債務整理が家族に与える4つのデメリット

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

「債務整理を考えているけれど、家族に迷惑がかかるのでは…」と悩んでいる方もいると思います。

家族が借金の保証人になっている場合は別ですが、そうではない場合、債務整理を行なったことで家族まで責任を問われるようなことは一切ありません。

いわゆる「ブラックリスト入り」するのも、あくまで債務整理を行なった本人だけです。

とはいえ、債務整理の種類によっては家族の生活になんらかの影響が出る可能性もあります。ここでは、債務整理が家族に与えるデメリットを4つご紹介していきます。

ローンやクレジットカードを利用できなくなる可能性がある

債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録されるため、しばらくの間はあらゆる借金ができなくなります。

このような「ブラックリスト状態」になるのは、債務整理を行なった本人だけですので、家族の信用情報にはまったく影響はありませんが、家族に安定した収入がない場合は後々困る可能性があります。

たとえば旦那さんが債務整理をした場合、奥さんが専業主婦またはパート勤めですと、ローンを利用したくても奥さんの名義では審査に通らない可能性が高いです。

そうなると、債務整理をした本人の事故情報が消えるまでの間(5~10年)は、家族で住宅や車などの高額な買い物や、教育ローンなどを利用できなくなる可能性があります。

同じくクレジットカードも作れなくなります。その場合は、審査なしで作れるデビットカードを利用するのも一つの方法です。

デビットカードは、後払いではなく瞬時に銀行口座から代金が引き落とされるカードです。お店での買い物にクレジットカードと同じように使えますが、ブラック中の人でも問題なく作ることができます。

車や家を手放さなければいけない可能性がある(主に自己破産の場合)

債務整理の中でも、特に生活への影響が出やすいのは自己破産です。自己破産ではすべての債務が免除される分、ほかの債務整理よりもデメリットが多くなります。

特に財産の所有は厳しく制限されており、基本的に必要最低限の財産以外はすべて手放さなくてはいけません。

具体的には、評価額が20万円を超える財産は破産管財人によって没収され、換金されて各債権者に平等に配当されます。

現金は99万円までの所持が認められていますが、それ以上のお金はやはり破産管財人に没収されてしまいます。

特に没収されることで家族に影響が出るのは、住宅や車です。持ち家はほぼ確実に没収されますので、引っ越しを余儀なくされることになります。

また、債務整理を行なった本人が契約者になっている生命保険や学資保険なども、解約返戻金が20万円以上あるものは解約して、払戻金を債権者に配当する必要があります。

ただし、自己破産で制限されるのは本人の財産だけですから、家族の預貯金や保険などには基本的に影響はありません。

なお、このように財産の所有が制限されるのは自己破産だけですが、個人再生でも場合によっては財産を手放したほうがいいこともあります。

個人再生では、所有する財産の総額以上の金額を弁済しなければいけないとする「清算価値保証の原則」が適用されるため、あまりに高額な財産を所有していると、弁済額が増えてしまうからです。

また、ローンの残っている車がある場合、任意整理と特定調停では整理の対象から外せますが、個人再生ではすべての債務を整理しなければいけないため、債権者(ローン会社やディーラーなど)に車を引き揚げられてしまいます。

ただし、住宅については、ローンが残っていてもそのまま所有できる可能性があるのが個人再生のメリットです。

「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度を利用すると、ローン返済中の住宅を特別に個人再生の対象から外すことができます。

家族が借金を背負う可能性がある(家族が保証人になっている場合)

債務整理で家族への影響がもっとも大きくなるのは、家族が借金の保証人になっているケースです。

どのような債務整理でも、借金を減らしてもらえるのは債務整理をした本人だけで、保証人の返済義務はそのまま残ります。

たとえば200万円あった借金を半分に減らせた場合、残りの100万円は保証人が支払うことになりますし、自己破産をした場合は、保証人が全額の返済義務を負うのです。

ただし、任意整理と特定調停では整理したい債権者を選べるため、保証人のいる借金を整理対象から外すことができます。

一方、個人再生と自己破産では整理先を選べないため、保証人のいる借金も含めてすべての債務の整理が必要です。これらの手続きでは、必ず保証人に迷惑をかけることになるということです。

もし保証人も返済が難しい場合は、主契約者と一緒に債務整理の手続きをすることも考えましょう。

書類の協力が必要になることがある(個人再生と自己破産の場合)

債務整理を行なう際には、いくつかの書類をそろえる必要がありますが、特にその数が多くなるのは個人再生と自己破産をする場合です。

これらの手続きでは、裁判所に対し、借金の状況がわかる書類(「債権者一覧表」など)や、家庭の収入と支出を示す「家計収支表」、財産の一覧を記した「財産目録」など、多くの書類を提出します。

特に「家計収支表」を作成する際には、家計を管理している家族の協力が必要になるでしょう。

また、同居している家族の給与明細書や預貯金通帳なども提出を求められることがあります。家族の給与や財産をとられてしまうようなことはありませんが、生計が同一の家族の収入も見ないと、家計の現状を正確に把握しにくいからです。

このように、個人再生と自己破産を行なう場合は、家族に書類の協力を求めなくてはいけない可能性があります。

まとめ

債務整理が家族に与える可能性のあるデメリットを4つご紹介しました。

債務整理で家族への影響がもっとも大きくなるのは、家族が保証人になっているケースです。その場合は早急に対策を考える必要がありますので、なるべく早めに主契約者と保証人が一緒に弁護士のところへ相談に行くことをおすすめします。

それ以外のケースでの家族への影響は、家や車などの財産を没収されることによる「生活の変化」が主です。ただし、これは基本的に自己破産を行なった場合の話ですので、それ以外の債務整理ではほとんど家族への影響が出ないことも多いです。

特に任意整理や特定調停は、債務整理の中でも比較的デメリットの少ない手続きです。家族への影響を最小限に抑えるためにも、借金が膨らみすぎないうちに債務整理を検討しましょう。

債務整理にかかる費用を分割払いする方法

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

債務整理の手続きには、費用がかかります。

債務整理の種類によっても異なりますが、特に個人再生と自己破産の費用は数十万円かかることが一般的です。

これらの手続きは複雑なため、多くの人は弁護士に依頼することになりますし、さらに裁判所への予納金という費用もかかるからです。

しかし、債務整理を行なう人は経済的な余裕がないことが普通ですから、債務整理にかかる費用を一括で払うのは難しい場合が多いと思います。

そのような時に、債務整理の費用を分割払いするための方法をご紹介していきます。

債務整理にかかる費用は、大きく分けて3つ

債務整理にかかる費用の分割払いは、費用の種類によっても異なるため、まずはそれぞれの違いからご説明したいと思います。

債務整理の費用には、大きく分けて「弁護士費用」「印紙代や切手代などの実費」「裁判所への予納金」の3つがあります。

弁護士費用

弁護士に債務整理を依頼する際にかかるお金です。

金額は法律事務所によってもさまざまですが、任意整理の場合は債権者1件につき20,000~40,000円、さらに過払い金を回収できた場合は、回収額の15~25%を「過払い報酬」として支払います。

より複雑な手続きが必要になる個人再生と自己破産の弁護士費用は、さらに高額です。個人再生では、債権者の数にかかわらず30万~50万円程度の着手金がかかります。

自己破産は、行なう手続きの種類によっても異なり、同時廃止という手続きでは20万~30万円、より複雑な管財事件では30万~50万円程度が相場です。

印紙代や切手代などの実費

債務整理の手続きにかかる経費です。

たとえば、債権者や裁判所に連絡する際の通信費や、郵便切手代、書類に貼る印紙代などがあります。

任意整理の場合は、すべて合わせても大きな額にはならないため(数千円程度)、着手金に込みにしている法律事務所も多くみられますが、たとえば個人再生では申立書に貼る印紙代だけでも10,000円かかるため、着手金とは別に支払う場合が多いです。

債務者が自分で行なうことの多い「特定調停」という手続きでは、弁護士費用がかかりませんので、実費だけで済ませることが可能です。

裁判所への予納金

債務整理の中でも、地方裁判所に申し立てを行なう個人再生と自己破産では、裁判所に納める「予納金」というお金がかかります。

どちらの手続きでも必ずかかるのが、「官報公告費用」です。個人再生や自己破産をすると、官報という国発行の機関紙に氏名や住所が掲載されますが、そのための費用として10,000円~20,000円程度がかかります。

さらに、個人再生では「個人再生委員」という人物が裁判所から選任された場合、その人への報酬として15万~25万円程度がかかります。

個人再生委員が選任されるかどうかは、裁判所によっても異なり、たとえば東京地方裁判所ではすべての案件で個人再生委員が選任されています。

一方、自己破産では管財事件の場合、「破産管財人」が裁判所から選任されるため、その人への報酬として20万円程度(場合によっては50万円程度)の予納金を納めます。

このように、債務整理にかかる費用で高額になりやすいのは、弁護士費用と裁判所への予納金です。次に、これらの費用を分割払いするための方法をご紹介していきます。

弁護士費用を分割払いする方法

分割払いのできる法律事務所を選ぶ

弁護士費用の一括払いが難しい場合は、分割払いに対応している法律事務所に依頼するという方法があります。

ただし、分割払いのシステムは事務所によってさまざまです。たとえば、着手金の一部を前払いするところもありますし、「2~3回までなら分割OK」とするところもありますので、必ず事前に確認しましょう。

法テラスに立て替えてもらう(民事法律扶助制度)

月々の返済額をできるだけ低く抑えたい場合は、「法テラス(日本司法支援センター)」に相談するのがおすすめです。

法テラスでは、収入や財産の要件を満たした人を対象に、弁護士費用の立て替えを行なっています。返済は月々10,000円が基本ですが、難しい場合は5,000円でも可能です。

また、生活保護を受けている方は、原則として受給している間の返済は猶予されます。

立て替えてもらえるのは弁護士費用のみです。ただし生活保護受給者に限り、自己破産の予納金を、官報公告費用は全額、破産管財人への報酬金は原則20万円まで立て替えてもらえます。個人再生の予納金は、生活保護受給の有無にかかわらず不可です。

申し込みは、債務整理を行なう人の居住地または勤務地が存在する都道府県内の法テラスで受け付けています。

裁判所への予納金を分割払いする方法

裁判所

裁判所の指示で積み立てする

個人再生で個人再生委員が選任された場合、および自己破産の手続きが管財事件になった場合は、高額な予納金が必要となります。

予納金はあらかじめ納めるお金ですので、納付が完了しないと個人再生や自己破産の手続きを進めることができません。

一括での納付が難しい場合は、裁判所から数ヶ月の猶予が与えられ、その間に積み立てを行なうことが一般的です。

たとえば東京地方裁判所では、原則として4ヶ月間(計4回)の分割払いで予納金を積み立てることができます。

東京地方裁判所では、個人再生委員の予納金については、1回目の納付後に開始決定が出ます。

ただし、裁判所によっては予納金が完納されるまで申し立てが保留状態となり、手続きが進まないこともある点に注意が必要です。

生活保護を受け、法テラスに立て替えてもらう(自己破産の場合)

法テラスでは、基本的に予納金の立て替えは行なっていませんが、生活保護受給者に限り、自己破産にかかる予納金を立て替えてもらえます。官報公告費用は全額、破産管財人への予納金は原則20万円が上限です。

どうしても予納金を捻出できないほど経済状態が悪化している場合は、生活保護の申請を検討しましょう。

まとめ

債務整理にかかる費用を分割払いする方法をご紹介しました。

弁護士費用は、法律事務所で分割払いにしてもらうか、法テラスの立て替え制度を利用するのがおすすめです。

一方、裁判所への予納金は、原則として法テラスでも立て替えてもらえないため、一括での納付が難しい場合は積み立てすることが一般的です。

ただし、病気や失業などで積み立てが難しい場合は、生活保護を受給して法テラスに立て替えてもらうか、もしくは親族や知人からお金を援助してもらうしかありません。

絶対にしてはいけないのは、債務整理の費用を捻出するために、新たに貸金業者などからお金を借りてしまうことです。

これから債務整理をすることをわかっていて借り入れるのは、業者をだます行為と同じですし、特に自己破産の場合は「免責不許可事由」に該当し、認可を受けられなくなることもあります。

費用の工面のことも含めて、まずは信頼できる弁護士に相談することから始めましょう。

債務整理でCICに登録される期間と確認方法

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

「CIC(株式会社シーアイシー)」は、主に信販会社やクレジットカード会社、消費者金融などが加盟する個人信用情報機関です。

「JICC(日本信用情報機構)」と合わせて、どちらにも加盟する会社が多いほか、銀行でも加盟しているところがあります。

クレジットカードや信販会社のローン、消費者金融などで債務整理を行なうと、多くの場合はCICに事故情報が記録されます。その情報が消えるまでは、新たにローンやクレジットカードなどを利用することができません。

CICではどれぐらいの期間、事故情報が記録されるのか、また自分の信用情報はどのように確認すればいいのか、などについてくわしくご紹介します。

CICに債務整理の情報が記録される期間

CICは、「割賦販売法」と「貸金業法」にもとづく指定信用情報機関です。各種ローンやクレジットカードを取り扱う多くの会社、および一部の銀行が加盟しています。

CICの債務整理に関する情報の保有期間は、「契約期間中および契約終了後5年以内」です。5年のカウントがいつから始まるのかが問題ですが、契約終了後のほうをとるなら「完済後5年」と考えられます。

つまり、任意整理・特定調停・個人再生の場合は、減額された債務をすべて返済し終わった時点から5年間、記録が残るということです。

一方、自己破産では返済不要のため、免責が下りた時点から5年が目安となります。

このように、CICでは行なった債務整理の種類にかかわらず、契約終了後5年を超えてブラック情報が残り続けることはありません。

「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」では、個人再生と自己破産の情報は最長10年間残るため、これと比べると、短い年数でブラック明けできることになります。

CICの債務整理情報を確認する方法

債務整理をした人でも、信用情報機関のデータベースから事故情報が消えれば、再びローンやクレジットカードなどを利用できる可能性があります。

しかし、「そろそろ5年たったから大丈夫かな」と、いきなり申し込むことはあまりおすすめできません。まだ事故情報が消えていなかった場合、ほぼ確実に審査落ちしてしまいますし、その情報がまた6ヶ月間CICに記録されるからです。

なるべく審査落ちのリスクを回避するためにも、まずはCICに信用情報の開示請求を行なうことをおすすめします。

CICでは、以下の3つの方法で自分の信用情報を確認することが可能です。

インターネット開示

パソコンまたはスマホから手続きできる方法です。受付時間は毎日8:00~21:45までとなっています。

ウェブ上で開示されるため、どこでもすぐに開示報告書をチェックできて、非常に便利なのですが、手数料(1,000円)の支払いが必要で、支払い方法は、クレジットカード、またはJCBとイオン銀行のデビットカードに限られている点に注意が必要です。

もう一つ気を付けたいのが、債務整理を行なった会社で登録していた電話番号からの発信が必要なことです。もし電話番号が当時と変わっている場合は、ほかの方法を選びましょう。

手続き方法は、パソコン・スマホともに、まずはクレジット会社などに登録済みの電話から、発信者番号を通知した上で0570-021-717にかけ、受付番号を取得します。

それから1時間以内に、CICのサイト上で必要情報を入力すると、すぐにその場で開示報告書が表示されます。

受付番号の取得から1時間を超えた場合は、再度の番号取得が必要です。

くわしい情報は、CICのサイトから確認できます。→CIC「パソコンで開示」「スマートフォンで開示」

郵送開示

CICに必要書類を郵便で送り、開示報告書も郵便で受け取る方法です。

申込書・本人確認書類・ゆうちょ銀行発行の定額小為替証書(1,000円)を同封してCICに送ると、10日ほどで開示報告書が届きます。

注意点は、本人確認書類が2点必要なことです。運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、年金通帳など、いくつかの指定された本人確認書類の中から2点を用意し、コピーしたものを送ります(住民票や戸籍謄本などは原本が必要です)。また、いずれも有効期限内のものに限ります。

申込書は、CICのサイトからダウンロードして印刷するか、もしくは電話で取り寄せも可能です。

本人確認書類として使用できるものや、送付先の住所などについては、CICのサイトでご確認ください。→CIC「郵送で開示」

窓口開示

CICの開示窓口へ直接行って、開示請求をする方法です。窓口は、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡にあります。

受付時間は、平日の10:00~12:00および13:00~16:00で、必要なものは、現金500円と本人確認書類です。

本人確認書類は、運転免許証・運転経歴証明書・マイナンバーカード・パスポート・写真付住民基本台帳カード・写真付各種障がい者手帳・在留カードまたは特別永住者証明書のいずれかであれば1点でOKですが、健康保険証・年金手帳・戸籍謄本・戸籍抄本・印鑑登録証明書などは2点必要となっています。

また、上記は本人が手続きに行く際の必要書類で、代理人が行く際は委任状などの別の書類が必要です。

必要書類をそろえて窓口へ行き、タッチパネル端末機で入力操作を行なうと、その場で開示報告書を手にすることができます。

本人確認書類や、窓口の所在地などのくわしい情報は、CICのサイトでご確認ください。→CIC「窓口で開示」

まとめ

個人信用情報機関の一つ、CICにおける債務整理の情報の登録期間や、自分の信用情報を確認するための方法についてご紹介しました。

CICは多くの信販会社やクレジットカード会社、消費者金融などが加盟していますので、過去に債務整理を行なったことのある人は、高い確率でCICに事故情報が登録されています。

債務整理で減額された借金を返済し終わってから、もしくは自己破産で免責が下りてから5年以上経っている場合は、新たにローンやクレジットカードに申し込む前に、まずはCICに開示請求を行なって、ブラック情報が消えているかどうかを確認してみてください。

また、債務整理を行なった会社がJICCやKSCにも加盟している場合は、そちらのほうでも開示請求することをおすすめします。

借金はどれぐらい減る?債務整理の方法別の減額効果

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

債務整理は、借金の負担を減らすための手続きです。

ただし、どれぐらい減額されるかは債務整理の種類によって異なります。もっとも減額効果が大きいのは、全額免除される自己破産です。

次いで個人再生、その次が任意整理(および特定調停)の順になりますが、過払い金の額によっても減額効果は変わります。

債務整理をすると実際にどれぐらい借金が減るのかを、それぞれの手続き別にご紹介していきます。

任意整理の減額効果

任意整理

任意整理は、債務整理の中でももっとも優先して検討されることの多い手続きです。裁判所を介さず、債権者と直接話し合って、カットしてもらう金額や返済方法などを決めます。

自分で手続きすることもできますが、債権者と直接交渉するスキルが必要ですので、任意整理に強い弁護士に依頼したほうが安心です。

任意整理の減額効果は、債務整理の中ではそれほど大きくありません。

基本的には、弁護士が介入してから和解が成立するまでの経過利息と遅延損害金、および和解成立後の将来利息などをカットしてもらい、残った元本だけを3~5年の分割払いで返済していきます。

ただし、任意整理では過払い金を回収できる可能性があり、その場合はより大きな減額効果が期待できます。

過払い金とは、利息制限法の上限を超えて払いすぎた利息のことで、主に2008年以前から、サラ金やクレジットカードのキャッシングで借り入れをしていた場合に発生している可能性があります。

任意整理では、まず弁護士が債権者から取引履歴を取り寄せ、現在の利息制限法にもとづいて「引き直し計算」を行ないます。その結果、過払い金が見つかった場合は、債権者に請求の手続きをします。

特に古くからある借金の場合、債務者本人も気づかないうちに多額の過払い金が発生していることもあります。その結果、借金が大幅に減ったり、もしくはチャラになる上にお金がもどってきたりするケースもあるのです。

つまり、任意整理の減額効果は「過払い金の有無によっても大きく異なる」といえます。

過払い金がない場合も、利息や遅延損害金をカットしてもらうことで、返済の負担は整理前より楽になりますが、大幅な減額は期待できません。

残った元本の額が大きく、利息や遅延損害金をカットしてもらうだけでは返済が難しい場合は、より減額効果の大きい個人再生などの手続きを検討する必要があります。

特定調停の減額効果

特定調停

特定調停は、簡易裁判所で調停委員の仲介のもと、債権者と今後の返済方法について見直す手続きです。

任意整理と似ていますが、調停委員が間に入ってくれるため、弁護士に依頼せず自分で手続きしやすい特徴があります。

特定調停の減額効果は、基本的に任意整理と同じです。和解成立後の将来利息や遅延損害金をカットしてもらい、残った元本を3~5年の間で返済していきます。

また、特定調停でも、利息制限法にもとづいて引き直し計算することで、過払い金の有無を調べますが、過払い金の請求は特定調停とは別に行なう必要があります。

特定調停は、あくまで今後の返済方法を見直す手続きのため、任意整理のように過払い金請求を同時に行なうことができません。

特定調停で過払い金が見つかった場合は、別途、請求訴訟を起こしたり、改めて弁護士に依頼したりする必要があります。

そこで、過払い金がある場合は、最初から弁護士に任意整理を依頼したほうが、手間がかからず便利です。

個人再生の減額効果

個人再生

個人再生は、借金を大きく減らせる手続きです。

利息や遅延損害金だけをカットしてもらう任意整理や特定調停と異なり、個人再生では元本自体も減額してもらえます。個人再生の最低弁済額は、債務の額によって以下のように決められています。

借金の総額 最低弁済額 減額率
100万円~500万円未満 100万円 最大80%
500万円~1,500万円未満 借金総額の20% 80%
1,500万円~3,000万円未満 300万円 最大90%
3,000万円~5,000万円 借金総額の10% 90%

このように、個人再生では大幅な減額効果が望めるため、任意整理や特定調停では解決が難しいほど多額の借金がある場合に向いています。

ただし、減額後に残った借金は原則3年(最長5年)の分割払いで返済していきますので、収入と弁済額のバランスを考慮した上で、確実に返済できるかどうかが検討されます。

そのため、アルバイトや専業主婦の人などは個人再生を利用できない場合もあります。

また、個人再生が適用されるのは借金の額が5,000万円までのケースです。5,000万円を超える借金がある場合は、自己破産を検討する必要があります。

また、借金が100万円未満の場合はそのまま借金が残ってしまうため、個人再生を行なうメリットがありません。その場合は任意整理を検討します。

自己破産の減額効果

自己破産

債務整理の中でも、もっとも減額効果が大きいのは自己破産です。自己破産では、すべての借金の返済を免除してもらえます。

借金の額に制限はありませんし、収入の要件などもありません。ただし、「借金整理の最後のとりで」ともいえる手続きですので、ほかの方法では解決できない場合に検討されることが多いです。

自己破産では、ありとあらゆる借金やローン、クレジットカードなどの債務がチャラになりますが、例外的に免除されないものとして、税金や国民健康保険料、国民年金保険料などがあります。

自己破産をしなければいけない人は、税金や保険料なども滞納しているケースが多いと思いますが、これらはそもそも自己破産の免責の対象にならないため、支払い義務はそのまま残るのです。

税金を滞納してしまうと延滞税がどんどん加算されてしまいますので、税務署や役所などで自己破産の手続きをしていることを説明した上で、今後の支払い方法について相談することが大切です。

誠意をもって相談すれば、一時的に納付を待ってもらえたり、分納できたりすることもあります。

まとめ

債務整理でどれぐらい借金が減るのか、手続きの種類ごとにご紹介しました。

減額効果の大きい順としては、「自己破産>個人再生>任意整理=特定調停」となります。ただし任意整理や特定調停の場合、過払い金の額によっては借金がかなり減ることもあるため、それぞれの状況にもよります。

どの債務整理が最適かは人によりさまざまですので、まずは弁護士の無料相談などを利用し、プロのアドバイスを受けることをおすすめします。

いいことばかりじゃない!借金の債務整理7つのデメリット

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金を減額できたり、場合によっては全額チャラにできたりする債務整理ですが、実際はいいことばかりではありません。

法的なペナルティが課されるわけではありませんが、本来返済するべきお金を特別にカットしてもらう以上、いくつかのデメリットがあることは理解しておく必要があります。

債務整理の種類によっても異なりますが、ここでは特に代表的なデメリットを7つご紹介していきます。

ブラックリスト状態になる

債務整理には、大きく分けて任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4種類がありますが、いずれを選択した場合でも必ず生じるデメリットの一つが、個人信用情報機関に事故情報が登録されることです。このことを俗に「ブラックリスト入りする」といいます。

ブラックリスト状態になると、ローンやクレジットカードに申し込んでも審査落ちしてしまうため、ありとあらゆる借金ができなくなります。

ただし、ブラック情報は永久に記録され続けるわけではなく、機関ごとに保有期間が決められていますので(最長5年~10年)、その期間が過ぎれば再びローンやクレジットカードを利用できる可能性はあります。

費用がかかる

債務整理を行なうためには、費用がかかります。

もっとも安く済むのは、弁護士や司法書士に依頼せず、債務者が自分で手続きを行なう場合です。債務整理の中では、「特定調停」がもっとも自分で手続きしやすく、その場合は数千円程度の実費だけで済みます。

一方、たとえば任意整理を弁護士に依頼する場合は、債権者1件につき20,000~40,000円程度の弁護士費用がかかります。また、過払い金を回収できた場合は、回収額の15~20%程度を「過払い報酬」として支払います。

個人再生と自己破産の弁護士費用は、さらに高額です。個人再生では、債権者の数にかかわらず30万~50万円程度の着手金がかかるほか、「個人再生委員」という人物が裁判所から選任されるケースでは、その人への報酬として15万~25万円程度を支払います。

自己破産でも、同時廃止という手続きでは20万~30万円程度、より複雑な管財事件という手続きでは30万~50万円程度の着手金が必要です。

さらに管財事件の場合、「破産管財人」が裁判所によって選任されるため、その人への報酬として最低20万円かかります(複雑なケースや、弁護士を立てない本人申立ての場合などは、50万円程度かかることもあります)。

手間がかかる

債務整理の種類によっては、費用だけではなく手間もかかります。

特に手間がかかるのは、個人再生と自己破産です。どちらも、実際の手続きはすべて弁護士が代行してくれますが、それでも債務者が自分で用意しなければいけない書類がたくさんあります。

たとえば、収入と支出の内訳を一覧表にした「家計収支表」や、財産に関する書類(預貯金通帳や生命保険証書、退職金証明書など)です。

また、生計を同一にする家族の収入を証明する書類が必要になることもあります。

保証人に迷惑がかかる

保証人のいる借金を整理する場合は、保証人に迷惑がかかってしまうデメリットがあります。

特に個人再生と自己破産では、任意整理や特定調停のように整理したい債権者を自由に選べないため、保証人のいる借金も含めてすべての債務の整理が必要です。

その結果、債務者本人の借金は減らせても、残りの金額は保証人に一括で請求が行ってしまいます。

保証人も返済が難しい場合は、主契約者と一緒に債務整理をするしかない場合もあります。

迷惑を最小限にとどめるためにも、特に保証人のいる借金を個人再生もしくは自己破産する場合は、必ず本人にそのことを伝えてよく相談した上で、早めに弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。

財産の所有が制限される(自己破産)

債務整理の中でも、財産の所有を厳しく制限されるのが自己破産です。

自己破産ではすべての債務を免除してもらう代わりに、生活に必要な最低限の財産以外はすべて失うことになります。

具体的には、価値が20万円を超えるものは原則として破産管財人によって没収され、換金されて債権者に配当されます。ですから、住宅や、評価額が20万円を超える車などは手放さなくてはいけません。

現金については、当面の生活もあるため、99万円までの所有が認められています。

一方、個人再生では原則として財産の制限はありませんが、所有する財産の総額以上の金額を弁済しなければならないとする、「清算価値保証の原則」というルールが適用されるため、価値の高い財産を手元に残すと弁済額が増えてしまう可能性があります。

ただし、ローン返済中の持ち家については、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度を利用することで、特別に個人再生の整理対象から外すことが可能です。

一部の資格・職業が制限される(自己破産)

自己破産では、破産手続き開始決定後から、免責が下りるまでの間、一部の資格や職業が制限されます。

たとえば、弁護士や司法書士などの「士業」や、お金を扱う仕事(国民金融公庫の役員や貸金業者など)、保険関係の仕事(生命保険募集人や損害保険代理店など)、不動産関係の仕事(宅地建物取引業や宅地建物取引主任者など)が代表的です。

ほかにも、警備員や卸売業者、旅行業者などの職に就くことも一時的に制限されます。

自己破産手続き中に就けない職業「資格制限」とその理由

裁判所から無事に免責が下りて借金がチャラになれば、制限も解除されるのですが、職業によっては一時的に勤務に支障が出る場合があります。

官報に氏名や住所が掲載される(個人再生と自己破産)

債務整理の中でも、個人再生と自己破産だけのデメリットとして、官報公告があります。

官報とは、国が毎日発行する機関紙のことです。個人再生や自己破産をすると、官報に氏名や住所などが掲載されます。

一般の人で官報を定期購読する人は少ないため、官報公告によって債務整理の事実が周囲に知られる可能性は低いですが、リスクはゼロとは言い切れません。また、官報をチェックした闇金業者が、勧誘のDMを送ってくることもあります。

まとめ

債務整理のデメリットを7つご紹介しました。

債務整理にはいくつかのデメリットがあるのは事実ですが、今のままでは借金の完済が難しい場合は、メリットのほうが大きいのも事実です。

ちなみに、「自己破産をすると会社をクビになる」「年金がもらえなくなる」などの噂もありますが、そのような事実はありません。また、ブラックリスト状態になるのは債務整理をした本人だけで、家族の信用情報への影響はまったくありません。

誤った情報に惑わされず、正しくデメリットを理解した上で、必要であればなるべく早めに債務整理を検討することをおすすめします。