
任意売却というのは、担保つき不動産(銀行等の抵当権がついた不動産)を「ローンを支払い続けることが苦しいので債権者の競売を待たずに自ら売却する」ということです。
売却代金を返済に回しても「その担保をつけている債権者に全額の返済ができない」状態になることが普通ですが、競売を待たずにあえて任意売却するメリットとデメリットについて考えてみましょう。
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目次
メリットその1「高く売れる」
任意売却の最大のメリットは「競売にかけられた場合の金額よりも不動産に高値がつく可能性が高い」ということです。
高く売れた場合、債権者に返済できる金額がより大きくなる=売却後になお残ってしまう債務が減る、ということになります。
担保物件(購入して抵当権等をつけられている不動産)を売却して債権者はそこから自らの貸付の返済を受けることになりますが、たとえ売却してもほとんどの場合、債務全額を返しきれずに残ってしまいますので、債務者としてはたとえ不動産を失っても残った部分の支払いは続けていかなくてはならないのです。
よって、その残債務は少なければ少ないほどよいことになります。
一概には言えないのですが、大体競売にかけられた不動産は「市価の6割程度の価格でしか売れないことがある」と考えた方がよいのですが、任意売却は外形だけ見れば通常の売却と同じです。
よって、市価に近い金額で売れる可能性もあります。
ただやはり、通常の売却の場合でも売りに出す時期やその物件が本来持っている立地や間取りなど、色々な条件や要素で価格は変動します。
確実にこのくらいで売れる、という価格は不動産業者でも断定することはできないと考えておくべきでしょう。
メリットその2「ご近所に知られずに売れる」
競売の手続きの中には「裁判所から命じられた執行官による現況調査」というものがあります。
これは競売にかける物件の「不動産の形状」「占有の状況」「占有者の権原」といったものを調査して報告書にまとめるためなのです。
特に占有の関係については競売物件ではさまざまな問題が生じることがあります。
- 借家人はいるのか?それは誰か?退去を求めることができるのか?
- 借家人がいる場合は敷金や保証金を返さなければならないのか?
また、借家人がいなかったとしても、債務者が自主的に立ち退いて空き家になっているところに浮浪者が住みついてしまったなどの問題が生じるケースもあるため、競売の場合はどうしても現地に行かざるを得ないのです。
執行官が家に来ることでご近所の噂になってしまうことが心配という人もいるため、このような手続きがないことが任意売却のメリットといえます。
ただ、任意売却の手順は債権者との交渉以外はほぼ通常の売却と同様になるため、いわゆる「買受希望者の内覧」には応じなければなりません。
メリットその3「引っ越し代を出してもらえることがある」
任意売却の場合、通常の売却と最も異なる点は、「売却に伴う諸費用を債務者自身が準備できないため、売却代金から仲介手数料その他の費用を捻出しなければならない」ということです。
債権者としては1円でも多く回収したいところですが、自分たちの取り分を減らして諸費用を出すことに応じなければならないのです。
よって、担当の不動産業者は何にどのくらいかかって、いくら売却代金から差し引くのかということを債権者に対して明らかにしなくてはなりません。
これは任意売却を担当する不動産業者の腕次第というところもあるのですが、債権者に対してのこのような交渉がうまくいき、良い関係を築いていれば債権者側が債務者の引っ越しにかかる費用を売却代金から出すことを認めてくれることもあります。
ただ、これは法的な根拠があるものではなく、金額も決まっていませんので、運が良ければというところにはなります。
デメリットその1「債権者が同意しなければ抵当権を消せない=売れない」
競売の場合、裁判所主導でいわば「強引に」手続きを進める部分がありますが、任意売却では担当の不動産業者が債権者に「全額は返済できませんが、抵当権を消してください」という交渉をしなければならないのです。
抵当権というのは残債務全額を支払わなくては消してもらえないのが原則ですが、任意売却の場合は全額を返済していないのに抵当権抹消書類を出してもらうというイレギュラーな処理になります。それでも債権者が応じるのは「自分で競売にかけるよりも手間もかからず、より多くの債権を回収できる」という期待感からです。
ただ、不動産業者との関係が悪化してしまったり、あまりにも悪条件を提示されたのでは抹消に応じてもらえないこともありえます。
また、抵当権は1つとは限りません。たとえば1番で銀行が住宅ローンの抵当権をつけているが2番、3番で消費者金融の抵当権がついているというパターンもあります。
このような場合、本来的には配当を受けられない2番以降の抵当権者に対しても「ハンコ代」という形でいくらかの金銭を交付して抵当権抹消に応じてもらわなければならないことになります。
ハンコ代とはあくまで慣習的なものに過ぎないので、これがいくらになるかというのも交渉次第になります。
デメリットその2「不動産業者選びが難しい」
上記に述べてきたように、任意売却においては債権者への抵当権抹消の交渉を中心にして、不動産業者が非常に大切な役割を果たしています。
任意売却が成功するかどうかを分けるのは不動産業者の交渉力にかかっているところがあり、そしてその不動産業者を選択するのは債務者自身です。
不動産業者を選ぶ際には、ただ単に名前を知っているからとか、近いからとかそのような理由で選んではいけません。任意売却の特殊性をよく理解し、交渉のツボを心得ている業者に依頼しなければ失敗につながります。
まずはいくつかの業者の相談に行ってみるとよいでしょう。ある程度突っ込んだ質問をして、それに対して明確に答えられるかどうかで業者の実力を計ることもできます。
任意売却の良い面だけではなく、悪い面も含めて包み隠さず、そして何よりも素人である債務者にわかりやすく説明をしてくれる業者を選ぶことは、債務者自身が納得のいく売却をするためにも非常に大切なことです。