
会社や法人が自己破産の手続きを行う場合、個人とは若干異なる点はありますが、やらなければならないことは大体共通しています。
一般的に会社の破産は債権者の数や債権額等が大きくなることが予測されるため、会社規模にもよりますが司法書士ではなく弁護士に依頼するケースが多くなると思われます。
では、弁護士に手続きを依頼した場合の会社破産における流れや手続きの内容を確認してみましょう。
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目次
1.相談~受任
相談に行った際に、会社の現状を弁護士に詳細に伝えます。現在の会社の財務状況や、債権者の内容や負債の額など、資料があればそちらを提示しながら説明する方が弁護士の方もより正確に現状を把握しやすくなります。
もし、正式に破産手続きを依頼することになったら、委任契約書を交わし、弁護士から各債権者に「受任通知」を出してもらいます。これにより債権者は直接会社への取り立てをすることができなくなるため、それ以降は弁護士がすべて窓口となってやりとりをすることになります。
個人の場合は自己破産までする人はほぼ財産を持っていないことが多いのですが、会社の場合は負債もあるが財産もそれなりにあるというケースも多いので、配当をスムーズに行うためにもそれらを現状のまま保持しておくことが必要です。
よって、申立て準備の段階までに預金通帳や不動産の権利証、保険証券など会社財産に関する重要書類を弁護士が預かっておくことになります。
2.申立準備、申立て~破産管財人選任
破産手続きの申立てをするには、申立書および添付書類を準備しなければなりません。
申立書の付属書類として記入する「債権者一覧表」や「陳述書」については、会社の中の事情を知る担当者が作成したものを、最終的に弁護士がチェックし、他の書類と照らし合わせて不備や矛盾がないかどうかを確認し、裁判所に提出できる形に整えます。
また、裁判所の方で会社のお金の流れを把握するためにさまざまな資料が必要となりますので、弁護士の指示のもとにこのような書類を揃えます。
- 法人登記簿(全部事項証明書)
- 会社の確定申告書(3期分)
- 不動産の登記簿(全部事項証明書)
- 債務に関する契約書等
- 車検証のコピー
- 預金通帳(2年分)
- 会社の会計帳簿
- 保険証券のコピー
- 租税に関する納付書等のコピー
上記以外でも裁判所により提出を求められる書類もあります。ともかく、お金に関する書類はすべて提出できる状態に整えておいた方がよいでしょう。
これらの申立書、添付書類が整ったら会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に提出します。裁判所では、書類をひととおり確認し、まずは破産手続きの法律的要件を満たしているかどうかを検討します。
個人破産の場合はここで9割方「同時廃止」といって、配当が行われない(破産管財人をつけない)で破産を終結させる手続きに移行します。
もちろん法人でも同時廃止がありえないわけではないのですが、裁判所によっては(例えば東京地裁)法人が破産の申し立てをすると、自動的に「管財事件(破産管財人がついて配当を行う手続き)」に振り分けることもあります。
3.破産管財人による業務~債権者集会
破産管財人というのは、裁判所から選任されて(弁護士が就任することが多い)破産に関する業務を行う権限を持ちますが、具体的には次のような職務を行います。
破産財団に関する職務
破産財団というのは、債権者に配当するべき財産の集合体のことです。適切な時期に、高価に売って破産財団を充実させる、そして公平に債権者に配当するということを配慮しなければならないのが破産管財人の責務です。
否認権の行使に関する職務
否認権とはたとえば、本来は破産財団に属して配当に充てられなければならなかったような財産が故意に処分されていたり、債権者間の平等がはかれないような弁済が行われていた場合にそれを否定し、破産財団に戻す権限のことです。
破産債権の確定に関する職務
債権届出書の記載や関係者からの聴取に基づいて債権を正確に調査するのも破産管財人の仕事です。
債権者集会に関する職務
債権者に対し、財産状況の報告等を行うための集会を行いますが、裁判所はこれに基づいて必要な決定を下すことになります。
配当に関する職務
もし、破産財団から破産手続きの費用と財団債権(租税など、優先的に弁済を受ける必要性が高い債権)を除いて余剰が出れば配当を行います。
破産管財人は、破産手続の開始後に裁判所や破産手続きの代理人弁護士と協議しながら会社財産を処分、換価(お金に換える)していきます。
そして1回もしくは数回の債権者集会を開催し、その時点での管財業務の進み具合を報告します。債権者集会の時点で管財業務が終了していなければ再度、開催します。
4.配当・終結
破産管財人は、財産の換価が終了して債権者に配当する財産があった場合は配当の手続きを行います。
ただ、破産財団をもって破産手続きの費用をまかなうことができない場合、「異時廃止」といって、配当が行われないまま手続きが終結します。
最初に弁護士への相談、委任をしてからこの「終結」まで、事案により異なりますが大体6カ月前後の期間がかかると考えておけばよいでしょう。
破産の費用はどのくらいかかるのか
お金がなくて破産手続きの費用すら出せないのでは?という心配をする経営者もいることでしょう。
破産になぜ費用がかかるのかというと、上記の「破産管財人」に選任された弁護士に実質かなり仕事をしてもらうことになるため、その報酬分を「予納金」として裁判所に納めなくてはならないからです。
予納金の金額は負債総額により異なりますが、法人破産の場合、通常の管財事件ですと70万円以上はかかります。
なお、中小以下の規模の会社については会社財産がほとんど残っていないことも多いため、そのような場合は全体として手続きをコンパクトにした「少額管財」が採用されることがあります。
少額管財になった場合、東京地裁の例では負債総額に関わらず一律予納金は20万円となっています。
ただ、破産手続きの細かい運用や費用はその地方裁判所によって異なる場合も多いため、相談に行った先の弁護士に確認するか、あらかじめ裁判所に確認しておく方が無難でしょう。