
自己破産を検討していたものの、やはり途中で他の債務整理に切り替えるという事例もあります。
では、具体的にどのような事例でそういった選択がされるのかを考えてみましょう。
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ケース1 実は債務が少なかった
債務整理をする場合に、前提として必ずやるべきことがあります。それは「利息引き直し計算」と呼ばれる作業で、その後の債務整理の種類を決定するために必要不可欠です。
債務者が最初に「自分にはこれだけの借金がある」と認識している金額は、実は本当の債務額ではないことがあります。
現在では「貸金業法」という法律が改正されて利息に関するルールがクリアになっているのですが、以前は「グレーゾーン金利」といって、一定の条件のもとに高金利が半ば許容された状態になっていたことがありました。
具体的な時期としては大体、平成20年より以前の消費者金融や、クレジット会社のキャッシング取引などに多いのですが、年利20%を超えるような取引が普通に行われていたのです。
このような取引は、「利息制限法」という法律に則ってもっと低い金利で取引されていたものとみなします。具体的には今までに支払った利息の中で利息制限法を超える部分を元本に充当したと考えて計算し直すのです。
これが「利息引き直し計算」と呼ばれるものであり、これを行うと債務者によっては劇的に現在の借金が減ることがあります。
中には「200万円あると思っていた借金が50万円になった(ゼロに近くなることも)」などの事例もあります。一般的にはこういった高金利取引をしていた時期が長ければ長いほど現在の借金は減っている可能性が高いことになります。
もし、上記のように大幅に借金が減っていた場合、「もう自己破産しかない」と考えていた人が任意整理など、他のもっと軽い手続きで済むこともあるということです。
ケース2 過払い金があったので他の債権者に返済できた
ケース1の延長上にあるともいえるのですが、「利息引き直し計算」をした結果、どんどん債務額が減っていき、最終的に元本を支払い終わっているのにまだ債務が残っていると思って払っていたということがあります。これを「過払い金」といいます。
貸金業者としては、「これは正当な利息だ」との主張で設定しているわけですから、そのような状態になっても普通に支払いを受領し続けています。
しかし、もし後から過払い金があることが発覚した場合、債務者はその取戻しを要求することができることになります。
過払い金の返還が順調にいった場合は、そのお金を使って債務が残っている債権者に返済すると自己破産をしなくても済むということがあります。
もちろん、現実的に過払い金を返してほしいと主張したからといってすべてのケースで全額が戻ってくるわけではありません。
今から10年くらい前であればかなり過払い金返還率が良かった時代もありました。しかし債務整理がテレビCMなどで盛んに宣伝されるようになってからその数が激増し、消費者金融などがその返還請求に耐えられなくなってきたのです。
よって、「任意の和解では過払い金の50%しか返還しないのでそれ以上を要求するなら訴訟をしてください」とか「うちは80%以上は絶対返還できない」などと言ってくる業者も出てきました。
訴訟の費用や手間をかけてまで全額の取戻しをするかどうかは債務者自身が判断することは難しく、手続きを依頼する法律家とよく話し合って決めるべきでしょう。
ケース3 自己破産では職業制限に引っかかる
自己破産をするデメリットの一つに「手続きの間は職業制限がかかる」ということがあります。
この職業制限とは、自己破産をする人が「財産管理に躓いてしまった」という事実に着目し、他人の金銭を管理する業務を行うことを制限するルールです。
具体的にどのような職業が制限されるのかというと、弁護士や司法書士、税理士、宅地建物取引士、警備員、生命保険外交員などです。
要するに、業務上、日常的に他人のお金を管理しなければならないような職種の人は自己破産中に業務を行うことが適切ではないとされているのです。
この制限はずっと続くわけではなく破産手続開始決定から復権(免責許可決定の確定など)までということになりますので、人によっては2、3カ月など非常に短いこともあります。
借金の状況からして自己破産も選択肢に入るような人であっても、この職業制限がネックになって自己破産を選択することが難しい場合があります。
特に保険会社では自己破産を公告する「官報」をこまめにチェックしており、社員が自己破産することが解雇事由とされている会社もあります。
そのような場合には自己破産を回避するために「個人再生」など、その他の手段を選択せざるを得ないことになります。
個人再生とは、裁判所により元本自体は減らしてもらえるものの、それも無制限ではなく一定以上の金額を分割払いしていかなくてはならない手続きです。
裁判所によって「この人には支払う能力がある」ということが客観的に認定されなければ個人再生を選択することはできませんので、それが無理なのであれば自己破産を選び、転職等の方法を検討するしかないということになります。
ケース4 前回の自己破産から7年を経過していない
もし、自己破産手続きが初めてではないという人は、前回の手続きから7年を超えていない場合には「免責不許可事由」となることがあります。
期間の区切りをさらに詳しく言えば、前回の「免責許可決定の確定日」から7年以内に再度の免責許可の申立てをした場合、ということになります。
ただ、免責不許可事由というのは「絶対に免責されない」という意味ではありません。
すぐに免責することがふさわしくないケースであるため、裁判所が選んだ破産管財人の意見も聴きながらじっくり免責の可否を検討しよう、という趣旨であり、9割方のケースでは最終的に「裁量免責」といって免責される措置が取られています。
しかし、個人再生など別の手続きを取れる可能性があるのであれば(=元本を減額さえすれば毎月の返済ができるだけの収入があれば)、やはり再度の自己破産申立てはあまり裁判所側の印象も良いものではありません。
よって、まずはあえて自己破産を回避し他の手続きを検討してみる方がよいのではないでしょうか。