自己破産と「セールアンドリースバック」「買い戻し」

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金返済の最終手段である「自己破産」では、破産した時点で、一定以上の本人名義の財産は返済に充てるために差押えられます。自宅も差押の対象になり、自己破産すると売却されて人手に渡ることになります。

従来ならば、「家を失う」ということは、実生活上の不便ばかりでなく、破産する人の近隣社会での世間体、名誉を傷つける破壊力があります。本人ばかりでなく妻子も同じ状況に置かれることになり、引っ越しによって、妻はパートを辞めざるを得なくなり、子どもたちも転向せざるを得なくなる場合があります。

しかし、自己破産して、家を売却しても引っ越さなくて済む方法があります。「セールアンドリースバック」と「買い戻し」呼ばれる方法についてまとめます。

自己破産すると持ち家はどうなる?

自己破産とは?

自己破産とは、破産宣告を自分自身で行う方法をさします。破産は債権者が行うもの(債権者破産)と債務者である自分自身が行うものがあり、自己破産とは後者の別名です。

従来は「破産」と言われると、債権者が債務者から取り立てを行う手段の一つとして利用されるのが一般的でした。ところが消費者金融が急速に発達し、いわゆる「サラ金問題」と言われた多重債務と過酷な取り立てが社会問題化するのと並行して、自己破産が徐々に増加するようになりました。

バブル崩壊以降の1980年代後期からは、多重債務の解決方法の一つとして、個人再生特定調停と並んで「債務整理の最後の手段」と認識されるように変化しています。

住宅ローンで破産すると免責は利用できない

多重債務者の自己破産において、しばしば誤解されているのが「免責」と言う制度です。

免責とは、自己破産において、その時点における債務の全てを免除してもらう制度です。免責決定になると、債務の返済義務が無くなります。免責が認められるケースには、一定の条件があり、また、免責されることによってデメリットもあります。

インターネット上の記事では、時々「多重債務に陥った人が自己破産をすると、借金はすべて帳消しになる」と思わせるような文章を見かけます。

これは免責のことを指しているものと思われますが、「誰でも、どんな場合でも認められる」という訳ではありません。「自己破産して、借金だけはチャラ、自分の財産は維持しておく」と言うことは、原則的にはできません。

また、自己破産では「住宅ローンだけは払うから、家も維持したい。」ということもできません。自己破産の場合は、その時点でのすべての借金(債務)が対象になります。「払いのキツイ借金だけ破産したい」といったことはできません。

破産は厳密にいうと、処分すべき財産がなく、そのまま免責へと移行する「同時廃止事件」と、次に述べる、処分すべき財産のある事件の2つがあり、不動産を持っている場合は、同時廃止事件にはなりません。

同時廃止事件となり、自動的に免責が認められる人は、債務の返済に充てられるような財産がない人です。

一定以上の財産がある人は同時廃止ではなく管財事件という方法で事件処理されますし、借金以上の評価額の財産がある人は、そもそも破産する必要がありません。

自己破産後の財産処理

破産後、処分が必要な財産がある場合は「管財事件」として、破産管財人が指名されて、債務者名義の財産を管理することになります。

一定範囲を超えた財産は破産管財人が換価(現金に換えること)して、債権者に配当してしまいます。

具体的には、査定額20万円以上の自家用車、預貯金や生命保険などが換価の対象になります。99万円を超える預貯金も債権者に配当されてしまいます。

ただし、換価と配当の対象になるのは債務者本人名義のものに限られます。不動産は登記簿上、土地と建物は別々に登記されています。

どちらか一方が債務者以外の所有権者の場合や、配偶者や親などとの共有になっている場合は、債務者本人が所有権者になっている共有持分だけが換価の対象になります。

自己破産後に家の名義を変えることはNG

自己破産で差押・売却対象になるのは本人名義の財産だけ。それならば、家を失くさないために名義を家族の誰かに変更してしまえばいいじゃないか!と、自己破産の申請後に住宅の名義変更をしてしまうと、大変なことになります。

自己破産では、財産隠しが認められていません。財産隠しをすると、免責不許可事由に該当するため、一番重要な免責が認められなくなってしまいます。

また、財産隠しのために不動産を売却した場合、破産管財人が否認するのでその効果が失われてしまい、購入者にも迷惑をかけてしまいます。

家の資産価値よりもローン残高が多いとき

住宅ローンを払い始めたばかりで自己破産する状況になった場合は、家の資産価値よりもローン残高の方が多くなるケースがあります。最近はオーバーローンといって、担保不動産の資産価値を債務額がオーバーしてしまっているケースが増える傾向が指摘されています。

このような場合は、「資産価値なし」と見なされて、破産事件そのものは同時廃止事件になる場合があります。目安として、担保物件の固定資産評価額に対してローン残高が5倍を超える場合は「資産価値なし」の判断がなされやすいです。

オーバーローンのケースでも、やはり家はなくなります。この場合、ローン債権者が家を競売にかけて売却して、売却金から残ローンを回収します。

それが嫌なら、任意売却によって家を市場で売却する方法があります。任意売却の場合、競売よりも多額で家が売れることが多いですが、どちらにしても家はなくなります。

持ち家を手放しても引っ越さなくて済む方法

「セールアンドリースバック」を利用する

自己破産によって自宅が失われる場合、基本的には破産者は自分で引っ越すか、強制退去によって、力ずくで追い出されるしかありません。

不動産業者や銀行などの配慮によって、売却の条件に引っ越し代の負担や、引っ越し先を借りるための費用の一部負担が盛り込まれることはあっても、基本的には「家が売れたら出ていく」という点は変わりません。

これに対して、最近の任意売却で徐々に増加している、画期的な方式が「セールアンドリースバック」と言われる方法です。

セールアンドリースバック(Sale and lease back)とは、日本語で言うと「(持ち家を)売却して借り戻す」という意味です。

つまり、「自宅を一度売却(所有権移転)してから、新しい所有者から賃貸住宅として借り受ける」方式のことを指します。この方法では、次のようなメリット、デメリットがあります。

債務者にとってのメリット

  1. 引っ越しが要らない。このため、引っ越しにかかる費用と、転出先を探す時間的負担が削減される。
  2. 転居がないことで、生活拠点が変わることによる転職、転勤、転校等の異動に伴う負担がない
  3. 近隣住民、子どもの学校関係者などに自宅の売却を知られないで済む
  4. 破産と組み合わせて利用することで、月々の支出額を大幅に削減し、生活の立て直しが図れる
  5. 将来的に「買い戻し」の特約(セールバック)を付けることが可能

債務者にとってのデメリット

  1. 買受人が見つからない場合は成立しない
  2. 買受人との交渉が決裂して、協力が得られなければ成立しない
  3. 任意売却では交渉成立の可能性があるが、強制競売では成立しづらい
  4. 債務者(元・所有者)の意識改革が難しい場合、借金に関しては逆効果になる場合がある
  5. 確実に賃料を支払わなければ買戻しはできないし、即、退去を求められる
  6. 期間中は自由に引っ越しできない

債権者にとってのメリット

  1. 強制競売で担保物件を売却するよりも高値で処分できることで、債権の回収効率が良くなる
  2. 担保物件を明け渡させるための手間暇、費用がなくなる
  3. 親子間売買(後述)を利用すると、実質的にローンを払ってもらい続けることが可能

債権者にとってのデメリット

  1. 抵当権、担保を外す協力が必要
  2. 時に、買受人説得などの協力を求められる場合がある

買受人にとってのメリット

  1. 購入した物件の転売先や賃借人を探す手間が省ける
  2. 債務者の移転に関わる余分な費用負担(引っ越し代金、移転先の敷金の支援など)が発生しない
  3. 賃貸によって、確実に資産が運用できる
  4. 自分で賃借人を探す手間が省け、資産として運用するまでにタイムラグが生じない

買受人にとってのデメリット

  1. 自己用住宅としての購入はできない
  2. 固定資産税の負担が必要
  3. 賃料を滞納されるリスク
  4. 賃貸期間中の住宅の損壊による負担が生じるリスク

セールアンドリースバックを成功させる条件

セールアンドリースバックを成功させるためには、自宅を売却するときにいくつかの条件をクリアしている必要があります。

  1. 金融機関がリースバックについて了承し、協力してくれること
  2. 買受人を債務者本人(または、金融機関)が見つけてくること
  3. 買受人と債務者が賃貸に関する信頼関係を構築できること

特に③が重要で、最も難しい条件になります。

セールアンドリースバックの場合は、「この家を買い取った後、元・持ち主である私(債務者)に賃貸してくれないなら、あなたには売らない。」と、通常の売買から見ると、非常識な要求を買受希望者に求めることになります。

仮に、対象の物件を購入できる資力がある人物であっても、自己用に使いたい人や、転売目的で物件を探している人では、賃貸の交渉はできません。

債務超過によって破産することになった、元・ハウスオーナーに、購入した物件をそのまま貸す、ということは簡単には了承してもらえないのは想像がつきやすいでしょう。

更に、破産の手続きが進行している最中は、時間的な制約もあります。強制競売を回避して任意売却を成功させるには、少しでも早く買受希望者を見つける必要があります。

これらの点から、セールアンドリースバックを行うときには、以下のうちどちらかの方法を利用することが多いです。

  1. 親族間売買
  2. リース&セールバックを得意とする、専門の不動産業者に依頼する

親族間売買では、成人した別居の子どもに名義上売却して、子供名義で住宅ローンを組み直し、賃料をローンの支払いに充てることで、実質的なローンの支払いを親である債務者が負担する形態もよく見られます。

親族間売買における「買い戻し特約」

セールアンドリースバックでは、買受人としてしばしば「身内」が第一候補にあがります。債務者のご両親や、成人している実子が物件を買い取り、所有権移転を行って後、相場の家賃で賃貸契約を締結する形です。

身内の中だけでお金が動くなら、賃料の支払いは不要では?と思われる方も多いようです。

ところが、親族と言っても無料で貸していると、賃料相当額を贈与したとみなされて、元の持ち主で現在の賃借人に贈与税が請求される恐れがあります。支払をすることで、贈与税回避の効果もあるわけです。

また、親族間売買によるセールアンドリースバックを行うときには、賃貸契約に「買い戻し特約」をつけることも行いやすいメリットがあります。

買い戻し特約とは、破産者(売主)が買い主に家を売却するときに、将来買い戻す内容の特約をすることです。

この場合、破産者が買い主に毎月支払うお金を物件購入の費用に充てて、取り決めておいた分の支払いを終えたら、その時点で家の所有権を元々の所有者であった破産者に戻します。俗に「セールバック」とも呼ばれています。

セールバックでは、賃貸契約を締結する際に、買い戻し特約を付けておき、登記簿上にも買い戻し特約に基づく条件付所有権移転仮登記を付けます。このことにより、もともとの売主(将来の買い主)の立場が保全されます。

所有権移転仮登記は、現在の持ち主から所有権を優先的に移譲してもらうことのできる権利であり、現在の所有者が第三者に物件を転売しようとしても、所有権移転仮登記がなされている場合、仮登記者の同意がなく転売を行うことができなくなります。

たとえば、親(破産者)が成人した息子(買い受け人)に所有権を移転して、息子の名前で住宅ローンを組んでもらい、家賃を払って住まう場合などは、息子が勝手に家を第三者に売却することができなくなります。

仮登記を行うには、司法書士事務所や行政書士事務所に依頼します。仮登記申請にかかる登録免許税は、物件の評価額の1000分の10以内(物件の条件により変動あり)で、本登記よりも少額で済みます。(参照:登録免許税額表

以上のように、自己破産をすると基本的に家がなくなってしまいますが、セルアンドリースバック(セルバック)を利用すると、家を守ることができる可能性があります。

今後自己破産をするときには、参考にしてみて下さい。

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