理を行なうか、もしくは個人再生自己破産などの手続きを検討することになりますので、その際の弁護士費用がなるべく安く済むようなフォロー体制のある法律事務所ですと安心です。

まとめ

債務整理でおすすめできる弁護士の特徴についてご紹介しました。

司法制度改革によって近年弁護士の数は増加しており、特に都市部にはたくさんの法律事務所があります。その中から、自分で依頼先を探すのはなかなか大変なものです。

債務整理を専門とする事務所の中には、テレビCMや中吊り広告などで大々的に宣伝をしているところもありますが、宣伝文句や事務所の規模だけで「いい弁護士かどうか」を判断することはできません。

上で挙げたようなポイントを踏まえた上で、やはり最終的には直接面談し、弁護士の人間性を見ることも重要です。

話をしっかりと丁寧に聞いてくれて、いいことも悪いことも含めて誠実に説明してくれる弁護士を選ぶことをおすすめします。

離婚に伴い任意売却した場合、残債務はどうなる?

執筆者

西岡合同事務所

司法書士 西岡 容子

マイホームを購入してしまった状態で離婚する場合、手続きの面で非常に大変になることがあります。

特に配偶者が連帯保証人になっていたり、夫婦で連帯債務にしているなどのケースでは離婚したからといって簡単に債務を免れることができません。

では、思い切って物件を手放す選択をした場合は、売っても残ってしまった債務はどうなるのでしょうか?

離婚とマイホーム

マイホームを持っている夫婦が離婚する場合、住宅ローンを完済していればそれほど問題は複雑ではありません。

たとえば財産分与として物件を夫が妻に渡すなどの場合でも、贈与税の支払いさえクリアできれば比較的スムーズにいくでしょう。

しかし厄介なのはまだローンが残っている状態での離婚です。

よくあるのが、「慰謝料代わりにマンションをもらう」などと妻が簡単に考えているケースです。夫が銀行との間でローン契約を締結している以上、銀行が認めなければ物件の名義を変えることはできません。

所有権もローン債務者も夫名義のままで妻が住んでいると、夫がローンを滞納すれば結果的に妻は物件を追い出されてしまいます。

また、妻が夫の連帯保証人になっているといったケースも多々ありますが、妻が離婚に伴って物件から引っ越すので連帯保証人を抜けたいなどと言っても、他の保証人をつけるか他の担保を提供するなどしなければ抜けさせてもらうことは難しくなります。

要するに、離婚という身分関係は夫婦の問題ですが、ローンは銀行と債務者、連帯保証人との間の契約であるため夫婦が思った通りにはできないということです。

売却してもローン完済が難しいなら「任意売却」となる

夫婦が離婚に発展するケースでは多くの場合、経済的困窮も伴っています。

夫婦で負っていたローンをどちらかだけにする(片方の分をもう片方が肩代わりする)くらいの余裕があればよいのですが実際、それは難しいことが多くなります。

ローンの関係で銀行との折り合いがつけられない場合、残る選択肢は「物件を手放す」ということになるのですが、たとえ物件を売却してもローンが返済しきれないこともあるでしょう。

そのような時は、手続きの大体の流れとしては通常の売買と同じになるものの「完済はできないが抵当権を抹消してほしい」旨を銀行と交渉することになります(抵当権を抹消できない状態で売るわけにいかないからです)。

このようなスタイルを「任意売却」と呼びますが、任意売却はどこの不動産業者でも当たり前にこなせるわけではなく、上記の銀行との交渉が必要になるためそれなりに経験を積んだ業者でなければ難しい面があります。

では、たとえ任意売却自体がうまくいったとしても、その後残ってしまった債務はどのように扱うのでしょうか?

もちろん返済の義務は残ります。ただ単に「担保物件をすでに処分してしまったため、無担保の債務になった」という状況に過ぎないのです。

残債務を一括払いすることは現実的に不可能なことがほとんどでしょうから、実際には銀行(または保証会社やサービサーと呼ばれる債権回収の専門会社)と相談して分割払いなどの支払い可能な形で支払っていくしかないでしょう。

夫婦の連帯債務だった場合

連帯債務というのは両方が債権者から見てまったく同等の地位にあります。よって、どちらかに全額請求をすることもできますし、両者に半々で請求しても構いません。

ただ、両者に全責任があるからといって元々1000万円だった債務が2000万円になるというわけではありませんので、1000万円の債務がどちらかの連帯債務者によって全額返済されればもちろん完済となります。

しかし、法律上の立場が同じであるにもかかわらず、もしどちらかが全額を返済したのであればやはり不公平感が残ります。

よって「求償権」というものが認められており、自分の負担部分を超えて債権者に返済した連帯債務者は、他方の連帯債務者にその分を請求することができます。

片方が主債務者、もう一方が連帯保証人になっていた場合

たとえば夫が銀行に対して「主たる債務者」の地位になり、妻が「連帯保証人」につけられた場合を考えてみましょう。

こちらにおいては、債権者は主たる債務者に先に請求を行い、主たる債務者が返済できない時に連帯保証人に請求してくることが通常です。

ただし、「通常の保証」と「連帯保証」というものは法的な地位が全く異なり、連帯保証人は、もし債権者が主たる債務者より先に連帯保証人に請求してきたとしても「私は連帯保証人なので先に主たる債務者に請求してください」とは言えません。

また、連帯保証人は「主たる債務者に財産があるのだからそちらにまず執行をかけてください」という権利もありません。

銀行などのきちんとした債権者が保証人をつけさせる場合、ほぼ100%「連帯保証」の形を取ります。連帯保証人は上記のとおり、離婚という身分上の理由で無条件に離脱することはできず、債権者との交渉が必要になります。

ただ、任意売却を終えた後の残債務の金額によっては連帯保証人を外してもらえるケースもあると思われますのでまずは債権者に相談してみることが大切です。

離婚よりも任意売却の手続きを先行する

手続き的な順番としては必ず離婚よりも任意売却を先に終えておきたいものです。

残債務の金額を確定させ、その後の処理や双方の責任をはっきりさせなくてはならないからです。

また、売却にあたっての売主としての義務を果たす意味でも先に離婚していては不都合な面があります。

片方の配偶者が転居してしまった後ではその人が売買契約や決済などの諸手続きに非協力的になることがあります。

不動産を売却するというのはただ単に書類を整えれば良いというものではなく、不動産業者や司法書士による意思確認などのプロセスを経て行われますので、売主の一人とまったく連絡がつかない状態になると売却そのものができなくなってしまうことがあります。

さらには、もし片方の住所や氏名が変わってしまうと売却の際にまず登記簿上の売主の住所、氏名変更の登記を入れなければならないため手間も費用も余分にかかってしまいます。

夫婦の間が険悪になっている場合、とにかく少しでも早く離婚したい!と感情的になってしまうこともあるでしょうが、やはりお金のことで後々禍根を残さないよう、しっかりと処理してから籍を抜く、ということを心がけておきましょう。

住宅ローンを滞納して放っておくとどうなる?督促~立ち退きまでの流れ

執筆者

西岡合同事務所

司法書士 西岡 容子

住宅ローンの支払いができなくなると当然、金融機関からの督促がやってきます。

その場合の対処を間違えると取り返しのつかない事態になることもありますので正しい対処の仕方を覚えておかなければならないのです。

住宅ローンを滞納した場合にどのような状況になり、立ち退きまでの大まかな流れはどのようになっているのか、そして督促に対する対処法を解説していきます。

住宅ローンを滞納した場合、どのような形で督促が来る?

住宅ローンを滞納した人には、最初は電話もしくは手紙で「ご入金をお忘れではないでしょうか?」というお尋ねの形で連絡が来ることが多いのではないでしょうか。

たまたま1回、引き落としできなかったとしても、口座への入金を忘れていただけということもあるからです。

それをもし無視していると、次に「お支払いができない事情がある場合はご連絡ください」といった文書に変わってきます。

さらにそれでも連絡をせずにいると、今度は「○月○日までのご連絡をいただけない場合は保証会社による代位弁済を行います」といった若干威圧的な形になってくると思われます。

このあたりの手順や文書のスタイルは金融機関によっても異なります。

督促を無視していたらどうなる?

もし、督促を無視してしまうと、大体3か月程度(金融機関により対処が異なる)経過したら「代位弁済」という処理がされます。

「代位弁済」というのは、金融機関の後ろについている保証会社が債務者本人にかわってローンの残額を金融機関に返済することです。

このような処理がされる根拠としては、債務者はローンを組む際に「保証料」というお金を支払って保証会社に「万一債務者自身が支払えなくなった場合の保証をしてもらう契約(保証委託契約)」をしているからです。

ただ、ここで保証会社が代位弁済したからといって債務者が支払わなくてよくなるわけではなく、債権者が金融機関から保証会社に代わるだけなのです。これを「求償権の行使」といいます。

住宅ローンでは一般的にこのような仕組みが取られていることが多いのですが、その理由としては金融機関がローン滞納の場合の督促、回収業務を保証会社に委託したいためといえます。

つまり、保証委託契約は債務者のためにあるシステムではない、ということです。

もし、代位弁済が完了した段階までいってしまうと、既にその債権は住宅ローンとしての性質を失ってしまい、分割弁済はできなくなります。これを「期限の利益喪失」といいます。

つまり、滞納がある人であっても一時的な減収などであり、しばらく待てば毎月の返済を再開できるような状態の人は手遅れになる前に住宅ローンの性質をどうにかして維持しなければならないといえます。

この「代位弁済」が行われる前に金融機関と相談してリスケジュール(=住宅ローン返済プランの組み直し)を行っておかなくてはならないのです。

もし競売にかけられたら?

代位弁済までされてしまってさらに放置していたら、次に待っているのは「保証会社による競売の申立」です。

競売にかけられた場合、最初の申し立ては債権者ですが、その後は裁判所が主導して売却を行い、買い受けられた代金の中から債権者への弁済を行います。

あくまで競売は裁判所が行う手続きなので債務者側が特に何もしなくても勝手に進行していきますが、債務者側に影響があることとしてはまず「執行官の現地調査」です。

競売による明け渡しがスムーズに進むために、現在、不動産の状態がどうなっているのか、実際に占有しているのは誰なのかなどを調査します。

これが終わると、裁判所により物件情報が一般に公開され、その後入札の手続に入ります。スムーズに売却できた場合でも実際に買受人に所有権が移転して債務者が物件から立ち退くまでには半年以上かかります。

もし1回で買い手がつかなければ入札を複数回繰り返さなくてはならなくなるためさらに時間がかかります。

ただ、近年、裁判所でも競売のスピードアップをはかっているところがあるため、以前よりは立ち退きのタイミングは早くなっているといえます。

債務者が自ら任意売却したら?

債務者が「住宅ローンの支払いが厳しい」と相談を受けた場合、金融機関側からもすすめられることが多いのが「任意売却」の手続です。

任意売却とは、物件を通常の売却と同様に不動産業者を入れて売買する方法ですが、物件の売却代金を債権者への支払いに充てても完済できないことが前提になる手続きです。

金融機関にはその状態で売却して(本来は完済しないと消せないはずの)抵当権抹消に応じてもらうことになります。

もし督促後にすぐ任意売却を始めたとすると、即座に買い手がつくような物件であれば競売した場合よりも早く債務者は物件から立ち退かなくてはならなくなることもあります。

ただ、任意売却の最大のメリットとして、「競売よりも高値で売れる=売却後、債務者が支払わなければならない残債務が少なくなる」ということが挙げられますので、債務者としては積極的に検討したいものです。

督促を決して放置してはならない

理想的には、今後のローン支払いが厳しくなったと思われる時点ですぐ金融機関に相談するのが一番よいタイミングです。

ただ、金融機関から督促が来ても放置してしまう人が一定の数いることも事実であり、上記のように代位弁済までいってしまえばもう元の住宅ローンのように分割で返済することはできなくなってしまいます。

よって、遅くとも「○月○日に代位弁済を行います」という通知が来た時点ですぐ金融機関に掛け合ってリスケジュールを試みましょう。

ただ、リスケジュールは返済期間をある程度延ばすなどの方法を取れば立て直しが可能というケースに限られます。

たとえば減収したままの状態がずっと続くなど、将来を考えても返済の目途を立てられない場合はリケジュールに応じてもらうことは難しいため、任意売却を検討したいものです(競売は金融機関の申立で行われますが、任意売却は債務者自身がその気にならなければ行うことはできません)。

金融機関に対して誠意ある対応をした上で早期に任意売却をする決断をすれば、金融機関側も協力してくれる可能性が高くなりますし、任意売却がうまくいけば金融機関、債務者双方にメリットがあります。

債務整理で任意整理が他と違う7つのポイント

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

債務整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4つの方法がありますが、その中でも優先的に検討されることが多いのが任意整理です。

任意整理は、弁護士(もしくは司法書士)を通して債権者と直接交渉を行ない、借金を減額してもらう方法になります。

カットしてもらえるのは原則として「遅延損害金と利息」ですので、元金は変わりませんが、裁判所を通さないため手続きに時間がかからない点がメリットです。

また、整理したい借入先を自由に選ぶこともできます。

ちなみに、特定調停は任意整理で行なう交渉を自分でする方法になりますので、ここではおもに「任意整理が個人再生や自己破産と違うポイント」を中心にご紹介していきます。

①裁判所を介さないため、短期間で解決できる

任意整理がほかの債務整理と大きく異なるのは、裁判所を通さない手続きであることです。

個人再生と自己破産は地方裁判所に申し立てを行ないますし、特定調停も簡易裁判所の仲介のもとで債権者と交渉します。

一方、任意整理は代理人(弁護士や司法書士)が債権者と直接交渉を行ないますので、裁判所の介入は一切ありません。

つまり、双方が合意するだけで済むため、ほかの債務整理と比べて早期解決が見込めます。和解成立までの期間は個々の案件にもよりますが、早ければ弁護士に依頼してから2~3ヶ月程度です。

②元金はそのままで、利息や遅延損害金をカットしてもらう

任意整理は、債務整理の中でも減額効果はそれほど高くない方法です。原則として、遅延損害金と利息のみをカットしてもらい、残った元金を3年~5年の分割払いで支払っていきます。

元金自体も大きく減らしてもらえる個人再生や、借金そのものがなくなる自己破産に比べると減額率は高くありませんが、複数の借入先がある場合や、金利が高いところで借りている場合(消費者金融やクレジットカードのキャッシング枠など)は、返済の負担がかなり軽くなる可能性があります。

たとえば3社からそれぞれ50万円を年18.0%の金利で借りている場合、単純に計算すると1年で27万円の利息がかかりますので、これをカットしてもらえるだけでも返済は楽になります。

③過払い金の返還請求を同時にできる

弁護士に任意整理を依頼すると、まず過払い金の有無を調べることが一般的です。

過払い金とは、利息制限法の上限を超えて支払いすぎた利息のことで、特に古くからの借入先がある場合に発生している可能性があります。

もし過払い金が発生していれば、その分を差し引くことで借金の額がさらに減ります。また場合によっては、借金がすべてチャラになる上にお金がもどってくることもあるのです。

ちなみに、特定調停も任意整理と同じく遅延損害金と利息をカットしてもらう方法になりますが、過払い金がある場合は特定調停とは別に請求の手続きをしなければいけません。

また、調停調書に記載された文言によっては過払い金請求が難しくなるケースもあるなど、素人にはわかりにくい点もあります。その点、任意整理では弁護士が手続きを行なってくれますので安心です。

④周囲にバレにくい

任意整理は、4つある債務整理の中でもっとも周りにバレにくいといわれています。

まず、すべての手続きを弁護士に依頼するため、本人が動く必要がない点がメリットです。また、用意する書類もほかの債務整理に比べると少なく、家族に協力してもらわなくてはいけないものも基本的にありません。

一方、特定調停は平日の昼間に簡易裁判所に出廷しなくてはいけませんし、自分でいろいろな書類をそろえる必要があるため、家族にバレるリスクが高くなります。

また個人再生と自己破産では、家計収支表(家計簿のようなもの)や家族の給与明細書なども提出しますので、家族の協力が必要になる場合があります。

さらに、「官報」という国の発行する新聞のようなものに氏名と住所が掲載される点もネックです。

⑤特定の債権者のみと交渉できる

任意整理の大きな特徴の一つが、「整理先を自由に選べること」です。

たとえば個人再生と自己破産の場合、「債権者平等の原則」にのっとり、整理したい債権者を選ぶことはできません。

個人再生と自己破産は減額効果が高いだけに、特定の債権者のみにこれまで通り返済を続けていくのは不平等とみなされるからです。

一方、任意整理(および特定調停)では、交渉したい債権者を自由に選ぶことができます。

そのため、たとえば「保証人のいない借金だけを整理する」とか、「車と住宅は手放したくないから、これまで通りローンを支払っていく」というふうに、それぞれの希望に合わせて柔軟に対処することが可能です。

⑥そろえる書類が少ない

任意整理では、ほかの債務整理と比べて用意する書類の数が少ないメリットもあります。

たとえば個人再生や自己破産などの裁判所での手続きでは、「申立書」をはじめ、本人(および家族)の収入や財産を証明するための書類を複数用意しなくてはいけません。

一方、任意整理の必要書類は、借入先がわかるもの(契約書や取引明細、ない場合はクレジットカードやローンカードでも可)や、債務者本人の収入がわかるもの(源泉徴収票や確定申告書)、身分証明書、預貯金通帳、印鑑などが主です。

家族の協力がなくてもそろえられるものばかりですし、裁判所での債務整理と違って「絶対にこれがないとダメ」というものが少ないため、楽に手続きができます。

⑦弁護士費用が安い

個人再生や自己破産に比べると、任意整理は手続きにかかる費用が安い点も特徴です。

任意整理の費用の相場

弁護士費用(着手金) 債権者1件につき20,000~40,000円
過払い報酬(過払い金を回収した場合のみ) 回収した過払い金の15~20%程度

任意整理にかかる弁護士費用は、整理する債権者の数が多ければ多いほど高くなります。また過払い金を回収できた場合は、その額に応じた過払い報酬を弁護士に支払います。

一方、個人再生や自己破産は手続きがより複雑なため、30~50万円程度の弁護士費用がかかることが一般的です。

さらに、官報に情報を掲載するための「官報公告費用(10,000円~20,000円程度)」がかかるほか、場合によっては数十万円の予納金を別途支払うこともあります。

ちなみに、4つの債務整理の中でもっとも費用が安いのは「自分で特定調停の手続きをした場合」です。印紙代や切手代などの実費だけで済むため、ほかの債務整理よりかなり費用を抑えることができます。

ただし、特定調停は手続きが面倒な上、過払い金の返還請求は別途行わなければいけないなどのデメリットも多いことから、近年は申立件数が減ってきています。

任意整理のポイントまとめ

任意整理がほかの債務整理と異なる7つのポイントをまとめてみます。

  1. 裁判所を介さないため、和解までの期間が短い
  2. 元金はそのまま、遅延損害金と利息だけをカットしてもらう
  3. 過払い金が発生している場合は、同時に返還請求ができる
  4. 手続きをしたことが周囲にバレにくい
  5. 整理したい債権者を自由に選べる
  6. 用意する書類が少ない
  7. 弁護士費用が安い

債務整理を考える際は、まず任意整理を検討し、それで返済が難しそうな場合に個人再生や自己破産を検討する、という流れになります。

任意整理は裁判所を通さないため手続きが楽ですし、元金だけはきちんと完済できますので、債権者にとっても個人再生や自己破産よりは回収できる額が多い点がメリットです。

いずれの方法を選んでも信用情報機関には登録されるため、いわゆる「ブラックリスト入り」することにはなりますが(過払い金で借金がなくなったケースを除く)、しっかりと返済の道筋を作ることができます。借金で苦しんでいる方は、まず弁護士に相談することから始めてみましょう。

任意売却の3つのメリットと2つのデメリット

執筆者

西岡合同事務所

司法書士 西岡 容子

任意売却というのは、担保つき不動産(銀行等の抵当権がついた不動産)を「ローンを支払い続けることが苦しいので債権者の競売を待たずに自ら売却する」ということです。

売却代金を返済に回しても「その担保をつけている債権者に全額の返済ができない」状態になることが普通ですが、競売を待たずにあえて任意売却するメリットとデメリットについて考えてみましょう。

メリットその1「高く売れる」

任意売却の最大のメリットは「競売にかけられた場合の金額よりも不動産に高値がつく可能性が高い」ということです。

高く売れた場合、債権者に返済できる金額がより大きくなる=売却後になお残ってしまう債務が減る、ということになります。

担保物件(購入して抵当権等をつけられている不動産)を売却して債権者はそこから自らの貸付の返済を受けることになりますが、たとえ売却してもほとんどの場合、債務全額を返しきれずに残ってしまいますので、債務者としてはたとえ不動産を失っても残った部分の支払いは続けていかなくてはならないのです。

よって、その残債務は少なければ少ないほどよいことになります。

一概には言えないのですが、大体競売にかけられた不動産は「市価の6割程度の価格でしか売れないことがある」と考えた方がよいのですが、任意売却は外形だけ見れば通常の売却と同じです。

よって、市価に近い金額で売れる可能性もあります。

ただやはり、通常の売却の場合でも売りに出す時期やその物件が本来持っている立地や間取りなど、色々な条件や要素で価格は変動します。

確実にこのくらいで売れる、という価格は不動産業者でも断定することはできないと考えておくべきでしょう。

メリットその2「ご近所に知られずに売れる」

競売の手続きの中には「裁判所から命じられた執行官による現況調査」というものがあります。

これは競売にかける物件の「不動産の形状」「占有の状況」「占有者の権原」といったものを調査して報告書にまとめるためなのです。

特に占有の関係については競売物件ではさまざまな問題が生じることがあります。

  • 借家人はいるのか?それは誰か?退去を求めることができるのか?
  • 借家人がいる場合は敷金や保証金を返さなければならないのか?

また、借家人がいなかったとしても、債務者が自主的に立ち退いて空き家になっているところに浮浪者が住みついてしまったなどの問題が生じるケースもあるため、競売の場合はどうしても現地に行かざるを得ないのです。

執行官が家に来ることでご近所の噂になってしまうことが心配という人もいるため、このような手続きがないことが任意売却のメリットといえます。

ただ、任意売却の手順は債権者との交渉以外はほぼ通常の売却と同様になるため、いわゆる「買受希望者の内覧」には応じなければなりません。

メリットその3「引っ越し代を出してもらえることがある」

任意売却の場合、通常の売却と最も異なる点は、「売却に伴う諸費用を債務者自身が準備できないため、売却代金から仲介手数料その他の費用を捻出しなければならない」ということです。

債権者としては1円でも多く回収したいところですが、自分たちの取り分を減らして諸費用を出すことに応じなければならないのです。

よって、担当の不動産業者は何にどのくらいかかって、いくら売却代金から差し引くのかということを債権者に対して明らかにしなくてはなりません。

これは任意売却を担当する不動産業者の腕次第というところもあるのですが、債権者に対してのこのような交渉がうまくいき、良い関係を築いていれば債権者側が債務者の引っ越しにかかる費用を売却代金から出すことを認めてくれることもあります。

ただ、これは法的な根拠があるものではなく、金額も決まっていませんので、運が良ければというところにはなります。

デメリットその1「債権者が同意しなければ抵当権を消せない=売れない」

競売の場合、裁判所主導でいわば「強引に」手続きを進める部分がありますが、任意売却では担当の不動産業者が債権者に「全額は返済できませんが、抵当権を消してください」という交渉をしなければならないのです。

抵当権というのは残債務全額を支払わなくては消してもらえないのが原則ですが、任意売却の場合は全額を返済していないのに抵当権抹消書類を出してもらうというイレギュラーな処理になります。それでも債権者が応じるのは「自分で競売にかけるよりも手間もかからず、より多くの債権を回収できる」という期待感からです。

ただ、不動産業者との関係が悪化してしまったり、あまりにも悪条件を提示されたのでは抹消に応じてもらえないこともありえます。

また、抵当権は1つとは限りません。たとえば1番で銀行が住宅ローンの抵当権をつけているが2番、3番で消費者金融の抵当権がついているというパターンもあります。

このような場合、本来的には配当を受けられない2番以降の抵当権者に対しても「ハンコ代」という形でいくらかの金銭を交付して抵当権抹消に応じてもらわなければならないことになります。

ハンコ代とはあくまで慣習的なものに過ぎないので、これがいくらになるかというのも交渉次第になります。

デメリットその2「不動産業者選びが難しい」

上記に述べてきたように、任意売却においては債権者への抵当権抹消の交渉を中心にして、不動産業者が非常に大切な役割を果たしています。

任意売却が成功するかどうかを分けるのは不動産業者の交渉力にかかっているところがあり、そしてその不動産業者を選択するのは債務者自身です。

不動産業者を選ぶ際には、ただ単に名前を知っているからとか、近いからとかそのような理由で選んではいけません。任意売却の特殊性をよく理解し、交渉のツボを心得ている業者に依頼しなければ失敗につながります。

まずはいくつかの業者の相談に行ってみるとよいでしょう。ある程度突っ込んだ質問をして、それに対して明確に答えられるかどうかで業者の実力を計ることもできます。

任意売却の良い面だけではなく、悪い面も含めて包み隠さず、そして何よりも素人である債務者にわかりやすく説明をしてくれる業者を選ぶことは、債務者自身が納得のいく売却をするためにも非常に大切なことです。

銀行等の債務(借金)一本化と弁護士の債務整理どちらがお得?比較

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

多重債務の解決策には、「借金の一本化(おまとめローン)」と「債務整理」があります。

借金の一本化は、複数の借金を一つにまとめることで返済の管理がしやすくなる点がメリットです。また低金利のローンを利用できれば、おまとめ前より支払う利息も少なくなります。

一方、債務整理は借金を減額、もしくは全額免除してもらう方法です。信用情報に傷がつくデメリットはありますが、借金自体が減るため返済は確実に楽になります。

多重債務に苦しんでいる場合、どちらが本当にお得なのかをさまざまな観点から比較してみましょう。

借金の一本化(おまとめ)のメリットとデメリット

借金の一本化とは、複数の借金を一ヵ所でまとめることです。

たとえばA・B・Cの3社から計100万円を借り入れている場合、新たにD社で100万円のローンを組むことで3社に借金を一括返済し、その後はD社だけに返済していくことになります(もしくは、A・B・Cのうちもっとも低金利の会社で追加の融資を受け、そこでまとめる方法もあります)。

このように借金を一本化するためのローンを「おまとめローン」と呼びます。消費者金融にもおまとめローンを扱っているところがありますが、せっかく一本化しても金利が高いとあまり意味がないため、おまとめ先には金利の低い銀行を選ぶことが一般的です。

借金を一本化するメリット

借金を一つにまとめることには以下のようなメリットがあります。

借金の管理が楽になる

借金を一本化すると、その後は一社だけに返済していけばいいため、管理が楽になる点が大きなメリットです。

支払う利息が減る可能性がある

借金をおまとめしても元金自体は変わりませんが、現在の借入先より金利の低いローンでおまとめできれば、利息分を減らすことはできます。

たとえば3つの消費者金融から借り入れていた場合、低金利の銀行で借金を一本化することで支払総額を少なくすることが可能です。

ブラックリストに載らない

おまとめローンは「借金の借り換え」ですので、債務整理と異なり信用情報に影響はありません。その後も引き続き、クレジットカードや各種ローンを利用できます。

借金を一本化するデメリット

一方、借金の一本化には以下のようなデメリットもあります。

借金自体が減るわけではない

借金を一本化しても、元金が減るわけではありませんので、金利の低いおまとめ先を慎重に選ばなければ返済の負担は変わりません。

特に最近は法律が改正されて、消費者金融でも利息制限法の上限金利(年15~20%)がきちんと守られているため、銀行でおまとめしても支払う利息に大きな差が出ないケースが増えています。

逆に利息が増えてしまうこともある

借金を一本化したことに安心して毎月の返済額を少なくしすぎてしまうと、結果的に利息を多く支払うことになる可能性があります。

借金の利息は、金利だけではなく返済期間にもよります。おまとめ前より月々の返済額が少ないと、それだけ返済期間が長くなってしまうため、支払う利息がかえって増えてしまうこともあるのです。

新たな借金を作りやすくなる

おまとめローンを利用すると、以前の借入先の利用枠が空くため、そこでまた新たな借り入れをしてしまうリスクがあります。

また、おまとめローン自体の枠も大きいため、借り増しをして負債を増やしてしまう可能性もゼロではありません。

借金を一本化したなら、追加の融資を受けないよう厳しく自制することが大切です。

債務整理のメリットとデメリット

債務整理は、法的に認められた借金の整理方法です。自分でできるものもありますが、法律のプロである弁護士に依頼したほうが手続きはずっと楽ですし、成功率も上がります。

個人の借金の債務整理は、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つです。

任意整理・特定調停・個人再生は借金を減額するための手続き、自己破産は借金を全額免除してもらうための手続きになります。

債務整理のメリット

債務整理のおもなメリットは以下の通りです。

借金の額が減る

おまとめローンと異なり、債務整理では借金の支払額が確実に減る点が最大のメリットです。

どれだけ減るかは、行なう債務整理や借金の額などによって異なりますが、基本的には以下のようになります。

債務整理の種類 減額される金額
任意整理 遅延損害金および利息
特定調停
個人再生 借金の額に応じて、元金の最大80~90%
自己破産 税金や健康保険料などを除くすべての借金

たとえば任意整理の場合、損害遅延金と利息をカットしてもらえますので、残った元金を3~5年の間で返済していくことになります。

過払い金請求ができる

弁護士に債務整理を依頼した場合、まずは利息制限法に基づいて引き直し計算を行ない、過払い金が発生していないかどうかを調べます。

過払い金があれば借金の額が減りますので、返済はさらに楽になりますし、場合によっては借金がすべてチャラになることもあります。

債務整理のデメリット

一方、債務整理には以下のようなデメリットがあります。

信用情報に傷がつく(ブラックリスト入りする)

どのような債務整理を行なった場合でも、信用情報機関に事故情報が登録されるため、いわゆる「ブラックリスト入り」することになります(過払い金で借金がなくなったケースを除く)。

事故情報の登録期間は、任意整理と特定調停では5年間、個人再生と自己破産では5~10年間です。この間は新たにクレジットカードやローンを利用することができません。

弁護士費用がかかる

債務整理を弁護士に依頼した場合、弁護士費用を支払う必要があります。

特に個人再生と自己破産は手続きが複雑なため、30~50万ほどかかることが一般的です。

ただし最近は分割払いに対応する法律事務所も増えていますし、収入や資産などの条件を満たせば、「法テラス」で弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。

生活に支障が出る場合がある

債務整理の中でも、借金が全額免除される自己破産を行なった場合は、信用情報に傷がつく以外にも生活に何らかの支障が出る可能性があります。

たとえば一定以上の財産がある場合は「管財事件」となり、20万円以上の価値のある住宅や車などは原則手放さなくてはいけません(ただし現金は99万円までの所持が認められています)。

また管財事件の場合、自己破産の手続き中は引っ越しや長期の旅行を自由にできないことになっています(破産法37条1項)。する場合は、裁判所の許可が必要です。

さらに、一部の仕事に影響が出る点にも注意が必要です。自己破産の申し立てをしてから免責決定が下りるまでの間(およそ3~6ヶ月間)に限られますが、弁護士や司法書士などの「士業」や、警備員、生命保険募集員、古物商などの職に就くことが制限されます。

また、個人再生と自己破産を行なった場合は、国が発行する「官報」という新聞のようなものに氏名と住所が掲載されます。

ただし、官報を毎日チェックするのはごく一部の人に限られますので、通常は特に問題ないことがほとんどです。

借金の一本化VS債務整理の比較まとめ

借金の一本化と債務整理の違いをわかりやすく表でまとめてみました。

  借金の一本化 債務整理
元金 変わらない
  • 任意整理と特定調停:変わらない
  • 個人再生:減額される
  • 自己破産:免除される
利息 おまとめ先によっては
減る可能性がある
原則カットされる
返済先 一つになる 複数のまま
(ただし弁護士が「代行弁済」をしてくれる場合、各社への返済額を毎月一括で弁護士に振り込むことは可能。また自己破産の場合は返済の義務自体がない)
返済期間 借入先による 原則3~5年間
信用情報への影響 なし あり(5~10年間)
仕事への影響 なし 自己破産の場合、免責決定が下りるまで一部の職業が制限される
費用 なし 弁護士費用や実費がかかる
過払い金 もどらない あれば請求できる

一本化では元金も利息も変わらず支払い続ける必要がありますが、生活への影響がない点がメリットです。安定した収入があり、借金の額がそれほど多くないのであれば検討してみるのも悪くないかもしれません。

ただし、借金をまとめられたことに安心して月々の返済額を少なくしすぎたり、追加の借り入れをしたりすると、さらに状況が悪化するリスクもあります。

また、すでに負債がふくらみすぎている人は一本化しても根本的な解決にならないため、思い切って債務整理を行なったほうが建設的です。

債務整理は、信用情報に傷がつくというデメリットはあるものの、返済額を確実に減らせますし、約束通りに返済していけば3~5年できっちりと完済することができます。

多重債務で首がまわらない状態の人は、安易に一本化する前に、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。