個人再生が他の債務整理手続きと違う点

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金を整理するための債務整理手続きにはいくつか種類があります。具体的には、任意整理特定調停個人再生自己破産の4種類です。

この中でも個人再生は、借金額を大幅に減額できたり、住宅ローンがあっても住宅を守ったまま他の借金だけを減額出来る特則などがあったりして、とても便利で人気のある債務整理手続きです。

このような個人再生ですが、他の債務整理方法とは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?その違いによって、自分の場合に個人再生が適切な解決方法なのかどうかが代わってくることもあるので、知っておく必要性は高いです。

そこで今回は、個人再生と他の債務整理手続きとの違いをまとめてご説明します。

個人再生と他の債務整理手続きとの違い【一覧表】

債務整理方法 個人再生 任意整理 特定調停 自己破産
裁判所の利用 地方裁判所 なし(裁判外の直接交渉) 簡易裁判所 地方裁判所
解決方法 再生計画認可決定 和解合意 調停 免責決定
借金の減額幅

・100万円以下の場合そのまま・500万円未満の場合100万円・500万円以上1500万円未満の場合には5分の1・1500万円以上3000万円未満の場合には300万円・3000万円以上5000万円以下の場合は10分の1

利息制限法を超過していない限り困難 利息制限法を超過していない限り困難 全額カット
手続き後の返済 あり(原則3年) あり(原則5年以内) あり(原則3年) なし
利用出来る人 個人のみ 個人、法人 個人、法人 個人、法人
借金額の制限 5000万円まで なし なし なし
借金の原因が問題になるか ならない ならない ならない 一部の原因があると免責不許可事由に該当
収入の要否 厳格に必要 ある程度必要 ある程度必要 なし
財産が問題になるか 財産があると弁済金額が高くなる ならない ならない 一定以上の財産は処分が必要
財産処分の要否 不要 不要 不要 一定以上の財産があると処分が必要
一部債権者を選べるか 不可能 可能 可能 不可能
住宅処分の要否 住宅ローンがなければ不要。住宅ローンがある場合も「住宅資金特別条項」を利用すれば不要 不要 不要 必要
債権者の同意の要否 小規模個人再生の場合、過半数の人数と債権額の債権者の同意が必要 必ず必要 必ず必要 不要
弁護士費用、司法書士費用 高い 安い 安い 高い
手続き自体にかかる費用 高いことがある 安い 安い 高いことがある

裁判所の利用が必要

個人再生と他の債務整理方法との違いについて、まず「裁判所」を利用するかどうかという違いがあります。

個人再生の場合には、地方裁判所に申立をします。この場合には、債務者が居住している地域の管轄の裁判所を利用します。自己破産の場合も同じです。

これに対して、任意整理の場合には裁判所は利用せずに債権者と直接交渉をしますし、特定調停の場合には、相手方債権者の住所地を管轄する簡易裁判所で手続きをします。(参考:特定調停の申立先(管轄裁判所)を調べる方法

借金の減額幅が異なる

個人再生と他の債務整理手続きとの大きな違いは、借金の減額幅です。個人再生を利用すると借金が大きく減額されます。具体的な減額幅は、以下のとおりになります。

借金額 減額幅
100万円以下 そのまま
500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円以下 10分の1

これに対して、たとえば任意整理や特定調停では、利息制限法を超過した取引がない限り、借金の元本自身の減額はほとんどできません。元本ごと大きく借金返済額が減額できる個人再生とは、返済すべき借金の残額が全く異なってきます。

自己破産の場合には、借金が完全に0になるので、支払が残りません。この点で、減額された借金が残る個人再生は、自己破産とも異なります。

手続き後の返済の要否と返済期間

個人再生と他の債務整理手続きとでは、手続き後の返済の要否と返済期間も異なります。

まず、個人再生の場合には、原則として手続き後3年間が返済期間になります。ただしどうしても支払が難しい事情などがあれば、5年に伸長することができます。

これに対して、任意整理の場合には、特に返済期間が決まっていません。債権者との話し合いによって自由に設定することができます。特定調停の場合には原則として3年間になりますが、債権者との話し合いによって延ばすことができます。

自己破産の場合には、返済自体が不要なので返済期間の問題は発生しません。

利用出来る人は個人のみ

個人再生と他の債務整理方法の違いには、利用出来る人の違いも大きいです。個人再生は、もともと会社などを主な対象とした複雑な民事再生手続きを、個人の債務者が利用しやすいようにアレンジした制度です。よって、個人再生を利用出来るのは個人だけです。

法人や団体は利用することはできません。これに対して、任意整理や特定調停、自己破産であれば法人でも利用して、借金の整理をすることができます。

もし法人が再生手続きをして借金を整理したい場合には、個人再生ではなく民事再生手続きを利用することになります。

借金額の制限がある

個人再生と他の債務整理方法との違いには、借金額に制限があるかどうかも大きな違いがあります。

個人再生の場合には、借金額が5,000万円以下のケースしか利用出来ません。ただし、その計算においては、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローン残金は含みません。個人再生で減額しようとする借金が5,000万円以下かどうかが問題になります。

これに対して、他の債務整理方法には、借金額の制限がありません。任意整理も特定調停も自己破産も、いくらの借金があっても利用出来ます。

よって、5,000万円を超える借金があって、個人再生を利用出来ない場合には、自己破産などの他の債務整理方法を利用して解決することになります。

借金の原因が問題にならない

個人再生で借金を整理する場合には、借金の原因は問題になりません。たとえばギャンブルや浪費や過剰な投資などが理由の借金であっても、個人再生で借金を減額してもらうことができます。

これに対して、同じ裁判所を利用する自己破産手続きには借金の理由が問題になります。パチンコや競馬などのギャンブルや、買い物のしすぎなどの浪費が原因の借金がたくさんあると、免責不許可事由に該当して、免責(借金がなくなること)が受けられなくなるおそれがあります。

参考:自己破産ができない11個の「免責不許可事由」

このように、個人再生では、自己破産と異なり借金の原因が問題にならないので、ギャンブルなどが原因で多額の借金ができた場合の解決方法として有効です。

なお、任意整理や特定調停では、個人再生と同様借金の原因は問題になりません。

厳格な収入要件が必要

個人再生を利用するためには、厳格な収入要件が必要になります。個人再生を利用すると、手続き後に3年間(または5年間)、債権者に支払を継続していく必要があります。

個人再生では、裁判所を利用した厳格な手続きになるので、実際にこの債権者への支払が継続出来るかについて、非常に厳しく審査されます。

手続き後に債権者に対する支払ができるために十分な金額の収入があることが必要ですし、その収入が安定していることも重要になります。

また、収入の名義人は、個人再生の申立人本人である必要があります。たとえば専業主婦が夫の給料から返済したいと思っても、その主婦自身に収入がないのであれば個人再生を利用することはできません。

この点任意整理や特定調停なら、ここまで厳しく収入審査をされることはありません。アルバイトやパートなどの収入が不安定な人でも手続きを利用しやすいですし、専業主婦でも、夫の給料から支払ができるなら手続きを利用出来ます。自己破産の場合には、そもそも支払が不要なので、収入は不要です。

財産処分は不要

個人再生を利用する場合には、債務者の財産を処分する必要はありません。たとえば預貯金や生命保険、車や株券、投資信託などを持っていても、それらがなくなることはないのです。

ただし、個人再生では、所有している財産の価格以上の支払をする必要があるので、財産額が大きいと、債権者への支払い額が大きくなってしまう可能性はあります。

これに対して、同じ裁判所を利用した手続きである自己破産の場合には、債務者が所有している目立った財産はすべて失うことになります。たとえば20万円を超える預貯金や生命保険、有価証券や不動産などはすべてなくなります。

また、任意整理や特定調停の場合にも、財産がなくなることはありません。また、これらの手続きの場合には、持っている財産が多くなっても債権者への支払い額が増えることもありません。

このように、個人再生と他の債務整理手続きとでは、債務者の所有する財産の取り扱いが大きく異なります。

一部債権者を選べない

個人再生を利用する場合には、対象とする債権者を選ぶことはできません。それは、個人再生の場合には、すべての債権者を平等に扱わなければならないという「債権者平等の原則」が働くからです。

よって、車のローンがある場合に個人再生をすると、車のローン債権者が車を引き上げてしまいますし、保証人がついている借金がある場合に個人再生をすると、債権者は保証人に請求をしてしまいますので、保証人に迷惑をかけることになります。

これに対して、任意整理や特定調停の場合には、債権者平等の原則は働きません。これらの手続きの場合には、車のローンや保証人つきの借金を外して整理することが可能です。自己破産の場合には、個人再生と同様すべての債権者を対象とする必要があります。

住宅ローンがあってもマイホームを守れる

個人再生を利用すると、住宅ローンがあっても住宅を守りやすいです。個人再生の「住宅資金特別条項」を利用すると、住宅ローンをそのまま支払い続けて、他の借金のみ減額することができます。

保証会社が代位弁済をしていても、住宅ローンの巻き戻しによって代位弁済前の状態に戻すこともできますし、競売が開始していても、競売手続きを中止することも可能になります。

任意整理や特定調停でも、住宅ローンを対象にしなければ住宅は失われませんが、代位弁済や競売手続きが開始していると、止めようがありません。

自己破産の場合には、住宅ローンがあってもなくても、必ず持ち家である自宅の財産は失われることになります。

参考:個人再生の「住宅ローン特則」

債権者の同意が必要になるケースがある

個人再生を利用する場合には、債権者の同意の取り扱いについても他の債務整理手続きと大きく異なります。

個人再生では、債権者の同意が必要になるケースと不要なケースがあります。個人再生には、2種類の手続きがあるからです。

個人再生手続きの中でも「小規模個人再生」の場合には、債務者が提出した再生計画案について、過半数の数や債権額の債権者が異議を出した場合には、その再生計画案は認可されず、個人再生は失敗してしまいます。

これに対して、個人再生手続きの中でも「給与所得者等再生手続き」の場合には、債権者が異議を出していても再生計画案が認可されます。(参考:「小規模個人再生」「給与所得者等再生」の違い

では、他の債務整理手続きでどのような取り扱いになるのかを見てみましょう。

任意整理や特定調停は、各債権者との話し合いによって合意することにより、借金返済額と返済方法を決め直す手続きです。よって、これらの債務整理方法では、必ずすべての債権者の合意が必要になります。

これに対して、自己破産では、法律上の要件さえ満たしていれば免責が認められて借金がなくなります。よって、債権者の異議があって同意が得られない場合でも、要件さえ整っていれば免責されます。

費用が高い

個人再生と他の債務整理手続きでは、かかる費用についても違いがあります。個人再生は、他の債務整理手続きと比べて費用が高くなりがちです。

そもそも裁判所にかかる費用も高めです。申立費用として印紙代1万円と官報公告費用1万~2万円程度、郵便切手代もかかりますし、個人再生委員が選任されたら15万円の予納金も必要になります。

個人再生では弁護士費用や司法書士費用も高くなりがちです。だいたい着手金が30万円~50万円程度かかってしまいます。個人再生にかかる費用(実費と弁護士費用)を合計すると、40万円~60万円くらいかかってしまうことが多いです。

これに対して、任意整理や特定調停は、費用が安いです。自分で手続きをすればほとんど費用はかかりません。自己破産でも、同時廃止の場合には、個人再生より費用がかなり安くなることが多いです。(参考:債務整理にかかる費用

まとめ

今回は、個人再生と他の債務整理手続きとの違いについて解説しました。

個人再生を利用すると、任意整理や特定調停などとは異なって、大幅に借金の減額が認められます。また、個人再生を利用出来るのは個人のみであり、借金額は5,000万円までという制限があります。

また、個人再生は自己破産と違って借金の原因は問題になりません。財産がなくなることもなく、住宅ローン支払い中でも住宅を守りやすいです。

ただし、個人再生を利用する場合には、厳格な収入要件が必要になります。小規模個人再生の場合には、債権者の過半数の同意が必要ですし、費用も高くなりがちです。

今回の記事を参考にして、賢く個人再生を利用して借金問題を解決しましょう。

匿名OK・無料!借金減額シミュレーター

ws000000

街角相談所-法律-無料シュミレーターは氏名、住所などを入力しなくても利用できる「完全匿名性」の借金解決サービスです。

「いきなり弁護士事務所に電話するのは少し抵抗がある...。」という方も利用しやすくなっています。


無料シミュレートしてみる

債務整理に強い弁護士

無料相談:0120-422-009

弁護士法人サンク総合法律事務所」は月600件以上の相談実績がある債務整理に強い弁護士事務所です。

全国対応・相談無料・365日24時間対応・初期費用0円・分割払いOK・弁護士費用が払えないなどの相談も可能です。


無料相談:0120-422-009