自己破産する場合の「NHK受信料滞納金」の取り扱い

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

自己破産すると借金返済義務がなくなるので、借金に追われて返済が苦しくなっている場合には、効果的な解決方法になります。

しかし、税金や健康保険料などの公的な支払いを滞納している場合には、自己破産をしても支払を免れることができません。同じように、公共料金を滞納すると、自己破産しても支払い義務がなくならないのでしょうか?

さらに、借金返済出来ない場合にはNHK受信料も滞納していることが多いですが、NHK受信料は自己破産によって免責されるのでしょうか?そもそもNHK受信料が公共料金なのかどうかについても知っておきたいところです。

そこで今回は、自己破産する場合のNHK受信料滞納金の取り扱いについて、解説します。

自己破産してもなくならない「非免責債権」

自己破産する場合に、NHK受信料を滞納していると、その取り扱いはどうなるのでしょうか?近年、NHK受信料を滞納する人が増えており、滞納状況が酷くなると、NHKから訴訟(裁判)を起こされて強制的にNHK受信料を徴収されることなども増えているので、心配になることがあります。

一般的に、自己破産をすると、すべての借金返済義務がなくなると思われています。確かに、この理解は基本的には間違っていません。

また、自己破産が対象とするのは、借り入れたお金の返済義務である借金返済義務だけではありません。商品やサービスを購入した場合の売買代金の支払い義務も対象になりますし、家賃の支払いを滞納していたら、その支払い義務も自己破産の対象になります。

このように、自己破産をすることによって債務の返済義務がなくなるのは、裁判所の「免責」という決定によります。免責とは、債務の支払い義務を免除するという手続きです。

自己破産すると、最終的に裁判所が免責を認めてくれるので、借金を含めたほとんどすべての債務の返済義務がなくなるのです。

しかし、自己破産をしてもなくならない債務があります。このように自己破産しても免責されない債務のことを、「非免責債権」と言います。

非免責債権については、自己破産をして裁判所が免責決定をしてくれても免責されないので、自己破産手続き中や手続き後に支払をしなければなりません。支払をしないと、債権者から財産の取り立てを受けたり、裁判を起こされてしまうおそれもあります。

税金や健康保険料、年金保険料や罰金は免責されない

自己破産をして免責決定があっても、非免責債権は免責されません。では、非免責債権にはどのようなものがあるのでしょうか?

非免責債権の代表的なものが、租税等の債権です(破産法253条1項1号)。

租税等の債権とは、税金や国民健康保険料、国民年金保険料などのことです。これらは、税金徴収の手続きと同様の方法によって回収される可能性がある債務です。

また、交通違反や刑事事件を起こして、罰金を科された場合、その罰金等の債権も非免責債権です。

よって、税金を滞納していたり、国民健康保険料、国民年金保険料、罰金などの支払いをしていない場合には、自己破産をしても免責されません。これらの支払をしないと、財産を差し押さえられるなどして徴収されてしまうおそれもあります。

電気代などの公共料金は免責される?

NHK受信料は非免責債権として自己破産しても免責されないのでしょうか?

一般的に、NHK受信料は、電気代や水道代、ガス代などと同じ公共料金の1種と考えられていることが多いです。では、電気代などの公共料金は自己破産によって免責されるのでしょうか?以下で具体的に見てみましょう。

下水道料金は免責されない

自己破産には非免責債権があり、その代表的なものは税金などの公的な支払です。このことからすると、水道光熱費などについては、これらの公的な支払に近い性質を持つので、租税等の債権に該当して、非免責債権になるようにも思えます。

しかし、実際には電気代などの公共料金は、その大部分は非免責債権ではありません。電気代などの公共料金は、「租税等の債権」には入らないからです。非免責債権となる「租税等の債権」とは、税金滞納処分によって徴収される可能性のある債権です。

ところが、電気代やガス代を滞納しても、税金滞納処分と同じような手続きによって、国や地方公共団体から滞納分を徴収されることはありません。

電気会社やガス会社から、個別に請求を受けるだけのことです。よって、電気代やガス代は、租税等の債権には該当せず、非免責債権にはならないのです。ただし、公共料金のうちでも、下水道代だけは取り扱いが異なります。

下水道代は、地方自治法6条附則によって、税金滞納処分と同様の方法により、徴収される可能性があると定められています。よって、下水道代だけは「租税等の債権」に該当して、非免責債権となります。

これに対して、上水道代金は租税等の債権には該当しないので、他の公共料金と同様免責の対象になります。

以上より、公共料金のうちでも下水道代金だけは税金などの支払いと同様、非免責債権となって、自己破産しても支払い義務が残ります。これに対して、電気代やガス代、上水道代金については、非免責債権とはならないので、自己破産をすると、基本的に免責されます。

その他の公共料金は、大部分が免責される

電気代やガス代、上水道代金については、基本的には免責の対象になりますが、一部支払い義務が残る部分があります。それは、破産申立日以降、破産手続き開始決定までの支払分です。

これらについては、自己破産してもその手続きによらずに支払をしなければならない「財団債権」という種類の債権になるので、自己破産しても支払い義務がなくならないのです。

財団債権とは、自己破産手続きによらずに随時支払をしなければならない債権のことです。破産申立日から破産手続き開始決定までの分をのぞく自己破産申立前の滞納分については、電気代やガス代、上水道代金は、全額免責の対象になるので支払い義務がなくなります。

手続き開始後の公共料金は支払う必要がある

公共料金の中でも下水道代は非免責債権となるので、免責の対象になりません。よって、手続き前の分も手続き後の分も、支払い義務があることは当然です。

では、その下水道代以外の電気代やガス代など、他の公共料金については、自己破産手続き開始決定後の支払はどうなるのでしょうか?

この点、自己破産で免責の対象になるのは、破産手続き開始決定前に発生した債務のみです。よって、破産手続き開始決定後の利用分についての公共料金は、当然支払う必要があります。

自己破産前の免責されるべき料金の支払をしないからといって、電気やガスなどの供給が止められることはありませんが、自己破産手続き開始決定後の支払い義務がある分の支払をしない場合には、電気やガスを止められてしまいます。

よって、自己破産した場合にも、破産手続き開始決定以後に発生する公共料金については、公共料金の種類を問わず、支払う必要があります。

NHK受信料は免責される?

公共料金の中でも、非免責債権に該当するのは下水道料金のみです。その他の公共料金については、破産申立日以後手続き開始決定までに発生した利用分以外は免責の対象になります。

それでは、NHK受信料の取り扱いはどうなるのでしょうか?この問題は、そもそもNHK受信料が公共料金かという問題とも関係します。そこで、以下ではNHK受信料が公共料金かという問題について考えてみましょう。

そもそもNHK受信料は公共料金か?

NHK受信料は公共料金なのかという問題を考えるとき、公共料金とは具体的にはどのような料金のことを言うのかを理解する必要があります。

公共料金とは、国や地方公共団体などの行政が、その料金決定にかかわっている種類の料金であると考えられています。

そして、NHK受信料は、放送法70条4項により、国がその決定にかかわるとされています。このことからすると、NHK受信料は公共料金だとも思えます。ただ、公共料金の考え方として、その支払いに対して何らかの対価があるものだという考え方があります。

たとえば、電気代の場合には、電気代を支払う代わりに電気の供給を受けられます。ガス代や水道代も同様です。

NHK受信料については、NHKの受信はNHK受信料の支払いと対価関係にあるわけではないという裁判例が出ています(平成22年6月29日東京高裁判決)。放送法64条も、そのような理解をされています。よって、NHK受信料は対価性を持たないため、公共料金には入らないということになります。

このように、公共料金という範囲があいまいであるため、NHK受信料は公共料金に近い性質を持つことは事実ですが、確実に公共料金の1種であるとまでは言いにくい状況にあると言えます。

手続き開始決定前のNHK受信料は免責される

NHK受信料は電気代などの公共料金と近い性質を持ちます。そうだとすると、電気代などの公共料金と同様、自己破産によってその大部分が免責されるという扱いになるのでしょうか?それとも、下水道代などと同じように、非免責債権となって免責されないのでしょうか?

NHK受信料は租税等の請求権ではない

NHK受信料は「租税等の請求権」とは異なります。

先にも説明した通り、租税等の請求権とは、税金滞納処分と同様の方法で徴収できるタイプの請求権ですが、NHK受信料は、国税滞納処分のような方法で、国や地方公共団体から強制徴収されることはあり得ないからです。NHK受信料を滞納しても、せいぜいNHKから裁判をされて取り立てを受けるだけです。

NHK契約は双務契約ではない

NHK受信料は、下水道代以外の公共料金と同様、破産申立日以後、破産手続き開始決定までの分だけが財団債権となって、支払い義務が残るのでしょうか?

実はそのようなこともありません。破産申立日以後、破産手続き開始決定までの電気代やガス代などが財団債権となるのは、これらの支払が、「双務契約」だからです。双務契約とは、一方の債務が相手方の債務と対価性を持つ場合の契約です。

電気代やガス代、上水道料金については、その支払いをするのと引き替えに電気会社やガス会社、市町村などが電気やガス、水道などを供給してくれます。

ところが、NHK受信料はその支払いによってNHKを受信できるという性質のものではないのです。

テレビを設置していることによって、NHKと契約する必要があり、その契約によって義務が発生するのがNHK受信料なので、これとNHKの放送受信は対価性を持たないという考え方になるのです。

実際に、NHK受信料の支払いを滞納したからといって、NHKの受信を止められることはありません。このことからしても、NHK受信料の支払いとNHKの放送受信が対価関係にないことがわかります。

よって、NHKとの受信料の契約は双務契約ではありませんので、破産申立日以後、破産手続き開始決定までの料金も、財団債権にはなりません。結局、すべてが通常の破産債権となって、免責の対象になります。

NHK受信料は免責の対象になる

NHK受信料については、破産手続き開始決定前に発生した分については、すべてが破産免責の対象になります。

以上より、自己破産した場合には、破産手続き開始決定前までに滞納した分については、NHK受信料は全額免責の対象となり、支払義務がなくなります。

自己破産で免責を受けた場合、破産手続き開始決定前のNHK受信料の滞納があっても、NHKからその支払いの督促を受けることはありませんし、NHKから裁判などをされて、滞納料金の取り立てを受けることもありません。

手続き開始後のNHK受信料は支払う必要がある

破産手続き開始決定以後のNHK受信料支払についての取り扱いはどうなるのでしょうか?

自己破産によって免責されるのは、破産手続き開始決定前に発生した債権のみです。よって、破産手続き開始決定後のNHK受信料は、当然支払う義務があります。

もしその支払いをしないと、やはりNHKから裁判を起こされて判決が出て、NHKから財産などを差し押さえられる可能性もあります。ただし、NHK受信料の支払い義務があるのは、テレビを設置している場合のみです。

よって、自己破産を機にテレビを家に置かなくなった場合などには、破産手続き開始決定以後のNHK受信料を支払う義務は無くなります。

この場合には、きちんとNHKとの受信契約を打ち切る手続きを行う必要があります。

まとめ

今回は、NHK受信料の滞納分が自己破産免責によってどのように取り扱われるのかについて、解説しました。

自己破産には非免責債権という債権があります。税金や健康保険料、年金保険料や下水道代は非免責債権になるので、自己破産しても免責されません。これに対して、電気代やガス代、上水道代などはほとんどが免責の対象になります。

NHK受信料についても、非免責債権でも財団債権でもないので免責されて、支払い義務はなくなります。ただし、破産手続き開始決定後の支払は必要なので、テレビを自宅に設置している場合には、きちんと支払をしましょう。

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