
執筆者
元弁護士ライター 福谷 陽子
任意整理をすると、いわゆる「ブラックリスト」状態になってしまいます。
ブラックリスト状態では、ローンやクレジットカードなどの利用ができなくなりますが、同じように他人(家族も含む)の借金の連帯保証人になることもできなくなるのでしょうか?
たとえば子どもの奨学金借入の際の連帯保証人になることもできなくなるのかなどが心配です。また、そもそも保証人とはどのようなものかについても正確に知っておきたいところです。保証人になると、どのような危険性があるのかも、詳しくは知らないことが多いです。
そこで今回は、そもそも保証人とはどのようなものなのかという問題や、任意整理をすると他人の借金の保証人になることができなくなるのかなどについて、解説します。
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目次
任意整理すると保証人になれない?
任意整理をすると、他人の借金や負債についての保証人になることはできなくなるのでしょうか?以下、順番に解説していきます。
基本的に保証人にはなれない
自分が借金をしていなくても、他人の保証人や連帯保証人になるケースはよくあります。たとえば、子どもの奨学金借入の際には、親が連帯保証人になることが普通ですし、住宅ローンを組む場合にも、夫婦の一方が他方のために連帯保証人になることがあります。
事業を経営している場合には、会社が借入をする場合に代表者が個人保証をすることが多いですし、取引先や知り合い、友人などに頼まれて借り入れについての連帯保証人になるケースもよくあります。
しかし、任意整理をすると、他人の借り入れに関する連帯保証人や保証人にはなれなくなります。この場合の「他人」というのは、自分以外の人という意味であり、家族や会社なども含みます。
任意整理をするとブラックリスト状態になる
任意整理をすると、なぜ他人の保証人になれなくなるのでしょうか?それは、任意整理をすると、いわゆる「ブラックリスト状態」になってしまうからです。
任意整理をすると、信用情報機関が保管している個人信用情報に事故情報が記録されてしまいます。銀行などの金融機関や消費者金融などの貸金業者は、貸付の審査を行う場合に個人信用情報を参照して調査します。すると、このときに事故情報が記録されていると、任意整理したことが判明して、ローン審査に通らなくなってしまうのです。
このように、個人信用情報に事故情報が記録されてローンやクレジットの審査に通らない状態のことを、俗にブラックリスト状態と言っています。ブラックリスト状態とは言っても、実際に何らかのリストがあるわけではないのです。
よって、任意整理をすると、ローンやクレジットカードなどの利用ができなくなります。
保証人にも審査がある
任意整理をしてローンやクレジットカードなどが利用出来ないブラックリスト状態になると、なぜ他人の借入の保証人にもなれないのでしょうか?
それは、お金を借り入れる際には、借金する主債務者だけではなく、保証人に関しても信用調査があるからです。保証人に関する信用調査では、主債務者の個人信用情報ではなく保証人になろうとするものの個人信用情報が参照されます。よって、ここで保証人が過去に任意整理をしており、事故情報が記録されていると、保証人の審査に通らなくなってしまいます。
よって、任意整理をしてブラックリスト状態になっていると、他人の借り入れの際の連帯保証人や保証人になることもできなくなります。
賃貸住宅の連帯保証人にはなれる
任意整理をすると、基本的に他人の借り入れに関する連帯保証人や保証人になることはできません。ただし、この場合であっても他人が賃貸アパートやマンションなどを借りる際の連帯保証人になることはできます。
信用情報機関や個人信用情報の問題は、あくまで借り入れ(借金)に関する信用問題であり、不動産の賃貸とは無関係だからです。賃貸の審査の際に、大家や不動産業者が個人信用情報を参照することはありません。
よって、任意整理でブラックリスト状態になっていても、収入などの要件が足りていれば、他人の賃貸の連帯保証人になることはできます。ただし、家賃支払い方法に信販会社を通していたり、家賃保証会社が入る場合には注意が必要です。
最近では、家賃を大家に直接払いするのではなく、信販会社を通じて引き落としをしたり、クレジットカードを通じて引き落としをするタイプの賃貸契約があります。また住居を借りる際に、信販系の家賃保証会社が入るケースもあります。
これらの場合には、賃貸契約をする際に、家賃引き落としの信販会社やクレジット会社、家賃保証会社などによる審査があります。これらのクレジット系の審査の場合には、個人信用情報が参照されてしまいます。すると、連帯保証人になろうとするものが、事故情報が記録されていてブラックリスト状態であることが判明してしまいます。
よって、これらのケースでは、任意整理をしていると他人の賃貸住宅の連帯保証人になることもできなくなるので注意が必要です。
このようなケースではなく、大家に直接家賃を支払ったり、単に不動産管理会社を仲介して支払うだけの場合などには、任意整理をしてブラックリスト状態でも賃貸の連帯保証人になることができます。
保証人になれない場合の対処方法
任意整理をしたことによって、他人の借入の連帯保証人になれない場合には、どのような対処方法をとれば良いのでしょうか?
借り入れる主債務者がまったくの他人であれば、「申し訳ないけれども、事情があって連帯保証人にはなれない」「審査に通らないので、連帯保証人にはなれない」と言って断れば良いだけです。
実際に審査を受けて通らなければ、当の主債務者も諦めるでしょうし、このことによって人間関係が悪化することもないでしょう。
問題になるのは、子どもの奨学金借り入れなどのケースです。子どもが奨学金を借り入れる場合には、親が連帯保証人になることが非常に多いです。
ところが親が任意整理をしていると、奨学金の連帯保証人になることができません。奨学金の連帯保証人の審査では、個人信用情報が参照されてしまうからです。
親が任意整理のブラックリスト状態のために連帯保証人になれない場合、まずは、配偶者(子どものもう一人の親)に連帯保証人になってもらう方法がもっとも手っ取り早く適切です。
たとえば夫が任意整理して連帯保証人になれない場合には、妻に連帯保証人になってもらうのです。もし、夫婦が両方ともブラックリスト状態であったり、ひとり親の家庭である場合には、両親(子どもの祖父母)や親戚などにお願いして、連帯保証人になってもらいましょう。
保証人とは
任意整理をすると、基本的には保証人になることができなくなりますが、そもそも保証人とはどのような責任を負う立場なのでしょうか?保証人になると危険がないのかも心配です。そこで、以下ではそもそも保証人とは何かについて、解説します。
保証人は担保の1種
保証人とは、主債務者(借金した本人)が借金や負債の返済をしない場合に、代わりに借金や負債の支払いをしなければならない人のことです。
お金を貸し付ける際、主債務者が本当に確実に返済をしてくれるかどうかが不安なことが多いです。そこで、保証人をつけることによって、確実に借金が支払われるように事前に対処しておくのです。このように、保証人は主債務者が支払わない場合に備えた担保の1種です。
保証人になる場合には、債権者と保証人との間で「保証契約」という契約を締結します。
保証人の2種類
保証人には、「連帯保証人」と通常の「保証人」という2種類があります。連帯保証人とは、保証人の中でも責任が重くなっているタイプの保証人です。
たとえば、単なる保証人であれば、債権者から支払い請求があった際に「先に主債務者に請求してほしい」とか「先に主債務者の財産から取り立ててほしい」などと主張して支払いを拒むことができますが、連帯保証人の場合にはこのようなことは言えません。
また、保証人は、自分の負担部分を超えて借金返済する必要はありませんが、連帯保証人の場合には、債権者からの請求があれば、借金の全額を返済しなければなりません。
たとえば、主債務者が1,000万円の借入をしていて、保証人の負担部分が500万円の場合、債権者が保証人に対して借金の支払い請求をしてきたとします。
すると、単なる保証人の場合には、「自分の負担部分は500万円だから、それ以上は支払わない」と言って、500万円までの支払いをすれば義務を免れることになります。これに対して、連帯保証人の場合には、債権者との間では負担部分というものが存在しないので、1,000万円全額の支払いが必要になるのです。
日本では、保証人のほとんどは連帯保証人です。住宅ローンのケースでも事業資金の借入のケースでも、奨学金のケースでも、ほとんどすべてのケースでは連帯保証人が必要になります。
よって、通常他人の「保証人」になるという場合には、責任が重い「連帯保証人」になることを意味するので、注意が必要です。
主債務者が返済しないと保証人に請求される
他人の保証人(連帯保証人)になると、具体的にはどのような危険性があるのでしょうか?
保証人になっている場合に、主債務者が借金の返済を滞納すると、債権者は保証人に対して、主債務者の代わりに借金返済の請求をしてきます。この場合、債権者からの請求内容は、借金残金の一括払い請求になることが多いです。その理由は以下のとおりです。
通常、借金する場合には、分割払いにします。しかし、返済を長期滞納した場合にまでいつまでも分割払いを認めると、債権者にとって不利益になってしまいます。
そこで、借金を長期滞納した場合には、分割払いができなくなって、そのときの借金残金を一括払いしなければならないという契約内容にすることが普通です。
保証人に請求が来る場合も、通常主債務者が借金返済を滞納して既に分割払いができなくなっていることが多いので、債権者が保証人に請求する場合には、そのときの借金残金の一括払い請求になってしまうのです。
しかも、この場合には、高額な遅延損害金が加算されることも多いので、保証人の負担はさらに重くなります。
保証人が返済しないとどうなるか
債権者から保証人に借金の支払い請求が来た場合に、保証人が返済出来なかったらどうなってしまうのでしょうか?
この場合、債権者は、保証人や連帯保証人に対して保証債務の支払いを求める裁判を起こしてきます。そして、裁判所で判決が出ると、債権者はその判決にもとづいて保証人の財産を差し押さえてきます。たとえば、保証人の預貯金や不動産、生命保険や給料などが差押の対象になってしまいます。
このように、保証債務を支払えないからと言って放置すると、保証人自身が生活に困るような大変な状態になってしまいます。
返済出来ない場合の対処法
保証人に請求が来た場合に保証人がその支払いをできない場合には、保証人自身も債務整理をしないといけません。
たとえば多額の支払い請求が来て、どうしようもないときには自己破産をすれば完全に保証債務の支払いを免れることが可能です。個人再生で保証債務を減額してもらうこともできますし、任意整理をして保証債務の支払い方法を話し合うことも可能です。
このように、保証人(連帯保証人)の責任は大変重いものです。軽い気持ちで他人の保証人になると、大変なことになってしまいますので、絶対に簡単に他人の保証人になってはいけません。
子どもの奨学金の連帯保証人などであれば仕方がないですが、それ以外の借入の保証人を頼まれた場合には、よほどの事情がない限り、人の借金の保証人にはならない方が得策です。
まとめ
任意整理をすると、個人信用情報に事故情報が記録されて、いわゆるブラックリスト状態になってしまいます。
すると、自分のローンやクレジットカードの利用ができなくなるだけではなく、他人(家族も含む)の借金の保証人になることもできなくなります。たとえば子どもの奨学金の連帯保証人になることもできません。
任意整理をして他人の保証人になれなくなった場合には、それが知人などの借金である場合には、審査に通らないので連帯保証人になれないと言って断るとよいでしょう。
これに対し、子どもの奨学金借入の連帯保証人の場合には、自分でない方の親(配偶者など)に連帯保証人になってもらいます。ひとり親などの場合には、両親(子どもの祖父母)や親戚などにお願いしてみましょう。
他人(家族も含む)の保証人になると、主債務者が借金返済を滞納した場合に保証人に返済請求が及びます。この場合、借金全額と遅延損害金の一括払い請求されてしまうことが多いです。
保証人が返済出来ないと、債権者から保証人に裁判を起こされて、保証人の財産が差し押さえられてしまうこともあります。保証人が債権者から請求を受けた場合に返済ができないなら、保証人自身が債務整理をすることによって解決する必要があります。
このように、保証人になると非常にリスクが高いので、気軽に他人の保証人になることのないよう、注意しましょう。