個人再生と「官報」

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

個人再生手続を行うと「官報に名前が掲載されること」は避けられません。

近年の個人情報保護法に関連する様々な規定の厳しさからか、公的な文書で名前を公表されることに、なんとなく不安を感じる人もあるようです。他方、「大した影響はない」と言う意見もあります。

個人再生と官報にはどのような関係があり、官報に名前が載ることにどのようなデメリットがあるのでしょうか?

官報ってどんなもの?官報の基礎知識

官報とは、国が発行している新聞のようなものです。「日本国政府の機関紙」「国の広報誌」と言っても良いでしょう。都道府県や市町村といった地方自治体も「広報」を作成しているのと同じように、国にも広報誌があるとイメージすると分かりやすいかもしれません。

官報に掲載されている記事

官報の発刊・発行は国立印刷所が担当しています。全部で32ページが基本で、掲載内容は、「法令の公布」「広報」「公告」に分けられており、国としての働きに必要な情報が掲載されています。

本誌に掲載しきれないものがあるときや、官公庁の休日に臨時で発行する必要がある場合は、「特別版」が刊行されます。

官報に掲載される記事の概要

法令の公布 広報 公告
憲法、条約、法律、政令、省令、詔書、告示等の改正・制定などの情報 ・国会関連情報、閣議決定事項など
・公務員人事の情報
・叙位・叙勲・褒賞
・皇室に関するもの
・国家試験の実施、結果に関するもの
・国際収支状況
・破産裁判の内容
・相続に関する裁判の内容
・会社の合併公告、決算公告

官報を入手する方法は?

官報は行政機関の休日を除く毎日発行されていて、都道府県庁所在地にある「官報発行所」で販売されています。一般の人でも、必要であれば各都道府県にある官報販売所で購入することができます。

官報1

出典:独立行政法人国立印刷局 国民と政府をつなぐ官報とは

1995年からはインターネットでの官報の無料公開が始まり、PDFで官報の内容を見ることができるようになりました。

官報2

出典:インターネット版官報のトップ画面

こちらでは、当日を含めた30日分の官報が公開され、誰でも自由にダウンロードやオンラインで読むことができるようになっています。

2016年より官報のインターネット公開の期限がなくなり、国立国会図書館の検索ページから、誰でも無料で自由に過去の官報の入手・利用ができるようになりました。

官報3

出典:国立国会図書館デジタルコレクション官報検索ページ

こちらでは、官報第一号から始まり、発刊されたすべての官報を公開しています。

官報4

出典:官報第一号の公開ページ

 

官報の情報量は莫大なため、官報の中から、知りたい情報を素早く探し出すことのできるオンライン上の専用検索サービス(有料・無料あり)も提供されています。

官報と個人再生の関わり

個人再生手続では、段階ごとに官報への掲載が行われる決まりとなっています。実際に官報に掲載されるタイミングや目的についてみていきましょう。

個人再生が官報に掲載されるタイミング

個人再生手続における、官報への掲載の回数は3回で、そのタイミングは次のようになっています。

1回目 2回目 3回目
個人再生手続開始決定 書面決議または意見聴取 再生計画の認可
債務者の住所、氏名、事件番号と一緒に、債権の届出期日が記載され、債権者に対する届出の呼びかけが行われます。 債務者の住所、氏名とともに、
・書面決議への反対・賛成の回答提出期限(小規模個人再生の場合)
・意見聴取の呼びかけと書面提出期限(給与所得者等再生の場合)
債務者の住所、氏名、事件番号とともに、再生計画を裁判所が認可したことの公告

個人再生をすると官報に掲載される理由とは?

官報に個人再生を行った事実が掲載されるのは「裁判所の公告」としての意味があります。

個人再生手続は、破産や民事再生などと同様に、裁判所を通して行われる手続の一つです。公告とは「国から、国民に広く伝える告示」という意味ですが、個人再生の場合は、主に「債権者」のためのお知らせという目的があります。

個人再生手続の中でも、小規模個人再生の手続きにおいては、債務者が作成した再生計画案を債権者に示して決議をとり、過半数の債権者の反対があると、その計画は認可されないことになっています。

その場合の過半数というのは、人数及び債権額です。そこで、多くの債権者が反対したら再生計画は認可されませんし、大きな金額の債権を持っている債権者が反対しても、再生計画が認可されないおそれがあります。

なお、給与所得者等再生の場合、こういった決議はとられずに再生計画が認可されます。

小規模個人再生の場合は、債権者であっても、書面の送付を行わない場合、自動的に合意したことになるというルールもあります。

このため、官報に掲載することで、債権者である貸金業者等が債権回収のために意見を述べたり、賛成・反対を申し入れたりする機会を逃さないように注意喚起しているのです。

官報に掲載されるもう一つの理由は、裁判所における「決定」と「確定」という二段階の承認システムにも関係があります。

裁判所の手続には「決定」と「確定」の二段階があります。裁判所が「決定通知」を出しても、それで手続が終わったわけではなく、そこから2週間の間、反対意見を述べる期間を設けています。誰からも反対がなければ、初めて「確定」となり、裁判所の決定した内容が揺るぎないものになるという決まりです。

個人再生の場合は、3回目の官報掲載から2週間が過ぎた段階で、「確定」となり、確定日の翌月から返済計画がスタートするという仕組みになっています。官報掲載は、決定の通知と同時に、確定日の起点の役割も果たしているのです。

官報に掲載されることで起こりうる影響

官報は国の広報誌としての機能を持ち、誰でもその気があれば入手可能なものです。

そこに名前が掲載されるとなると、「会社の上司や同僚が見るのではないか?」「隣近所一帯に噂が広まって、ヒソヒソされたり、近所づきあいに悪い影響が出るのではないか?」「子どもの学校関係に、変な話が広まってイジメられたりしないだろうか?」「離れて住んでいる親兄弟や親類縁者にも知れ渡ってしまうのでは?」など、気苦労を感じる人が少なからずいるようです。

実際に官報に個人再生を行ったことが掲載されることで、どのような影響が起こりうるのでしょうか。こちらでは、官報掲載後の影響についてまとめます。

日常生活に直接的な影響が発生する可能性は低い

官報に個人再生手続を行っていることが掲載されることで、日常生活に多大な影響を及ぼす、という可能性は割合に低いと言われます。なぜなら、官報を定期的に購読する人はそう多くなく、一部例外を除き、一般には頻繁に目にするものではないからです。

従って、官報に個人再生をした事実が掲載されても、それが即、債務者の知人等に広く知られる可能性は比較的低いと考えられます。

また、官報は前述のように非常にページ数が多く、更に個人再生の関わる裁判所のページも、多数の案件が同時に掲載されます。

官報5

出典:官報の掲載例

官報6

出典:実際の個人再生手続開始の公告(拡大)

掲載される時期を把握していて、多数の掲載案件の中からアタリをつけて探し出すのでない限り、偶然、知り合いの個人再生を発見するというのは、考えにくいと思われます。

掲載される裁判所の公告は、毎日変わりますから、現実的には知り合いに見られて気づかれる心配は、ほぼ、無いと見てよいでしょう。

インターネット版官報が、誰でも自由に閲覧・ダウンロードできるようになったことから、「ネットの検索エンジンを使ったら、個人再生した情報がヒットするのでは?」という心配をする人も出てきているようです。

これについても、現行のGoogleやYahoo!といった検索エンジンを利用する限りはあまり心配はなさそうです。官報の各ページはPDFファイルで作成公開されていて画像扱いになっています。

検索エンジンが拾ってくる、各インデックスページの目次には、個人再生をした人の、住所や氏名がダイレクトに記載されているわけではありません。ですから「知り合いの名前でネット検索していたら、偶然、官報の個人再生のページがヒットした」という事態が起こることは考えにくいと思われます。

例外は、前述した官報専用の検索サービスで、こちらで債務者の名前を記載して検索した場合は、ヒットする可能性があります。

3-2.個人再生手続の情報が官報に掲載されることで起こる影響

官報に個人再生を行った事実が掲載されることで、直接的に影響が起こるのは、「新たな借入」に関する事項です。特に信用保証に関する情報に関しては、大きな影響があります。

官報に個人再生手続開始決定の掲載がされると、個人信用情報機関のデータには、「事故情報」の記載がされます。

これによって、一定期間は貸金業者などからの新規借り入れはできなくなります。いわゆるブラックリスト入りしたことになります。個人信用情報機関の事故記録には、段階ごとのレベル分けがされています。

一般の遅延情報や、任意整理などの裁判所に関わらない記録は、最長で5年ほどの記録がされます。これに対して、官報掲載の事故になると、掲載期間が7年から10年と長くなります。自己破産の場合は、最長10年間は記録に残されると言われています。

個人再生手続は自己破産の次に、重大な事故と言う扱いになっているので、自己破産と同程度の期間は信用情報機関の記録が残るものとみていいでしょう。この期間中は、

  • 新規のクレジットカードの発行
  • 消費者金融との新規取引
  • 自動車や住宅の新規ローン

は、本人名義で利用することができなくなります。信用情報機関の事故記録は、全ての金融機関で共有されるため、過去に全く取引のない金融機関でも同じく新規の貸付はしてもらえなくなります。

また、本人名義の借入だけでなく、家族や第三者の連帯保証人になることもできません。従って、個人再生を行った人が連帯保証人になっている借金の契約は、解約や連帯保証人の交代が必要になる場合があります。

ただし、これらは個人再生を行った本人名義に限られるので、同居・別居の家族がクレジットやローンの新規契約をすることについては制限がありません。

官報掲載後に警戒しておく方が良いこと

官報掲載後に警戒しておく方が良い点もあります。それは、ヤミ金業者などに代表される、違法・不法な貸し付けを行う業者との接触です。

前述のように、官報は一般には積極的に利用される情報源ではないので、一般的市民生活を送っている人には目にする機会や必要性が低いものです。

しかし、インターネット版の公開が行われるようになったことで、誰でも無料で簡単に官報の情報を見ることができるようになっています。良い点でもありますが、同時に、ヤミ金業者も新規顧客の開拓にこれらの情報を利用しています。

官報には住所氏名が掲載されてしまうので、そこを狙って、ヤミ金業者がポスティング広告や電話による接触をしてきた事例があります。

「信用情報に記録が残ると、10年はもう、借り入れができませんが、ウチならばご希望の金額をお貸しすることができますよ。」などと、言葉巧みに誘いをかけてきます。

ヤミ金に代表される違法・不法な貸金を行う業者は、借金で経済的に困窮している人の心理をよく理解しており、どのように誘い掛ければ乗ってくるか?を知っていて、もっとも弱いところを突いてきます。

しかし、このような業者から借り入れを行ってしまうと、法律上の救済は実質的にできなくなってしまいます。せっかくの再生計画が無意味になってしまう危険や、嫌がらせなどの被害が起こることも考えられます。

官報掲載のデメリットともいえる点ではありますが、あらかじめ、このようなことが起きるということを理解しておき、相手のワナにかからないような予防策を講じておくことが重要でしょう。

特に、配偶者や成人した子供など同居の家族に対しても、周知を徹底しておくことが、リスク回避に有効な手段となり得ます。

匿名OK・無料!借金減額シミュレーター

ws000000

街角相談所-法律-無料シュミレーターは氏名、住所などを入力しなくても利用できる「完全匿名性」の借金解決サービスです。

「いきなり弁護士事務所に電話するのは少し抵抗がある...。」という方も利用しやすくなっています。


無料シミュレートしてみる

債務整理に強い弁護士

無料相談:0120-422-009

弁護士法人サンク総合法律事務所」は月600件以上の相談実績がある債務整理に強い弁護士事務所です。

全国対応・相談無料・365日24時間対応・初期費用0円・分割払いOK・弁護士費用が払えないなどの相談も可能です。


無料相談:0120-422-009