自己破産をしてもなくならない借金の種類

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

自己破産をすると、借金がすべてなくなると言われています。基本的にはその理解で正しいのですが、実は、自己破産をしてもなくならない種類の債務(借金)があります。

その場合、自己破産しても、支払が残ってしまうのです。自己破産してもなくならない借金(債務)のことを「非免責債権」と言いますが、非免責債権とはどのようなもので、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?

また、非免責債権は、免責が受けられなくなる「免責不許可事由」とときどき混同されますが、非免責債権と免責不許可事由はまったく別のものなので、その違いも正しく理解しておく必要があります。

そこで今回は、自己破産をしてもなくならない債務である非免責債権について解説します。

非免責債権の一覧

  • ① 租税などの請求権
  • ② 悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権
  • ③ 故意又は重過失による生命・身体への不法行為についての損害賠償請求権
  • ④ 夫婦の相互扶助義務にもとづく請求権
  • ⑤ 子どもの監護養育にもとづく請求権
  • ⑥ 雇用関係にもとづく使用人の請求権、預り金返還請求権
  • ⑦ 故意に債権者名簿に記載しなかった債権
  • ⑧ 罰金等の請求権

非免責債権とは

自己破産をすると、すべての借金の支払い義務がなくなると思われています。ただ、自己破産をして支払い義務がなくなるのは、借金だけではありません支払い義務にはいろいろなものがあります。

借金返済義務とは、お金を借りた場合の返済義務のことですが、広い意味で支払い義務という場合には、お金を借りた場合の借金だけではなく、買掛金の支払義務、家賃の支払い義務、滞納している電話代、損害賠償請求に応じた支払義務などの他の種類の債務も含まれます。

自己破産をすると、基本的にこれらの債務のすべての支払い義務がなくなります。自己破産をすると、借金だけではなくその他の債務の支払もすべて不要になるのです。

しかし、自己破産をしてもなくならないタイプの債権があります。このように、自己破産をしてもなくならない債権のことを、「非免責債権」と言います。

非免責債権は、自己破産をしても免責の対象にならず、手続き後も支払い義務が残ります。よって、非免責債権がある場合には、自己破産後もその支払いをしなければなりません。

当然、債権者から支払いの請求があれば支払に応じなければなりませんし、支払をしなければ債権者らから裁判をされたり、財産の差押を受ける可能性なども出てきます。

免責不許可事由との違い

非免責債権と免責不許可事由は、よく混同されますが、この2つは全く異なります。

非免責債権とは、「自己破産をして免責を受けても、免責されない債権」のことです。この場合、「免責決定」自体は出ています。免責が出ているので、ほとんどの債務は免責されているのですが、その中でもいくつかの債権だけが免責されないのです。

その免責されないいくつかの債権が、「非免責債権」です。非免責債権以外の一般的な借金などは免責されるのです。

これに対し、免責不許可事由がある場合には、そもそも免責自体がおりません。免責がおりないと、一切の債権が免責されません。この場合には、非免責債権だけではなく、それ以外のものも含めてすべての債権がそのまま残ります。

一般的な借金などの債務もそのまま残ってしまうことになります。このように、非免責債権と免責不許可事由はまったく別のものなるので、正しく理解しておきましょう。

参考:自己破産ができない11個の「免責不許可事由」

① 租税などの請求権(破産法253条1号)

非免責債権の種類は、破産法253条1項の各号に記載されています。

まずは、「租税」などの請求権があります。これは、税金や健康保険料、年金保険料などの公的な支払債務のことです。

自己破産をする場合、所得税や住民税などの税金や、健康保険料や国民年金保険料などを滞納しているケースも多いです。自己破産をすると、基本的な債務は免責されますが、これらの公的な支払については免責の対象になりません。よって、自己破産中や自己破産後、これらの税金などの支払をする必要があります。

支払をしないと、税金滞納処分として財産などを差し押さえられる可能性がありますし、税金の支払を滞納すると、延滞期間に応じて延滞税が加算されるので、支払がどんどん苦しくなってしまいます。

健康保険料を支払わないと健康保険が利用出来なくなりますし、国民年金保険料を支払わないと、将来年金が受け取れなくなるおそれなどもあります。

税金や保険料については、役所から一括払いの請求が来ることが普通です。しかし、滞納額が多額になっている場合には、一括払いは困難です。

そこで、一括払いが難しい場合などには、担当の行政庁に連絡を入れて、分割払いなどの相談をしましょう。支払意思があることをきちんと示せば、担当の行政庁も話し合いに応じてくれることが普通です。

どのように分割払いをしていくかについて決まれば、その決まった内容に従ってきっちり支払をしていけば、役所から税金滞納処分で財産を差し押さえられることもありません。支払さえすれば健康保険も利用出来ますし、将来年金を受け取ることもできるようになります。

租税などの請求権を支払っていない場合には、放置することが一番危険なので、支払通知書が届いた場合に絶対に無視してはいけません。

② 悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権(破産法253条1項2号)

自己破産の非免責債権の1種として、悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権があります。悪意で加えた不法行為とは、相手方をあえて傷つけてやろうという積極的な加害意思をもって加えた不法行為のことです。

たとえば、相手方を害してやろうと思って相手方から多額のお金をだまし取った場合などの損害賠償請求権は免責されない可能性が高いです。これに対して、単なる浮気の慰謝料などの場合には「悪意」があったとまでは認められず、免責の対象になることが普通です。

悪意で加えた不法行為の損害賠償請求をされている場合に、その支払いに応じないと、相手方債権者から裁判などをされてしまうおそれもあります。

③ 故意又は重過失による生命・身体への不法行為についての損害賠償請求権(破産法253条1項3号)

自己破産の非免責債権の1種として、故意又は重過失による生命・身体への不法行為にもとづく損害賠償請求権があります。

この場合、「生命・身体」に対する不法行為に限られますが、その場合の主観的な意思としては「故意又は重過失」で足ります。2号の場合とは異なり、積極的な加害意思である悪意までは必要ないのです。

つまり、2号の不法行為の損害賠償請求権は、生命・身体に対する不法行為に限らず、たとえば財産などに対する不法行為も対象になります。このように、対象が広くなる分、積極的な加害意思である「悪意」までが必要になります。

これに対して、3号の不法行為の損害賠償請求権は、生命・身体に対する不法行為に限られますが、その分主観的意思としては悪意までは不要で、「故意・重過失」があれば足りるのです。

たとえば、故意に相手方を殴ったり怪我をさせた場合や、飲酒運転をしていて交通事故を起こし、相手方を傷つけたり死亡させてしまった場合などには、その不法行為による損害賠償請求権は免責の対象になりません。

自己破産しても支払い義務が残ることになるので、債権者から支払い請求があれば、それに応じて支払をする必要があります。もしその支払に応じないと、債権者から支払い請求の裁判をされてしまうおそれがあります。

④ 夫婦の相互扶助義務にもとづく請求権(破産法253条1項4号)

自己破産しても免責されない非免責債権の1種として、夫婦の相互扶助義務にもとづく請求権があります。その代表的なものが、「婚姻費用」です。婚姻費用とは、夫婦の生活費のことで、夫婦が離婚前に別居している場合などによく問題になります。

夫婦が別居している場合、収入の多い方は少ない方の配偶者に対して生活費の分担をしなければならず、これを婚姻費用分担義務と言いますが、自己破産をしてもこの婚姻費用分担義務はなくなりません。

自己破産前に滞納している婚姻費用があっても自己破産免責の対象にならないので、滞納分全額の支払いの必要がありますし、自己破産後の婚姻費用の支払いも続きます。

収入が少ない等の事情があって、現在決定されている金額の婚姻費用の支払いが苦しい場合には、婚姻費用減額調停を起こして、相手方との間で婚姻費用についての話し合いをする必要があります。

婚姻費用の金額は、夫婦それぞれの収入や子どもの数などによって相場が決まっているので、もし現在の婚姻費用の金額が高すぎる場合には、妥当な金額に調整してもらうことができます。

婚姻費用減額調停は、相手方が居住している地域を管轄する家庭裁判所で申し立てます。

⑤ 子どもの監護養育義務にもとづく請求権(破産法253条1項4号)

自己破産の非免責債権の1種に、子どもの監護養育義務にもとづく請求権があります。これは、具体的には子どもの「養育費」などの費用のことです。

親子が別居して暮らしている場合、子どもと同居していない方の親は、子どもの養育費を支払う必要があります。

養育費も婚姻費用と同様、自己破産をしても免責されません。自己破産前に滞納している養育費があれば、自己破産をしても免責されないので、全額の支払い義務が残ります。

もし養育費の支払いをしないと、自己破産後であっても給料等の財産の差押を受けてしまうおそれもあります。養育費は月々支払う債務なので、自己破産後も、毎月養育費支払い義務が発生し続けます。

いったん決めた養育費の金額が高すぎて、支払が苦しい場合には、養育費減額調停を利用して解決します。養育費減額調停とは、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって、養育費の金額を決め直す手続きのことです。

裁判所では、当事者(子どもの父親と母親)の収入状況や子どもの人数によって養育費の金額の相場が定められているので、養育費の金額が高くなりすぎている場合には、養育費調停を利用すれば妥当な金額にまで養育費の金額を減額してもらうことができるのです。

養育費減額調停は、相手方が居住している地域の家庭裁判所に申立をします。養育費の金額は、子どもが20歳になるまでいつでも何度でも決め直すことができます。

離婚後収入が減るなどして、養育費の支払いが苦しくなることは多いですが、そのような場合には自己破産をしても解決できないので、家庭裁判所で養育費減額調停を利用しましょう。

⑥ 雇用関係にもとづく使用人の請求権(破産法253条1項5号)

自己破産の非免責債権の1種として、雇用関係にもとづく使用人の請求権や預り金返還請求権があります。これは、雇用関係がある場合の労働者が、雇用者に対して未払い賃金や退職金、身元保証の預り金などの請求権を持っている場合の問題です。

雇用者が法人ではなく個人事業者の場合には、自己破産をしても、これらの労働者に対する請求権は免責されないので、注意が必要です。

⑦ 故意に債権者名簿に記載しなかった債権(破産法253条1項6号)

自己破産の非免責債権の1種として、故意に債権者名簿に記載しなかった債権があります。自己破産をする場合には、すべての債権者を対象にする必要があります。一部の債権者を隠すことは認められません。

よって、故意に債権者名簿に記載せず、債権者について虚偽の報告をしたり、一部の債権者を隠した場合には、その債権者への債務については免責されないことになってしまうのです。

このようなことをして一部の債権者にだけ支払をした場合には、免責不許可事由に該当して免責自体がおりなくなる可能性もあります。よって、自己破産をする場合には、必ず債権者の全員を債権者名簿に載せる必要があります。

⑧ 罰金等の請求権(破産法253条1項7号)

自己破産をして免責されない非免責債権の1つとして、罰金などの請求権があります。

たとえば交通違反をして課された罰金や、傷害や窃盗をして罰金支払い義務が発生しているケースがあります。

この場合、罰金支払い前に自己破産をしても、その罰金支払い義務はなくなりません。罰金も1号の租税などと同様、公的な支払なので自己破産免責の対象からは外されているのです。

よって、罰金がある場合には、自己破産した後も放置してはいけません。きちんと支払うことが重要です。

まとめ

今回は自己破産の非免責債権について解説しました。非免責債権とは、自己破産をしても免責されない種類の債権です。たとえば税金や健康保険料などの公的な支払や、悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権、婚姻費用や養育費、罰金などが非免責債権となります。

非免責債権がある場合、自己破産をしても免責されないので、債権者と話し合うなどしてきちんと支払っていく必要があります。

匿名OK・無料!借金減額シミュレーター

ws000000

街角相談所-法律-無料シュミレーターは氏名、住所などを入力しなくても利用できる「完全匿名性」の借金解決サービスです。

「いきなり弁護士事務所に電話するのは少し抵抗がある...。」という方も利用しやすくなっています。


無料シミュレートしてみる

債務整理に強い弁護士

無料相談:0120-422-009

弁護士法人サンク総合法律事務所」は月600件以上の相談実績がある債務整理に強い弁護士事務所です。

全国対応・相談無料・365日24時間対応・初期費用0円・分割払いOK・弁護士費用が払えないなどの相談も可能です。


無料相談:0120-422-009