自己破産手続き中に就けない職業「資格制限」とその理由

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

自己破産をすると、さまざまな制限が課されるイメージがありますが、その中の1つに「資格制限」があります。

資格制限とは、自己破産手続き中に一定の資格が制限されることですが、自己破産をすると、具体的にはどのような資格が制限されるのでしょうか?

その具体的な内容を知っておかないと、自分の職業や資格に関係があるかどうかがわからないので、自己破産によって不利益を受ける可能性があります。

また、自己破産によって制限される資格の内容はかなり多岐に及びますが、それぞれどのような理由で制限されるのかも知っておきたいところです。

また、自己破産によって資格制限を受ける期間はどのくらいなのでしょうか?

今回は、自己破産手続き中に就けない職業や資格である「資格制限」と制限の理由について解説します。

自己破産によって受ける資格制限【一覧表】

自己破産をすると、借金返済義務が完全に0になるので、借金問題を根本的に解決することができます。しかし、自己破産にはこのような強力な効果が認められる反面、さまざまな制限があります。自己破産による主な制限の1つが資格制限です。

資格制限とは、自己破産手続き中に一定の資格に関して課される制限のことです。一般的に、資格制限というと、一定の「職業」に就けない制限だと思われていますが、資格制限で制限を受ける資格は、職業には限りません。成年後見人や遺言執行者、各種の委員会の委員なども資格制限によって制限を受ける資格の1つです。

自己破産によって制限を受ける職業や資格は極めて多岐に及びます。すべてを覚えている必要はありませんが、主要なものについては、だいたい次の一覧表のとおりになります。

資格制限される職種一覧
アルコール普通売捌人
位階令第6条(有位者)
宇宙開発委員会委員
卸売業者
沖縄振興開発金融公庫の役員
科学技術会議議員
割賦購入あっせん業者
環境衛生金融公庫の役員
貸金業者
外国証券業者
簡易郵便局長
行政書士
漁船保険組合の組合員
金融先物取引所会員(法人)
原子力委員会委員及び原子力安全委員
地方競馬全国協会の役員
競馬の調教師又は騎手
検察審査員
警備業者
警備員
警備員指導教育責任者等
警備員等の受検
建築審査会の委員
建築士事務所開設者
建築設備資格者
一般建設業、特定建設業
建設工事紛争審査会の委員
下水道処理施設維持管理業者
公害等調整委員会委員長及び委員
公安審査委員会員長及び委員
国家公務員法第5条、第8条(人事官)
公証人
公認会計士、公認会計士補
共同鉱業権者
国民金融公庫役員
公営企業金融公庫役員
国際観光レストラン
港湾労働者雇用安定センター
都道府県公害審査会の委員
司法修習生
司法書士
信託法第5条(受託者)
質屋
塩販売人
公正取引委員会の委員長及び委員
商工会議所会員
商品取引所会員
商品取引所役員
商品投資販売業
商品投資顧問業
住宅金融公庫の役員
信用金庫等の役員
商工会の役員
社会保険審査会委員
社会保険労務士
証券業
証券取引外務員
証券金融会社の役員
信託会社
税理士
船主相互保険組合
測量業者
宅地建物取引業
宅地建物取引主任者
製造たばこの特定販売業の登録
製造たばこの特定販売業者
土地鑑定委員
地質調査業者
教育委員会委員
著作権に関する仲介業務の仲介人
中小企業指導事業の実施に関する基準を定める省令第4条(診断を担当する者)
漁業信用基金協会会員
中小企業金融公庫の役員
中小企業信用保険公庫の役員
通関業
通関士
鉄道事業、索道事業
抵当証券業者
土地家屋調査士
土地収用委員及び予備委員
日本中央競馬会の役員
外国法事務弁護士
日本銀行政策委員会任命委員
日本輸出入銀行の役員
日本開発銀行の役員
農水産業協同組合貯金保険機構運営委員会委員
農林漁業金融公庫の役員
陪審員
一般廃棄物処理業者
産業廃棄物処理業者
特別管理産業廃棄物処理業者
風俗営業を営もうとする者
風俗営業の営業所管理者
風俗環境浄化の調査員
不動産鑑定士、不動産鑑定士補
不動産鑑定業者
不動産特定共同事業を営もうとする者
弁護士
弁理士
補償コンサルタント
北海道東北開発公庫の役員
株式会社たる保険業の取締役
相互会社たる保険業の取締役、監査役
生命保険募集人及び損害保険代理店
第三者発行型前払式証票の発行者
遺言執行者
後見人
後見監督人
保佐人
補助人
ユネスコ活動の国際委員会委員
投資顧問業
預金保険機構運営委員会委員
旅行業者
旅行業務取扱主任者
一般労働者保険事業者
労働保険審査会の委員

このように、自己破産による資格制限はたくさんあるので、上記の表については、全部覚えようとするのではなく、自分と関連がある資格が制限を受けるかどうかをチェックするために利用すると良いでしょう。

士業

自己破産によって制限を受ける資格はたくさんありますが、これらはどのような理由で制限を受けるのでしょうか?

まず、自己破産の資格制限を受ける代表的な職業や資格として、いわゆる「士業」があります。士業とは、弁護士や弁理士、司法書士や行政書士、公認会計士や不動産鑑定士などの「~士」と名のつく資格のことです。

これらは、自己破産の資格制限を受けるので、自己破産手続き中にはこれらの士業の資格をとったり、これらの仕事をすることができません。また、弁護士などになるための司法修習生などになることもできません。

これらの士業に関しては、お金を取り扱うことも多く、社会的な信用も比較的高いために自己破産による資格制限を受けるものと考えられます。

お金を扱う職業

自己破産によって資格制限を受ける職業や地位として、「お金を取り扱う職業」があります。

以下で、例を挙げてみてみましょう。

公庫

お金を取り扱う職業や地位の代表的なものとして、政府系の金融機関である公庫の役員になることが制限されます。たとえば日本政策金融公庫(国民生活公庫)や中小企業信用保険公庫、農林漁業金融公庫などの役員になることはできません。

公庫は人にお金を貸し付けたり預かったりして人のお金を管理する政府系の金融機関です。よって、信用が大切になるので、自己破産をすると資格制限をされると考えられます。

信用金庫

お金を取り扱う仕事としては、信用金庫の役員も挙げられます。信用金庫も人のお金を管理したり貸し付けたりする非営利の機関であり、お金に関する信用が重要になります。そこで、自己破産によって信用を失った人が役員になることは認められません。

銀行や貸金業者、証券会社

お金を扱う仕事としては、銀行や貸金業者、証券会社などもあります。自己破産したからといって銀行に勤務できなくなることはありませんが、たとえば日本輸出入銀行の役員になったり日本開発銀行の役員になることはできなくなります。

また、貸金業を営むこともできませんし、証券業を営むことも認められません。証券業の場合には、証券取引外務員の仕事をすることもできなくなるので影響が大きいです。同じように、投資顧問業や質屋などの仕事も資格制限を受けます。

保険会社

自己破産によって資格制限を受ける仕事としては、保険会社関係もあります。保険の仕事は、お金を取り扱うことが多いですし、信用が大切な仕事です。そこで、自己破産をして社会的な信用を失った状態では、保険の営業をしたり保険勧誘の仕事をすることが認められません。

具体的には、生命保険会社や損害保険会社の仕事が制限を受けます。保険会社の形態が株式会社であっても相互会社であっても資格制限を受けるので、営業することができません。

また、保険関係の仕事の場合には、生命保険の外交員や、損害保険の代理店などになることもできなくなるので、個人への影響も大きいです。

今後生命保険外交員をしようと考えている場合などには、資格制限によって一時的にその仕事ができなくなる可能性もあるので注意が必要です。

不動産関係

自己破産によって制限を受ける資格としては、不動産関係の仕事があります。不動産関係の仕事も、やはり信用が要求されるので、自己破産をして信用がなくなると資格制限を受けると考えられます。

不動産関係の資格としては、宅地建物取引業や宅地建物取引主任者、不動産鑑定業者、建設業、土地家屋調査士などが資格制限を受けます。

これらの仕事も人気が高い職種なので、自己破産しようとしている場合にこれらの資格をとりたいと考えている場合には、一時的に資格を取れなくなってしまいますし、仕事もできなくなってしまうので注意が必要です。

警備関係、旅行業者や産業廃棄物業者など

資格制限を受ける職種として、警備員、旅行会社なども挙げられます。これらについては、特に信用が重視される仕事でないものもありますが、自己破産によって制限を受けます。

警備関係については、警備会社だけではなく警備員になることまで制限されます。フリーターなどの場合には、警備会社に就職して警備員の仕事をしたいと考えるケースも多いですが、自己破産をすると資格制限によって警備員になれないので、充分注意が必要です。

旅行業者などについても、自己破産とは全く無関係のようにも思えるのに制限を受けてしまいます。産業廃棄物処理業者なども同様です。旅行業務取扱主任者や産業廃棄物処理関係などの仕事をしている場合には、一時的に仕事が制限される可能性があるので注意しましょう。

このように、一見自己破産や信用とは関係がなさそうな業種でも資格制限を受けるケースはかなりあります。

後見人関係

自己破産によって制限を受けるのは、職業だけではありません。民法上の資格も制限を受けるものがあります。まずは、後見人関係の資格が失われます。「後見人」とは、自分では財産管理ができなくなった人の代わりに財産管理をする職務です。

たとえば、認知症にかかった高齢者などの後見人が代表的です。後見人には、程度の重いものから順に、後見人、保佐人、補助人がありますが、自己破産するとこれらのすべての資格が制限されます。後見人を監督するための「後見監督人に就任することもできなくなります。

後見人は、被後見人(後見を受ける人)の財産を管理する重大な任務です。実際に被後見人のお金を横領して事件になっているケースなどもあります。このように、後見人には高度な信用が要求されますので、自己破産をして信用を失っている状態では後見人の仕事をすることが認められないのです。

遺言執行者

自己破産によって受ける民法上の資格はもう1つあります。それは、「遺言執行者」です。遺言執行者とは、故人が残した遺言がある場合にその遺言の内容を実現する手続きを行う人のことです。

たとえば、預貯金を解約してそれぞれの遺産相続人に配ったり、遺言の内容に従って不動産の名義を書き換えたりします。

自己破産をすると、資格制限によりこの遺言執行者になることもできません。

遺言執行者は、遺言の内容を実現する仕事をしますが、遺言の内容を実現するには、公正な手続きが必要になります。遺言を執行する場面では、遺言者はすでに死亡していますが、遺言を残した本人がいない中でも各相続人の誰に肩入れすることもなく遺産を配当していく必要があるのです。

よって、遺言執行者には高度な信用が要求されます。相続人らはただでさえ他の相続人や遺言執行者に対して疑心暗鬼になりがちなので、その遺言執行者が自己破産をしているとなると、到底信用してもらうことは難しくなります。

そこで、自己破産をしていると、遺言執行者になることはできなくなります。

自己破産によって受ける資格制限の期間は?

自己破産によって資格制限を受ける職業や地位、資格はさまざまですが、いったん資格制限を受けたとしても、その制限は一生続くわけではありません。それでは、自己破産による資格制限の期間はいつからいつまでなのでしょうか?

自己破産の資格制限が開始するのは、「破産手続き開始決定後」です。また、自己破産手続きが終結した場合には、資格制限は解除されます。自己破産をして無事に免責がおりて借金が無くなったら、それまで受けていた資格制限も解除されるということです。

資格制限が解除されれば、どのような職業にも自由につくことができますし、後見人などになることもできるようになります。

自己破産による資格制限は、一般に考えられているよりもかなり短期間なので、必要以上に深刻に受け止める必要はありません。

資格制限を受けない職業

一般には制限を受けると思われがちだけれども、実は制限を受けない仕事があります。

たとえば医師や薬剤師、看護師などの医療系の仕事はまったく制限を受けません。これらの仕事は社会的に信用が高いですが、お金に関する信用とは別の種類の信用だからです。

教育委員会の委員は資格制限を受けますが、教員は制限を受けませんし、地方公務員や多くの国家公務員も制限を受けません。産業廃棄物処理業者や質屋は資格制限を受けますが、古物商は制限を受けません。建築士や宗教法人の役員なども制限を受けないので覚えておくと良いでしょう。

まとめ

今回は、自己破産によって受ける資格制限の一覧とその理由について解説しました。自己破産をするとさまざまな仕事や資格が制限されます。今回の記事を参考にして、資格制限による不利益を受けないように慎重に手続きを利用しましょう。

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