
執筆者
元弁護士ライター 福谷 陽子
自己破産をすると、借金返済義務がすべてなくなるので、借金問題を根本的に解決することができます。しかし、自己破産をすると、いろいろなことが制限されるイメージがあります。
実際に自己破産をした場合、その後は何ができなくなって、何ができるのでしょうか?
たとえば、自己破産後借入をすることができるのかが問題になります。また、自己破産後結婚や就職をしたり、海外旅行や引っ越しなどをすることができるのかについても、正しく知っておく必要があります。これらのことを知らないと、安心して自己破産出続きを利用する事もできません。
そこで、今回は、自己破産をした場合に今後できることとできないことについて、解説します。
こちらのページでは自己破産したら今後できなくなることをご紹介しておりますが、百聞は一見に如かずで直接専門家に聞いてみるのが1番わかります。
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自己破産をすると借入ができなくなる
自己破産すると、できなくなることがあります。しかし、自己破産をするとできなくなると思われていることの多くは実際にはできるケースが多いのです。ただ、本当に自己破産するとできなくなることの1つに、「借入」があります。
そこで、以下では、自己破産すると借入ができなくなる問題について説明します。
自己破産するとブラックリスト状態になる
自己破産には限りませんが、自己破産を含む債務整理手続きをすると、いわゆるブラックリスト状態になってしまいます。
債務整理をすると、信用情報機関が保有している個人信用情報に事故情報が記録されてしまいます。消費者金融やクレジットカード会社、銀行などの金融機関は、融資の審査の際に個人信用情報を参照します。そこで、事故情報が記録されていると、融資の審査に通らないことになってしまいます。
このように、個人信用情報に事故情報が記録されていて、融資の審査に通らない状態のことを、俗に「ブラックリスト状態」と言います。
自己破産をしてブラックリスト状態になると、ローンやクレジットカードなどの利用をすることができなくなります。
ブラックリスト状態になってできなくなること
自己破産をしてブラックリスト状態になると、具体的にはどのようなローン利用ができなくなるのでしょうか?
まず、住宅ローンや車のローンなどの各種のローンが利用出来なくなります。銀行でも審判会社でも、ローンは利用出来ません。消費者金融のキャッシングも利用出来なくなります。また、クレジットカードを新たに発行することもできなくなりますし、更新の手続きもできなくなります。
さらに、他者の借入についての連帯保証人になることもできなくなります。たとえば、子どもの奨学金借入の連帯保証人になることもできません。
自己破産後のブラックリスト期間
自己破産をした場合のブラックリスト期間は永遠に続くわけではありません。
自己破産後のブラックリスト期間は、信用情報機関での事故情報が消去されれば終わります。事故情報の記録期間は、各信用情報機関によって異なります。
信用情報機関にはCICとJICCとKSC(全国銀行個人信用情報センター)があります。CICとJICCの場合には、事故情報は自己破産手続き後「5年間」保管されます。これに対して、KSCの場合には、自己破産手続き後「10年間」事故情報が保管されます。
クレジットカード会社や信販会社の多くはCICに加盟しており、消費者金融の多くはJICCに加盟しています。銀行や信用金庫などの金融機関の多くはKSCに加盟しています。
よって、自己破産後、消費者金融やクレジットカードが利用出来ない期間はだいたい5年程度ですが、銀行ローンなどを利用したい場合には、手続き後10年程度の経過が必要になります。
自己破産しても引っ越しはできる
自己破産をすると、自由に引っ越しができなくなるイメージがありますが、実際に自己破産をして引っ越しができなくなるのでしょうか?以下で説明します。
自己破産の管財手続き中は引っ越しが制限される
自己破産をすると、引っ越しが制限されるケースがあります。それは、自己破産手続きの中でも「管財事件」となった場合です。
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2種類の手続きがあります。同時廃止とは、財産が無い人のための簡単な手続きであり、管財事件とは、財産が一定以上ある人のための複雑な手続きのことです。自己破産の中でも同時廃止手続きとなった場合には特に引っ越しが制限されることはありません。自己破産手続き中にも引っ越し出来ます。
これに対して、自己破産手続きが管財事件となった場合には、引っ越しが制限されます。ただし、一切引っ越しができなくなるわけではありません。住所が変わる場合には裁判所の許可が必要になりますので、裁判所から許可をもらえば引っ越しは可能です。
自己破産後の引っ越しは自由
自己破産の中でも同時廃止になった場合には、そもそも引っ越しが制限されることがありません。よって、自己破産後も当然引っ越しは自由です。
また、管財事件になって自己破産中に引っ越しが制限された場合であっても、自己破産後はその制限が解除されます。よって、管財事件になった場合であっても、自己破産手続きが終了したら、自由に引っ越しができるようになります。
自己破産しても海外旅行できる
自己破産をすると、海外旅行ができなくなるのかという疑問もよくあります。
海外旅行についての制限
海外旅行の取り扱いについても、(2.自己破産しても引っ越しはできる)と同様です。
自己破産の中でも同時廃止になった場合には、海外旅行の制限はありません。これに対して、管財事件になった場合には、自己破産手続き中の海外旅行が制限されます。
ただし、この場合も必要性を説明して裁判所から許可をもらえば、海外旅行(海外渡航)をすることが可能です。また、自己破産後は、完全に海外旅行が自由に認められます。
パスポートへの記載はない
自己破産をすると、何らかの記載がパスポートにされるのかという疑問もよくありますが、自己破産をしてもパスポートに記載されることは何もありません。パスポート利用が制限されることもないので、安心しましょう。
自己破産しても結婚できる
結婚についての制限はない
自己破産をすると、結婚が制限されるのかという疑問もよくあります。この点、自己破産をしても結婚に対する影響や制限は一切ありません。よって、結婚を控えている人や、将来結婚したい人でも安心して自己破産することができます。
戸籍への記載はない
自己破産をすると、戸籍や住民票などの公的な書類に何らかの記載がなされるのかという疑問もよくあります。しかし、自己破産をしても、これらの書類への記入は一切ありません。
運転免許証などの身分証明書にも何らの記載もなされません。自己破産後、身分証明書などを提示することによって、第三者に自己破産した事実が知られることはないので安心しましょう。
結婚相手に知られることもない
自己破産をした場合、その後結婚すると結婚相手に自己破産した事実が知られるのかが心配になることがあります。
この点、自己破産したからと言って、結婚相手にその事実が知られることはほとんどありません。先にも説明したように、戸籍や住民票などの公的な書類にも記載はありませんし、裁判所や弁護士、債権者などから結婚相手に何らかの通知が送られることもありません。
ただ、自己破産をすると、1で説明したとおりブラックリスト状態になります。そこで、ローンやクレジットが利用出来ないことを怪しまれる可能性はあります。
ブラックリスト状態は、自己破産した場合以外にも、たとえば借金を長期滞納した場合などにも起こります。よって、ローンやクレジットが利用出来ないからと言って、必ずしも自己破産したことにはなりません。この意味で、自己破産しても結婚相手にバレる可能性はほとんどないと言えるのです。
自己破産しても就職はできる
自己破産をすると、就職できなくなるのではないかという心配をする人も多いです。実際、自己破産によって就職に影響はあるのでしょうか?以下で解説します。
自己破産中は資格制限がある
自己破産をすると、破産手続き中は一定の職業につくことができなくなります。たとえば、弁護士や司法書士、税理士や公認会計士、不動産鑑定士などのいわゆる士業と呼ばれる仕事に就くことができません。
不動産業者の宅建業を行うこともできませんし、警備員や保険外交員などの職に就くこともできなくなります。さらに、自分では財産管理ができなくなった人のために代わりに財産を管理する「成年後見人」などになることもできなくなります。
このように、一定の職業に就けなくなったり、資格を失うことを「資格制限」と言います。
ただ、自己破産による資格制限は、自己破産手続きが終了して免責がおりると、解除されます。よって、自己破産後は資格制限によって職業を制限されることはありません。自由に就職することができます。もちろん個人事業などの起業も自由ですし、法人の設立もできます。
自己破産を採用先に知られることはない
自己破産をすると、就職活動をした場合に採用先の企業に自己破産した事実を調べられるのではないかと心配する人がいます。しかし、自己破産したからと言って、採用先の企業にその事実が知られることは、まずありません。
採用先の企業が、過去の自己破産についての調査をすることもありませんし、裁判所や弁護士、債権者などから採用先の企業に自己破産したことを通知することもありません。
ただ、過去に自己破産の対象にした消費者金融会社やクレジットカード会社などに就職しようとした場合には、過去の自己破産を知られている可能性はあります。
自己破産しても公務員になれる
自己破産をすると、公務員になれないのではないかという疑問も多いです。この点も、問題はありません。自己破産しても公務員になることはできます。公務員になる際には身上調査があるという噂もありますが、過去に自己破産したかどうかを調べられることはまずありません。
公務員は、前科があると欠格事由となってなることができないので、前科があるかどうかについては照会されますが、過去の自己破産についてまでは調べる意味も無く、調べることもありません。
よって、将来公務員になりたい場合にも、自己破産を躊躇する必要はありません。
自己破産すると賃貸住宅を借りられる?
基本的に賃貸契約は自由にできる
自己破産をするとブラックリスト状態になるので、賃貸住宅の契約もできなくなるのではないかという心配をすることもよくあります。
この点、自己破産などの債務整理手続きを利用しても、基本的に賃貸住宅の契約はできます。ブラックリスト状態は、あくまで個人の借入(ローンやクレジット)の問題であって、不動産の賃貸契約とは全く別個の制度だからです。
賃貸住宅を契約する場合の不動産屋や大家が、信用情報機関の個人信用情報を調査することもありません。
よって、自己破産をしても賃貸アパートや賃貸マンションなどの審査に落ちることはなく、収入などの要件を満たしていれば、賃貸契約をして引っ越しすることができます。
実際に、自己破産中に賃貸住宅を借りて引っ越しをする人もたくさんいます。
家賃支払い方法でクレジットカードや信販会社を利用する場合
自己破産をしても、基本的には賃貸住宅の契約はできますが、家賃支払い方法において、クレジットカードや信販会社を通じて支払うタイプの賃貸契約には注意が必要です。
この場合には、家賃支払いに介在するクレジットカード会社や信販会社による審査があります。これらの貸金業者の調査では、個人信用情報が参照されるので、自己破産をしてブラックリスト状態になっていると、審査に通らなくなってしまいます。
よって、家賃支払にクレジットカードや信販会社を通じる賃貸契約は、自己破産後のブラックリスト状態になっていると利用出来ません。同じ理由で、信販系の保証会社が入るタイプの賃貸契約の場合にも、自己破産後のブラックリスト状態だと審査に通らない可能性があります。
この場合には、家賃支払いにクレジットカードや信販会社を通じずに、大家などに直接払いするタイプの賃貸契約を利用する必要があります。
まとめ
今回は、自己破産後できることとできないことについて解説しました。自己破産をすると、ブラックリスト状態になってローンやクレジットの利用ができなくなります。ただ、自己破産後は引っ越しや海外旅行はできますし、結婚や就職が制限されることもありません。
基本的には、賃貸住宅の契約をすることも自由にできます。自己破産をしてもできなくなることは限られているので、さほど躊躇する必要はありません。