会社経営者が自己破産するケース

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

自己破産をすると借金返済義務がなくなるので、多額の借金を抱えている場合などにはとても効果的な解決方法になります。

会社を経営している場合には、多額の負債を抱えてしまうことが多いです。会社が大きくなればなるほど、取引額や借入額も大きくなりますし、事業資金を借り入れる際には代表者が個人保証をするので、代表者個人の負債額も多額になります。

会社が自己破産をする場合には、その会社はどうなるのでしょうか?会社が消滅するのか存続するのかという問題があります。また、従業員をどのように取り扱うべきかなどの対処方法も知っておく必要があります。

そこで今回は、会社や会社経営者が自己破産する場合の問題点について解説します。

会社が自己破産すると会社はどうなる?

自己破産を利用するのは、何も個人だけではありません。会社などの法人も借金がかさんで返済ができなくなったら自己破産をして借金問題を解決します。

会社は、通常の個人よりも借金額が多額になることが多いです。事業資金の借入は数百万円、数千万円になることも普通ですし、取引先への買掛金債務などもあります。会社の事業規模が大きくなればなるほど、さらに負債額は増えていきます。

さらに、会社の場合には、従業員への賃金債務なども負っています。このようにして負債がかさんだ会社が自己破産をすると、その会社はどうなるのでしょうか?

この場合、会社は消滅してしまいます。個人の場合には自己破産しても、その人は手続き後に再スタートを切って生活を続けていくことになりますが、会社の場合にはそういうわけにはいきません。自己破産によって消滅するので、手続き後、同じように社会活動をすることはできなくなります。

従業員の「解雇」

会社が自己破産をする場合には、さまざまな対処が問題になります。中でも重要な問題は従業員の解雇の問題です。以下で具体的に説明します。

解雇の必要性とタイミングが問題になる

会社が自己破産する場合には、従業員を解雇する必要があります。会社が自己破産をするとその会社は消滅してしまうので、手続き後は従業員を継続して雇い続けることができないからです。

従業員が自分から辞めない限りは、会社側から解雇するしかありません。問題はその方法とタイミングです。

破産申立前に解雇する

破産会社が従業員を解雇する場合、そのタイミングはいつにするのが良いのでしょうか?

方法としては、破産申立前に解雇を終わらせておくか、破産申立後に解雇をするかの2つがあります。この場合、通常は破産申し立て前にするのが良いでしょう。従業員にとって、勤務先の破産や解雇は生活の根本に重大な影響を及ぼすものです。

勤務先が破産しただけでも大変なことなのに、破産手続きの中で解雇されるとなると、受けるショックも大きくなり、混乱状態が発生することもあります。結果的に破産手続きが長引いてしまうことも充分にあり得ます。

よって、破産手続きをスムーズにすすめるためにも、従業員の解雇は破産手続き前に会社自身が自分で終えておくことが良いのです。

きちんと会社の状況を従業員に説明して、なるべく全員に納得をしてもらった上で解雇手続きを行いましょう。

破産申立までに解雇しない場合

会社が破産申立前に自分で従業員を解雇しないケースもあります。たとえば、事前に従業員に破産を告げることによって情報が漏えいしてしまうおそれがあったり、破産手続きの進行のために従業員の協力が必要なケースなどでは、破産申立前にはあえて解雇をしないこともあります。

この場合には、破産手続き開始決定後に選任された破産管財人が従業員の解雇手続きを行います。

解雇予告手当も発生する

従業員を解雇する場合には、「解雇予告手当」が必要になるケースがあります。通常、解雇をする場合には解雇の30日以上前に対象となる従業員に通知する必要があります。

ところが、自己破産をする場合などには、このように余裕をもって解雇予告をできないケースがあります。30日以上前の解雇予告ができなかった場合には、その足りない日数分に応じて解雇予告手当を支払わなければなりません。解雇予告手当も1種の債権です。

よって、破産会社が従業員を解雇する場合には、従業員への解雇予告手当が未払い分の債務として計上されることがある点にも注意が必要です。

従業員の「給料」

会社が自己破産する場合に問題になりがちなのは、解雇の問題だけではありません。未払いの賃金や退職金が発生してしまうことが多いです。これらの支払がどうなるのかについても、きちんと理解した上で処理する必要があります。以下で具体的に説明します。

破産手続き開始前3ヶ月間の給料

会社は、従業員に対して賃金支払い債務を負っています。従業員にとって、会社から支給される給料は生活を維持するための非常に重要なお金です。

しかし、会社が破産する場合には、従業員に対して未払い賃金が発生することも多いです。そこで、会社が破産する場合の従業員の給料は、他の一般的な債権と比べて優先的に支払いを受けるという取り扱いをされます。従業員の給料は、破産手続き開始前3ヶ月間の分とそれ以外の部分の未払い賃金に分けられます。

まず、破産手続き開始決定前3ヶ月間の給料は、「財団債権」となります。財団債権とは、破産手続きによらずに随時支払を受けられる債権のことです。よって、破産手続き進行中でも、余剰があれば随時支払をしなければなりません。

退職金についても、退職前3ヶ月間分の給料に相当する金額については財団債権となります。

それ以外の給料

破産手続き開始決定前3ヶ月間の分以外の未払い賃金や、退職前3ヶ月間の給料分以外の退職金は、財団債権にはなりませんが、それでも他の一般的な破産債権よりは優先的な取り扱いを受けます。具体的には、「優先的破産債権」という種類の債権になります。

優先的破産債権とは、財団債権とは違って破産債権の1種ですが、一般の破産債権よりは優先して支払いを受けられる種類の破産債権です。会社の財産を現金に換金した場合に配当をする場合、一般の破産債権よりも優先して支払いを受けられることになります。

未払い賃金立替制度を利用する

従業員への未払い給料が財団債権や優先的破産債権になるとは言っても、そもそも会社に財産が残っていなければ、支払をすることができません。いかに優先して支払を受けることができると言っても、支払う原資がなければどうにもならないのです。

このような場合には、「未払い賃金立替制度」を利用する方法が効果的です。

未払い賃金立替制度とは、会社が破産手続きなどをとって倒産した場合に、従業員の未払い賃金があれば、その未払い賃金の一部を「独立行政法人労働者健康安全機構」という機関から支給される制度のことです。この制度については、賃金の支払の確保等に関する法律という法律によって規定されています。

未払い賃金立替制度を利用すれば、会社が支払をできなくても、上記の独立行政法人から支払をしてもらうことが可能です。従業員からの請求もできますが、会社からの申請もできますので、破産手続きをスムーズにすすめるためには、事前に会社が申請し、用意しておくのが良いでしょう。

未払い賃金立替制度を利用した場合でも、全額の未払い賃金が支払われるわけではありません。具体的には、従業員が退職する日の6か月前から、上記の独立行政法人労働者健康安全機構へ未払い賃金立替の請求をした日までの間の分だけです。

また、立替が受けられるのは、一般の賃金と退職金のみです。ボーナス(賞与)や通勤手当、解雇予告手当などは未払い賃金立替の対象にはなりません。

それでも、この制度を利用すると従業員に与える影響が抑えられますし、かける迷惑も少なくすることができますので、利用出来る場合には是非とも利用すると良いでしょう。

会社経営者も同時に個人破産する

会社が自己破産する場合、会社経営者はどうなるのでしょうか?

会社が自己破産したからといって、当然に会社経営者も自己破産するということになりません。法的に、会社という法人と会社代表者という個人はまったく別個の人格なので、会社が自己破産しても会社経営者は自己破産しないという選択もあるのです。

しかし、実際には会社が自己破産する場合には会社代表者も自己破産することがほとんどです。それは、会社が借入をする場合には、会社代表者が個人保証をしていることが多いからです。

会社は、事業資金などのために銀行借入や日本政策金融公庫などからの借入をよく利用します。このときに、銀行や公庫は、会社の代表取締役に連帯保証人になることを求めます。

よって、会社が自己破産をして返済ができなくなると、銀行や公庫などは、連帯保証人である会社代表者に対して、借金残金の支払いを請求してきます。通常そのような多額の支払いは代表者個人がすることはできないので、結局は代表取締役も自己破産をしなければならないのです。

このように、会社が自己破産する場合には、代表者個人も同時に自己破産することが極めて多いです。裁判所でも、会社と会社代表が同時に自己破産する場合には、予納金を1件分として取り扱うことが普通です。

この場合、会社の自己破産事件と会社経営者の自己破産事件は一緒に取り扱われます。破産管財人も1人ですし、債権者集会や財産状況報告集会などの各種の裁判手続きもすべて同時に進行していきます。

再度の起業は可能か?

会社経営者が自己破産した場合には、手続きによって消滅してしまう会社とは異なり、手続き後も生活をしていかなければなりません。しかし、会社が自己破産してしまうので、会社経営者は職を失うことになります。

この場合、元の会社経営者が再度起業することなどはできるのでしょうか。期間の制限などがないのかが心配になります。

この点、会社経営者が会社と同時に自己破産したとしても、その後起業することは自由です。

起業に関しての期間制限もありません。自己破産手続きの直後に起業して新しい会社を設立することも可能ですし、個人事業を始めることもできます。

再度起業する場合の事業資金調達方法は?

会社経営者が自己破産をした後起業ができるとは言っても、起業のためには資金が必要です。会社経営者が自己破産後に起業する場合、その事業資金はどのようにして調達することができるのでしょうか?

会社代表者が自己破産をすると、その経営者はいわゆるブラックリスト状態になってしまいます。

自己破産には限りませんが、債務整理手続きを利用すると、個人信用情報に事故情報が記録されてしまいます。

貸金業者や金融機関は、貸し付けの審査の際に個人信用情報をチェックするので、このときに事故情報が記録されていると、過去に債務整理をしたことが判明して貸し付けの審査に通らなくなります。

よって、会社代表者が自己破産後に起業しようとして起業資金を借り入れようとしても、ローン審査に通らず、借入ができません。起業資金は、借入以外の別の方法で調達しなければならないのです。

その方法としてはいくつかの方策が考えられます。まずは、自己破産後自分で少しずつ起業のための資金を貯めていく方法です。自己破産後に手に入れた財産はすべて自分のものになりますので、積立を続けて一定の金額になった時点で、それを元手に起業すれば良いのです。

次に、友人や知人、家族などからお金を借りる方法があります。

個人信用情報を参照されてお金が借りられないのは、貸金業者や金融機関だけです。それ以外の個人などからお金を借りることは自由にできるので、自分の起こしたい事業の内容や将来性などをしっかり説明して理解してもらった上で、友人や知人、家族などから借入を募れば、それを元手に起業することができます。もちろん、借入ではなく出資してくれる人がいればそのような方法でもかまいません。

さらに、ブラックリスト期間が明けるまで待つ方法もあります。自己破産後のブラックリスト期間は、借入先によっても異なりますが、消費者金融や信販会社などの場合には手続き後5年、銀行や信用金庫などの場合には手続き後10年程度です。

よって、自己破産後5年ないし10年程度の期間の経過を待ち、事故情報が消えてブラックリスト状態が解消されると、金融機関などから事業資金の融資を受けることができるのです。

まとめ

今回は、会社や会社経営者が自己破産した場合の問題点を解説しました。会社が自己破産をすると、その会社は消滅してしまいます。従業員は勤務先を失うことになり影響も大きいので、会社が自己破産する場合には、解雇や未払い賃金の問題など、従業員への対応をきちんと行う必要があります。

会社が自己破産する場合には、会社経営者も同時に自己破産するケースがほとんどです。自己破産後再度起業することもできますが、その場合起業資金の調達が問題になります。

今回の記事を参考にして、会社が破産する場合に上手に手続きをすすめましょう。

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