個人再生を利用した時に「車」はどうなる?

監修者

元弁護士ライター 福谷 陽子

自己破産をすると、住宅や車などの財産はすべて売却して返済に充当でされます。

では、自己破産の一つ手前の債務整理方法である個人再生では、車の取り扱いはどのようになるのでしょうか?

この場合、車の所有の状況によって、取扱いが変わってきます。個別の状況ごとにどのように取り扱いが異なってくるのか解説したいと思います。

個人再生の制度には財産を差し押さえる決まりはない

個人再生手続を利用した場合のメリットとしてしばしば言われるのが「家を手放さなくても済む」という点です。

住宅ローンを支払っている場合は、ローンの返済を滞りなく続けることを前提に、基本的に住宅ローン以外の債務の総額のうち5分の1以上を3年以内で支払うことで、残りを免除してもらうことができます。このことで生活の再建が図れることになります。

ここで、気にかかるのは、住宅の次くらいに高額の財産である「車」の存在でしょう。

個人再生手続を行ったら、車は即引き上げられるのでは?と不安に思っている方も多いと思います。個人再生は破産手続きとは違いますから、破産のようなすべての財産をいったん凍結して破産管財人に一任するような仕組みはありません。

個人再生を行ったことで、裁判所が直接、債務者の財産を処分することにはつながりません。しかし条件によって、車をとられる心配のないケース、車を持っていかれてしまうケース、持っていかれてしまう条件はあるけれど、手元に残せるケースがあります。

財産としての「車」の取り扱いは「不動産」と似ている

個人再生手続と車の関わりを知る前に、車の法律上の扱いについて簡単におさらいしておきましょう。

車(自動車・軽自動車)は、購入すると所有者を確定するために陸運局または軽自動車検査協会で車検を受けて、初年度登録を行い、ナンバープレートが交付されます。車検とナンバープレートの取り付けがなされていない車は公道を走行することが禁止されています。

このように、車に関しては登録制度によって、所有者の管理が徹底しているため、本来的には動産(動かすことができる財産)であるにも関わらず、財産法上は「動産」と「不動産」の中間のような扱いにされています。

軽自動車は、法律上は「動産」とされていますが、登録制度が徹底されている意味では、自動車と変わりありません。

不動産の場合、その物件(土地や建物など)が「誰のものか?」を保証するために不動産登記が徹底されています。

登記簿謄本の所有権者(俗にいう「名義人」)が、その物件の所有者であり実際に不動産を使用している人、住んでいる人が所有者でない場合の所有権を登記が保護する効果があります。

同じように自動車も自動車検査証の「所有者欄」に記載されている人が所有者となります。実際に日常的に利用している人が車の所有者(名義人)ではない場合であっても、所有者のもつ権限は変わりません。

車検証

個人再生で車の取り扱いがどのようになるか?は、この自動車検査証に記載されている車の所有者が誰であるか?が非常に大きな意味を持ってきます。

自動車ローンと「所有権留保」

個人再生手続で車が引き上げられる条件に関わるもう一つの要素が、自動車の売買の習慣である「所有権留保」です。

車は、比較的高額なものですから、現金で一括払いができず、ローンを利用して購入する人も多いです。

また、車は耐久消費財ですから、手数料や金利がついても、月々少額ずつ支払っていく方が理にかなっているという考え方を持っている人もいるでしょう。

自動車ローンは、買う側からすると便利ですが、売る側にしてみると非常に不安な要素が多い仕組みになります。車は移動に利用する道具であり、不動産と異なり一つ所にじっと置いておくものではありません。

代金を支払い終えないうちに勝手に転売されてしまうことや、事故で車両はスクラップ、購入者も亡くなってしまうなどで債権回収ができなくなってしまうのが一番怖いのです。

法律的には、車にも不動産同様に抵当権が設定できます。しかし、車の場合、住宅よりも価値が低下する時間が早く、債権額そのものも住宅と比べると少額です。裁判所を通し差押をかけて回収するには費用対効果が小さく、メリットがありません。

また、抵当権には「順位」という制度もあって、せっかく費用を負担して抵当権を設定しても、他の会社が同じように抵当権を付けてくると、不払いが生じたときに回収できる債権額が減ってしまう原因となります。これも代金の回収が完了していない販売元には、避けたいことです。

他方、自動車検査証には所有者と一緒に使用者を登録することができる仕組みになっています。

そこで、自動車検査証上の所有者を、ローンを組んだ信販会社やリース会社にしておき、使用者を購入者として登録することで、購入者がローンを払い終えないまま勝手に転売することを防ぐ方法として利用する慣習があります。これを「所有権留保」と言います。

購入者を使用者として置き、自動車税や軽自動車税の納付義務者を使用者にしておけば、車検時に必要になる、自動車の納税証明は購入者の住所・氏名となり、任意保険の加入や車検の更新に不都合は起こりません。

自動車をローン(割賦)で販売するときには一般的に、このような所有権留保が行われ、車の代金を完済してから車検証の所有者を変更するという方法が取られています。

個人再生で車が引き上げられるのはどんな時?

個人再生のときに、再生計画の対象になるのは住宅ローン以外の全ての債務が対象になります。自動車ローンも同様で、再生計画の対象として扱われます。従って、個人再生の申請を提出した時点で、車両が引き上げられる(取られる)可能性は、

  • 車両の所有権や、その他の権利の状態
  • 車両に直接かかわる債権の有無、返済状況
  • 車両を必要とする特段の事情

によって、左右されることになります。個々のケースについて詳しく見ていきましょう。

個人再生をしたとき車が取られる心配のないケース

個人再生を行って、車が債権者に引き上げられる心配がないのは以下のようなケースです。

  • a.車の所有権者が同居の家族、別居の親族等の「債務者本人以外」
  • b.車の所有者が債務者本人で、その車両の代金等の支払いが完了している場合

a,の場合、車両を利用しているのが個人再生を申請した債務者本人であったとしても、車両の名義人は債務者ではありません。

従って、債務者には車両の所有権がないので、債務整理による影響が起こり得ません。分かりやすく言えば、「自分のものではない財産」であるので、使用者である人物が債務整理を行っても全く影響がないのです。

b.の場合は、車に関する「完全な所有権」を取得できており、その車両に関わる残債務がない状況です。個人再生の影響が関わってくるのは、車に何らかの債務がある場合に限られるため、完全に自己所有となっている車両には個人再生の影響が及ぶことはありません

個人再生で車が取られる可能性が高いケース

個人再生手続の影響で、車が取られてしまう可能性が高い場合の条件は2つあります。

  • 所有権留保によって、車両の所有者が信販会社になっている
  • 自動車ローンで購入されていて、残債務がある

事情を加味して車両の引き上げ拒否できる場合

  • 所有権者が自動車販売会社、中古車ディーラーなど、「信販会社」以外になっている場合
  • 自動車が返済費用を稼ぎ出す営業に不可欠な場合
  • ローンの残債を一括返済する場合

自動車ローンが残っていて、債権者に所有権がある場合は、原則引き上げを拒否できないとされています。しかし、個別事情によっては、車両の引き上げを拒否できる場合があります。

自動車ローンの債権者が、信販会社以外の債務者である場合は、引き上げを請求されても拒否することが認められており、交渉の余地があるといえます。

たとえば、自動車の所有名義がディーラーや自動車販売会社になっている場合には、信販会社は車の所有者ではないので、車を引き上げることができません。

ただし、現実的には引き上げの拒否を認められることは簡単ではないケースが多くなっています。

逆に自動車の所有権者がローン会社の場合は、使用者(債務者)に対して、ローン会社が別除権を行使してくるため、自動車は引き上げられてしまいます。

自動車を失うことで、個人再生計画の履行に不可欠な収入を得ることができなくなる場合は、再生計画の履行を優先して、「特段の事情あり」と認められる場合があります。この場合は、

  • 別除権協定を結ぶ
  • 担保消滅請求の申立を裁判所に行う

という方法で調整する必要があります。

別除権協定とは、ローン会社をはじめとする自動車の債権を持つ債権者に対して、車の査定評価額相当の金額を分割払いすることを条件に、車を引き揚げる権利(別除権)の行使を取りやめてもらう契約のことです。

簡単に言えば、自動車ローンの債権者のために返済方法を見直して変更することになるため、裁判所や他の債権者の許可・同意を必要とします。

担保消滅請求の申立は、もうちょっと強硬手段で、債権者との交渉が難しく、協定にも応じてくれないような場合に行われる手段です。自動車についている「所有権留保」を担保権として扱い、これを裁判所の手続きによって消滅させる方法です。

実行するためには、最初の手続として裁判所に、自動車の時価相当金額を、一括で裁判所に納付する必要があり、経済的に苦しい場合は金銭負担がとても大きくなってしまいます。

担保権消滅請求と同様に、自動車のローン残債を一括返済することで、手元に残す方法も一応可能ではありますが、こちらも資金の面から、独力では難しいでしょう。

実務では、親兄弟などの親族から個人的に借金して、一括返済する手法が取られています。

以上のように、個人再生によって車がなくなることもありますが、守ることができるケースもたくさんあります。個人再生をしたいけれども車を失うのが心配な場合には、弁護士に相談をしてみることをおすすめします。

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