
監修者
元弁護士ライター 福谷 陽子
債務整理の手続きには、費用がかかります。
債務整理の種類によっても異なりますが、特に個人再生と自己破産の費用は数十万円かかることが一般的です。
これらの手続きは複雑なため、多くの人は弁護士に依頼することになりますし、さらに裁判所への予納金という費用もかかるからです。
しかし、債務整理を行なう人は経済的な余裕がないことが普通ですから、債務整理にかかる費用を一括で払うのは難しい場合が多いと思います。
そのような時に、債務整理の費用を分割払いするための方法をご紹介していきます。
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目次
債務整理にかかる費用は、大きく分けて3つ
債務整理にかかる費用の分割払いは、費用の種類によっても異なるため、まずはそれぞれの違いからご説明したいと思います。
債務整理の費用には、大きく分けて「弁護士費用」「印紙代や切手代などの実費」「裁判所への予納金」の3つがあります。
弁護士費用
弁護士に債務整理を依頼する際にかかるお金です。
金額は法律事務所によってもさまざまですが、任意整理の場合は債権者1件につき20,000~40,000円、さらに過払い金を回収できた場合は、回収額の15~25%を「過払い報酬」として支払います。
より複雑な手続きが必要になる個人再生と自己破産の弁護士費用は、さらに高額です。個人再生では、債権者の数にかかわらず30万~50万円程度の着手金がかかります。
自己破産は、行なう手続きの種類によっても異なり、同時廃止という手続きでは20万~30万円、より複雑な管財事件では30万~50万円程度が相場です。
印紙代や切手代などの実費
債務整理の手続きにかかる経費です。
たとえば、債権者や裁判所に連絡する際の通信費や、郵便切手代、書類に貼る印紙代などがあります。
任意整理の場合は、すべて合わせても大きな額にはならないため(数千円程度)、着手金に込みにしている法律事務所も多くみられますが、たとえば個人再生では申立書に貼る印紙代だけでも10,000円かかるため、着手金とは別に支払う場合が多いです。
債務者が自分で行なうことの多い「特定調停」という手続きでは、弁護士費用がかかりませんので、実費だけで済ませることが可能です。
裁判所への予納金
債務整理の中でも、地方裁判所に申し立てを行なう個人再生と自己破産では、裁判所に納める「予納金」というお金がかかります。
どちらの手続きでも必ずかかるのが、「官報公告費用」です。個人再生や自己破産をすると、官報という国発行の機関紙に氏名や住所が掲載されますが、そのための費用として10,000円~20,000円程度がかかります。
さらに、個人再生では「個人再生委員」という人物が裁判所から選任された場合、その人への報酬として15万~25万円程度がかかります。
個人再生委員が選任されるかどうかは、裁判所によっても異なり、たとえば東京地方裁判所ではすべての案件で個人再生委員が選任されています。
一方、自己破産では管財事件の場合、「破産管財人」が裁判所から選任されるため、その人への報酬として20万円程度(場合によっては50万円程度)の予納金を納めます。
このように、債務整理にかかる費用で高額になりやすいのは、弁護士費用と裁判所への予納金です。次に、これらの費用を分割払いするための方法をご紹介していきます。
弁護士費用を分割払いする方法
分割払いのできる法律事務所を選ぶ
弁護士費用の一括払いが難しい場合は、分割払いに対応している法律事務所に依頼するという方法があります。
ただし、分割払いのシステムは事務所によってさまざまです。たとえば、着手金の一部を前払いするところもありますし、「2~3回までなら分割OK」とするところもありますので、必ず事前に確認しましょう。
法テラスに立て替えてもらう(民事法律扶助制度)
月々の返済額をできるだけ低く抑えたい場合は、「法テラス(日本司法支援センター)」に相談するのがおすすめです。
法テラスでは、収入や財産の要件を満たした人を対象に、弁護士費用の立て替えを行なっています。返済は月々10,000円が基本ですが、難しい場合は5,000円でも可能です。
また、生活保護を受けている方は、原則として受給している間の返済は猶予されます。
立て替えてもらえるのは弁護士費用のみです。ただし生活保護受給者に限り、自己破産の予納金を、官報公告費用は全額、破産管財人への報酬金は原則20万円まで立て替えてもらえます。個人再生の予納金は、生活保護受給の有無にかかわらず不可です。
申し込みは、債務整理を行なう人の居住地または勤務地が存在する都道府県内の法テラスで受け付けています。
裁判所への予納金を分割払いする方法
裁判所の指示で積み立てする
個人再生で個人再生委員が選任された場合、および自己破産の手続きが管財事件になった場合は、高額な予納金が必要となります。
予納金はあらかじめ納めるお金ですので、納付が完了しないと個人再生や自己破産の手続きを進めることができません。
一括での納付が難しい場合は、裁判所から数ヶ月の猶予が与えられ、その間に積み立てを行なうことが一般的です。
たとえば東京地方裁判所では、原則として4ヶ月間(計4回)の分割払いで予納金を積み立てることができます。
東京地方裁判所では、個人再生委員の予納金については、1回目の納付後に開始決定が出ます。
ただし、裁判所によっては予納金が完納されるまで申し立てが保留状態となり、手続きが進まないこともある点に注意が必要です。
生活保護を受け、法テラスに立て替えてもらう(自己破産の場合)
法テラスでは、基本的に予納金の立て替えは行なっていませんが、生活保護受給者に限り、自己破産にかかる予納金を立て替えてもらえます。官報公告費用は全額、破産管財人への予納金は原則20万円が上限です。
どうしても予納金を捻出できないほど経済状態が悪化している場合は、生活保護の申請を検討しましょう。
まとめ
債務整理にかかる費用を分割払いする方法をご紹介しました。
弁護士費用は、法律事務所で分割払いにしてもらうか、法テラスの立て替え制度を利用するのがおすすめです。
一方、裁判所への予納金は、原則として法テラスでも立て替えてもらえないため、一括での納付が難しい場合は積み立てすることが一般的です。
ただし、病気や失業などで積み立てが難しい場合は、生活保護を受給して法テラスに立て替えてもらうか、もしくは親族や知人からお金を援助してもらうしかありません。
絶対にしてはいけないのは、債務整理の費用を捻出するために、新たに貸金業者などからお金を借りてしまうことです。
これから債務整理をすることをわかっていて借り入れるのは、業者をだます行為と同じですし、特に自己破産の場合は「免責不許可事由」に該当し、認可を受けられなくなることもあります。
費用の工面のことも含めて、まずは信頼できる弁護士に相談することから始めましょう。