年金受給者と自己破産

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金がかさんで返済が苦しくなったら、自己破産手続きによって借金返済義務をなくしてもらう方法が効果的です。

しかし、自己破産を利用するにはさまざまな制限があるイメージがあります。

年金受給者の場合でも自己破産を利用して借金を0にしてもらうことができるのでしょうか?

また、自己破産を利用した後も、それまでと変わらず年金を受給することができるのかも心配になります。

さらに、年金保険料を滞納している場合には、将来年金を受けとることができなくなるのでしょうか?滞納している年金保険料が自己破産でも免責されないとすれば年金保険料をどのように支払っていけば良いのかも心配です。

そこで今回は、年金受給者と自己破産について解説します。

年金受給者の借金のパターン

借金がかさんで返済ができなくなっている人はたくさんいますが、年金受給者でも借金をしている人はいます。

年金受給者のイメージとしては定年退職をした後の高齢者などのイメージが強いですが、それ以外にも障害者年金などの年金もあります。

年金受給者は、定期的に年金という安定した収入があるので借金しやすく、意外と借金をかかえていることが多いです。

以下では、その具体例を見てみましょう。

生活が苦しくて借金する

年金受給者が借金するパターンには、主に2つあります。まず1つ目は、年金だけでは収入が少ないので、生活などのために借金をするケースです。年金は、現役時代にどれだけの年金保険料の支払いをしていたかによって受け取る金額が異なります。

高級取りのサラリーマンだった人や公務員だった人などは受け取る年金も高額になりますが、個人事業者やフリーターだった人などは、基礎年金分しかもらえません。基礎年金だけだと,月額6万円程度にしかならないので、生活をしていくことは困難です。

そこで、生活などの出費のために、やむなく借金をしてしまいます。このように、年金収入が少ないために借金するケースでは、借金の金額は少ないことが普通です。また、借入先も消費者金融のキャッシングやクレジットカード、銀行カードローンなどの消費者ローンが中心になります。

現役時代からの借金が残っている

年金受給者が借金をかかえているケースの2つ目としては、現役時代からの借金が残っているパターンがあります。

たとえば、代表的なものが「住宅ローン」です。最近では、35年などの長期間にわたる住宅ローン貸し付けが広く利用されています。このような住宅ローンを利用する人は、何も20代の若者とは限らず、40代の人なども利用します。

すると、返済が終了する年齢は70歳を超えてくることも普通です。現役時代は収入が多かったので住宅ローンを充分返済していくことができたけれども、退職をして年金生活に入るととたんに収入が激減します。

すると、それまで返済ができていた住宅ローンの返済がたちまち苦しくなります。退職金が入ったときに住宅ローンの残額を一括で返済出来れば良いですが、そのようにうまくいくとは限りません。

同じような問題は、住宅ローン以外の借金でも起こります。たとえば個人事業者が事業のローンを利用していた場合などにも、高齢などになって事業を廃業して年金しか収入がなくなったら、とたんにローン返済ができなくなってしまいます。

このように、年金受給者が借金しているケースには、現役時代からの借金が残っていて、その負担が大きくのしかかっているケースも多いです。この場合には、借金額は多額になりがちです。数百万円以上の残債務があることも珍しくありません。

また、その借入先も消費者ローンなどではなく、銀行や公庫などの金融機関のローンであることが多くなります。これらの金融機関のローンが返済出来ないために、その返済のために消費者金融やクレジットカードなどを利用してしまい、消費者ローンもかさんでしまっているケースもあります。

年金受給者も自己破産できるのか?

年金受給者も意外と借金を抱えているケースがあるものですが、年金受給者は、定収入があるとは言っても現役世代より収入が少ないことが普通です。そこで借金返済ができなくなることが多いですが、年金受給者でも自己破産をして借金問題を解決することができるのでしょうか?

自己破産とは、債務整理手続きの1種で、裁判所に申立をしてすべての借金や債務の支払い義務をなくしてもらう手続きのことです。

自己破産する場合、特に申立人に制限はありません。個人でも法人でも利用する事ができますし、借金額についての制限もありません。

借金がどれだけ多額でも自己破産をすると完全に支払い義務を0にしてもらえますし、借金額が少なくても、収入が少なくて支払不能の状態であれば、自己破産はできます。

自己破産後は債権者に対する支払が残らないので、自己破産するのに収入は不要です。無職無収入であっても収入が少ない人でも自己破産はできます。

よって、年金受給者も問題なく自己破産することができます。ただ、自己破産は、利用回数に制限があります。具体的には、以前自己破産をして免責(借金が0になること)決定を受けた場合には、その後7年間は自己破産を申し立てることができません。

よって、年金受給者が、過去7年の間に自己破産をしている場合には、再度自己破産を申し立てることはできなくなります。この場合、前回の自己破産から7年が経過するのを待ってから自己破産する必要があります。

年金受給者が自己破産後年金を受け取れる?

年金受給者も基本的に自己破産できますが、年金受給者が自己破産をすると、手続き後も以前と同じように年金を受給することはできるのでしょうか?

年金受給者は、生活費を年金に頼っていることが普通なので、自己破産したことによって年金が受け取れなくなると、生活が成り立たなくなって大変なことになってしまいます。

自己破産をすると、年金を受給する資格がなくなることはあるのでしょうか?また、自己破産をすると破産者の財産がすべて失われると言われているので、これによって年金が受け取れなくなるのかなども心配です。

しかし、そのような心配は要りません。自己破産をしても年金を受給することは可能です。

まず、自己破産をしたからといって、年金を受給する資格がなくなることはありません。自己破産によって一部の職業に就けなくなるなどの資格制限はありますが、ここに年金を受給する資格は含まれません。よって、自己破産手続き後だけでなく、自己破産手続き中であっても年金は問題なく受け取れます。

次に、自己破産によって財産が無くなるので、これによって年金もとられてしまうのではないかという問題があります。

確かに、自己破産をすると、破産者名義の目立った財産はすべて失われます。たとえば破産者が20万円を超える預貯金や生命保険、不動産や有価証券などの財産を持っていると、これらはすべて現金に換価されて、債権者に配当されてしまいます。

よって、自己破産をする場合、それまで受け取った年金を積み立てて預貯金などにして持っていた場合には、それらの年金を原資にした預貯金はいったん失われることになります。

しかし、自己破産で失われる財産は、破産手続き開始決定時に存在した財産だけです。その後に受け取った給料や年金などの財産は、すべて破産者の自由財産として破産者が自由に使うことができます。

よって、自己破産手続き中や破産手続き後も年金は受け取ることができますし、これらの年金を債権者に配当しなければならなくなることもありません。自己破産後年金を受給して生活していくことには問題がないので、そのことを心配する必要はまったくないのです。

よって、年金受給者が借金返済に苦しんでいる場合には、将来の年金受給権のことを心配することなく、自己破産を利用して借金問題を解決しましょう。

年金保険料を滞納していると、年金を受け取れない?

年金と自己破産の関係としては、年金受給者の自己破産以外にも問題になるケースがあります。それは、年金保険料を滞納している場合の問題です。

まだ年金を受給していない若年の人でも、自己破産するような人は、国民年金保険料を滞納していることが多いです。年金保険料を滞納していると、将来年金を受給することができなくなるのでしょうか?

年金を受給するためには、受給資格を得る必要があります。そのためには、25年以上年金保険料を支払い続ける必要があります。

この年金を受給するために最低限必要な年金保険料納付期間については、現在の25年間から10年間に短縮する予定がありますが、どちらにしても最低限の支払期間は年金を払い続けないと年金を受け取ることができないのです。

よって、年金保険料を滞納している場合、将来年金を受給できなくなってしまう可能性が高いです。老齢になったときに年金を受け取れないと生活ができなくなってしまうおそれが高いので、年金保険料を滞納している場合には、早期に対処する必要があります。

年金保険料は免責されない?

年金保険料を滞納していると将来年金が受け取れなくなる可能性がありますが、自己破産をすると年金保険料の滞納分も免責されて、支払の必要がなくなるのでしょうか?もしそうだとしたら、年金保険料を滞納していても、自己破産前の年金保険料の支払いは不要になるとも思えるので、問題になります。

そもそも、年金保険料を滞納したまま放置すると、どうなるのでしょうか?

この場合、将来年金が受け取れなくなる以外にも問題が発生します。年金保険料を支払っていないと、社会保険事務所から未払いの年金保険料について、一括払いの督促状が届きます。これを放置していると、滞納処分として財産などを差し押さえられてしまうおそれもあります。

よって、年金保険料を滞納している場合には、将来の年金受給の問題以前に現在の生活を維持するためにも、滞納問題を解決する必要があるのです。

では、滞納している年金保険料を自己破産手続きによって免責してもらうことはできるのでしょうか?

自己破産をすると、すべての債務の支払が免除されるようなイメージがあります。実際、だいたいの債務は免責決定によって支払い義務がなくなります。しかし、自己破産には非免責債権があります。非免責債権とは、自己破産によって免責決定があっても返済義務が残る借金のことです。

年金保険料などの公的な支払についても、非免責債権の1つとされています。よって、年金保険料の滞納がある場合には、自己破産をしても免責されません。

滞納している年金保険料は自己破産手続き後も支払う必要がありますし、もし支払をしない場合には、自己破産後でも滞納処分を受けて財産などが差し押さえられてしまうおそれがあります。

また、年金保険料を支払わずに放置していると、将来年金を受給できる年齢になったときに年金を受け取ることができなくなる恐れが高いです。

よって、年金保険料を滞納している状態で自己破産をしても、滞納分は必ず支払う必要があります。

(参考:自己破産をしてもなくならない借金の種類

年金保険料を滞納している場合の対処方法

年金保険料を滞納している場合には、具体的にどのように対処すればよいのでしょうか?滞納している年金保険料の金額が少額なら良いですが、何ヶ月分、何年分にもなっている場合には多額の支払いが必要になります。

また、年金保険料の支払をしていない場合、社会保険事務所からは一括払いの請求書が届くのが普通です。このような多額の支払いを一括ですることは困難なケースが多いですが、滞納している年金保険料は一括払いをしなければならないのでしょうか?

実際には、必ずしも一括払いする必要はありません。この場合、社会保険事務所に対して現在の状況について説明をして、一括払いができないことをわかってもらうことができれば、滞納している年金保険料の分割払いに応じてもらうことができます。

そのためには、まずは社会保険事務所に連絡を入れて、支払をする意思があることを示しましょう。その上で、収入が少ないことなどを説明して、月々いくらずつなら支払えるのかなどを提案します。

このように、こちらがきちんと支払う意思を示して話し合いを持ちかける態度をとれば、社会保険事務所も現実的な内容で分割払いに応じてくれます。そして、決まったとおりに分割払いを続けている限り、いきなり滞納処分によって財産の差押などをされることもありません。

また、分割払いによってでも、きちんと必要な年数分の年金保険料を納付すれば、将来年金を受け取る年齢になったときに年金受給者となることができます。

年金保険料を滞納している場合には、くれぐれも放置することなくきちんと担当の社会保険事務所と相談をして、確実に滞納分の支払をしましょう。

まとめ

今回は、年金受給者の自己破産について解説しました。年金受給者でも問題なく自己破産を利用出来ますし、自己破産をしても年金を受給できる権利はなくなりません。受け取った年金がとられることもないので、手続き後には年金を受給して生活ができます。

年金受給者でも自己破産をして借金をなくすことに躊躇する必要はありません。

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