「法人破産」と「個人破産」の違い

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金や負債がかさんで返済や支払が苦しくなったら自己破産などの破産手続きを利用すると解決することができるケースが多いですが、破産手続きには法人が利用する場合の「法人破産」と個人が利用する場合の「個人破産」があります。

法人破産と個人破産にはいろいろな違いがあります。たとえば破産後破産者がどうなるのかや、免責や財産についての取り扱いも異なります。

これらの違いの内容を知っておかないと、破産申立をする場合に適切な準備をすることも難しくなるので、きちんと抑えておく必要性が高いです。

そこで今回は、法人破産と個人破産の違いについて、具体的に解説します。

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法人破産と個人破産の違い一覧表

 法人破産個人破産
破産後の存続消滅する存続する
免責されるかどうか免責はない免責されるかどうかが問題になる
免責不許可事由があるかないある
非免責債権があるかないある 
財産の取り扱い全額が債権者に配当される生活に最低限必要な財産は残せる
破産手続き基本的に管財事件になる同時廃止か管財事件が選択される
準自己破産手続きの利用利用されることがあるない
債権者の対応取り立てをやめない債権者がいる取り立ては止まる
契約関係の清算契約はすべて精算する継続する契約がある

破産後破産者(破産会社)がどうなるのか

自己破産というと個人が利用するイメージが強いですが、実際には会社、企業などの法人が破産することも多いです。企業が破産する場合の破産手続きを「法人破産」と言いますが、法人破産と個人破産とでは、大きな違いがあります。

個人破産と法人破産の違いの1つ目として、破産手続き後破産者(破産会社)がどうなるのかという問題があります。

個人破産の場合、当然破産手続き後も個人は存続します。破産したからと言って社会から抹殺されるなどのことはなく、借金を0にしてもらって、また再スタートを切って生活していくことになります。

これに対して、法人破産の場合には、その法人は破産手続き後消滅してしまいます。法人が破産後も再度復活して活動していくことは予定されていません。このことは、個人破産と法人破産の大きな違いです。

法人破産をして法人が消滅した場合に再度事業を行いたい場合には、別の法人を設立し、それを利用して事業活動を行う必要があります。

免責についての違い

個人破産と法人破産の違いとしては、免責についての違いも大きいです。免責とは、裁判所によって債務の支払い義務をなくしてもらう決定のことです。

個人が自己破産をする場合には免責決定をしてもらうことによって、借金支払い義務をなくしてもらうことができるので、個人が破産申立をする場合には、免責を得ることを目的としています。

免責されるかどうか

個人破産の場合と法人破産の場合とで、「免責」についての取り扱いは異なるのでしょうか?

この点、個人破産の場合には、当然免責制度があります。特に問題がない場合には、裁判所によって免責が認められるので、それによってようやく借金返済義務がなくなることになります。

これに対して、法人破産の場合には、免責という概念はありません。法人は、破産手続き後消滅することが予定されているので、あえて免責を認めなくても債権(債務)そのものが消滅してしまうからです。

このことは、破産手続き後も生きていかなければならない個人の場合と大きく異なります。個人の場合には、自己破産後債権者からの督促を受けないために、免責によって債務の支払い義務を無くしてもらう必要があるのです。

免責不許可事由について

個人が自己破産をする場合には、一定の事由があると免責が認められないおそれがあります。「免責不許可事由」とは、その事由があると免責が認められないという事情のことです。

たとえば借金の原因がギャンブルや浪費であったり、自分の信用状態について偽って借金をした場合、一部の債権者にのみあえて借金返済をした場合などには、免責不許可事由に該当して免責が認められなくなるおそれがあります。

このような免責不許可事由は、法人破産にはありません。法人破産の場合には、そもそも免責という制度自体がないので、免責が受けられるかどうかは問題になりません。よって、免責に関する事情である免責不許可事由という概念もありません。

法人の場合であれば、放漫経営などの結果債務がかさんだとしても、問題なく破産申立ができることになります。ギャンブルや浪費が原因の自己破産が難しい個人破産の場合とでは取り扱いが異なるところです。

非免責債権について

法人破産には免責がありません。よって、当然非免責債権もありません。非免責債権とは、免責決定を受けたとしても免責されない債権のことです。

自己破産をして免責決定を受けると、基本的にすべての債務の支払い義務がなくなりますが、一部の債権はなくならずに存続します。

たとえば租税などの請求権、悪意で加えて不法行為にもとづく損害賠償請求権などは、免責を受けても残るので、支払をしなければなりません。個人が税金を滞納している場合には、自己破産手続き後も支払をしなければならないのです。

これに対して、法人が破産をする場合には、法人は消滅しますし、それにともなって債務も消滅します。よって、法人が破産する場合には、非免責債権は問題になりません。

非免責債権という概念そのものがなく、すべての債権が消滅することになります。法人の消滅後に、法人が負っていた債務の一部を支払わなければならなくなることはありません。

財産についての違い

個人破産と法人破産とでは、「財産」についての取り扱いも異なります。

自己破産などの破産手続きを利用すると、基本的に破産者や破産会社のすべての財産は現金に換えられて、債権者に配当されてしまいます。よって、財産は破産者の手元からは無くなります。

しかし、個人破産の場合には、生活に最低限必要な分の財産は手元に残すことができます。

具体的には、預貯金や生命保険などの個別の財産については、20万円以下のものであれば持ったまま破産することができますし、現金であれば99万円以下まで持ったまま破産することができます。

また、破産手続き開始決定後に得た財産についても、破産者の自由財産となるので、債権者に配当する必要はなく、破産者が手元において自分のために使うことができます。

これに対して、法人破産の場合には、手元に残せる最低限の財産という概念はありません。そもそも法人が破産すると、法人は消滅してしまうため、法人の元に財産を置いておく必要がないからです。

よって、法人破産の場合には、すべての財産が換価されて、債権者に配当されます。このことも、個人破産と法人破産の大きな違いです。

法人破産の場合には、法人の財産を一部手元に残して、破産手続き後新たな起業資金にするなどのことはできないので、注意が必要です。

手続きの違い

法人破産と個人破産とでは、利用する手続きも異なります。破産手続きには、「同時廃止手続き」と「管財手続き」があります。

同時廃止とは、財産がほとんどない人のための簡易な破産手続きであり、管財事件とは、財産がある程度ある人のための複雑な破産手続きのことです。

個人の場合には、一定以上の財産があるかどうかによって、同時廃止か管財手続きになるかが選択されて手続きが進められます。

その割合としては同時廃止の方が多く、個人破産の7割程度は同時廃止であるとも言われています。同時廃止になると、破産手続きにかかる期間も短くなりますし、手続きにかかる費用も安くなります。

管財事件になると、破産管財人が選任されて、破産者や破産会社の財産を換価して債権者に配当する手続きが必要になるので期間も長引きますし、破産管財人の予納金(最低20万円)が必要になるので、手続きにかかる費用も高くなります。

法人破産の場合には、基本的にすべての事案で管財事件になります。理論的には法人が同時廃止になる可能性も絶対にないわけではありませんが、実際に法人が同時廃止で破産することはまずありません。

法人の破産手続きでは、債権者もたくさんいることが多く、契約関係も複雑で、破産管財人がついてさまざまな処理をすることが必要になるからです。

このように、個人破産と法人破産とでは、選択できる破産手続きの内容が異なります。

個人破産の場合には、財産が無い場合には同時廃止手続きを利用して手間や費用の負担を抑えることができますが、法人破産の場合には、財産があってもなくても管財事件になるので、ある程度の手間や費用を覚悟する必要があります。

(参考:自己破産にかかる費用と相場

準自己破産手続きの選択の有無

個人破産と法人破産とでは、破産手続きの申立方法にも違いがあります。

個人破産の場合には、破産申立ができるのは債務者本人か債権者です。実際には債務者本人が申し立てることが圧倒的に多く、その場合には自分で申立をするので自己破産と言われます。

法人の場合には、これらに足して「準自己破産」という申立方法があります。準自己破産とは、法人の取締役などの役員や理事などが、法人の破産申立をする場合です。

法人が自分で破産申立をするためには、法人の意思決定方法として、取締役会を開催して決議をとらなければなりません。

しかし、会社が破産しようとする場合、一部の役員が反対して取締役決議が成立しないこともありますし、取締役が逃げてしまって行方不明になっているケースなどもあります。このようなケースに法人がまったく破産申立ができないとなると、不都合です。

そこで、法人の場合には、その法人の役員や理事などが単独で法人の破産を申し立てることができるという制度をもうけています。それが準自己破産の手続きです。

準自己破産は、自己破産とは異なるけれども、自己破産に準じて取り扱われるという意味で「準」自己破産という名称がついています。

個人の場合には、その個人が自分で意思決定をして自己破産するかどうかを判断するので、準自己破産という概念はありません。

このように、法人破産の場合には、準自己破産という破産申立方法がある点で、個人破産と違いがあります。

債権者の対応の違い

法人破産と個人破産とでは、債権者の対応にも違いがあります。

個人破産の場合、債権者の多くは消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者や銀行などの金融機関です。これらの金融機関は、債務者が破産手続きに入ると、以後は取り立てをしなくなります。

そもそも弁護士が介入した後に債務者に直接連絡をして取り立てをすることは、貸金業法や金融庁のガイドラインで禁じられていますし、これらの債権者は、債務者に破産されることにも慣れているので、破産されたからといってパニックになったりすることがないのです。

これに対して、法人の債権者にはさまざまなものがあります。もちろん、日本政策金融公庫や銀行などの金融機関からの借入もありますが、それ以外にも取引先への未払いの買掛金や、個人や付き合いのあった法人などからの借入などもあります。

このような個人の債権者や取引先の会社などには貸金業法は適用されないので、弁護士介入後は取り立てをしてはいけないという規制は及びません。

また、自己破産をされることにも慣れていないので、この先どうなるのか不安になってパニックになることも多いです。このような債権者が、法人の事務所や代表者の自宅に押しかけてきて大騒ぎになることもあります。

法人が破産する場合には、ある程度債権者からの厳しい追及があることは覚悟しておく必要があります。

契約関係の清算の違い

個人や法人が破産する場合、それまで破産者や破産会社が締結していた契約がどうなるのかという問題もあります。

たとえば、生命保険などの契約をしているケースもありますし、住居や事務所の賃貸借契約をしていることも多いです。電気やガスなどの契約もしているでしょう。

まず、法人の場合には、これらの契約はすべて解除されます。破産手続き後は法人が存続しないのですから、契約を存続させることはできません。たとえば事務所の賃貸借契約をしていれば、契約を解除して事務所を明け渡すことになります。

これに対して個人破産の場合には、住居の賃貸借は継続することが普通です。破産手続きによって住むところがなくなると困るからです。電気やガスの契約についても同じで、個人が破産しても契約関係は継続します。

このように、法人破産と個人破産とでは、破産手続き後の契約関係の清算の有無にも違いがあります。法人の場合には基本的にすべて精算されますが、個人の場合には、必要な契約は残されることになります。

まとめ

今回は、個人破産と法人破産の違いについて解説しました。この両者の一番の違いは、個人の場合には破産後も生活を続けていくことが必要ですが、法人の場合には破産手続き後消滅することです。

個人破産には免責がありますが、法人破産の場合には免責はありません。財産の処理方法についても異なりますし、手続き選択についても違いがあります。

個人破産と法人破産の手続きのことでわからないことがある場合には、今回の記事を参考にして適切に破産手続きをすすめるようにしましょう。

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