
監修者
元弁護士ライター 福谷 陽子
債務整理をするにあたって、「家や車などの財産を残せるかどうか?」が気になる方は多いと思います。
結論からいいますと、任意整理と特定調停では基本的に財産を処分されることはありませんし、ローンの残っている住宅や車も残すことが可能です。
一方、個人再生と自己破産では財産の取り扱いがやや厳しくなります。特に自己破産では、生活に必要な最低限の財産しか残すことができません。
それぞれの債務整理における財産の取り扱いや、車・住宅を残すための方法などについて解説していきます。
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任意整理と特定調停の場合
任意整理および特定調停は、債権者と交渉して利息や遅延損害金をカットしてもらい、元金だけを3~5年の分割払いで支払っていく方法です。
債務整理の中ではもっともデメリットが少なく、財産を強制的に処分されることもありません。
また、任意整理と特定調停では交渉相手を自由に選べますので、手元に残しておきたい財産がある場合は、そのローンを手続きの対象から外せばいいということになります。
現金や物品など
問題なく手元に残すことができます。ただしローンやクレジットカードで支払い中の商品があり、それを任意整理や特定調停の対象に含める場合は、商品を没収される可能性があります。
自動車
ローンのない車はそのまま所有できますが、「所有権留保付き」のローンが残っている場合、任意整理や特定調停の対象にしてしまうと債権者に車を引き揚げられてしまいます。
ですから、所有権留保付きの車を残したい場合は自動車ローンを任意整理の対象にせず、そのまま支払い続ける必要があります。
住宅
住宅ローンも、任意整理や特定調停の対象にすると債権者によって抵当権が実行され、競売にかけられる可能性が高いです。
家を手放したくない場合は、住宅ローンを任意整理せず、そのまま支払い続けるようにしましょう。
個人再生の場合
個人再生は、大幅に圧縮してもらった債務を3~5年で支払っていく方法です。
債務の一部は返済するため、すべての債務が免除される自己破産よりは多くの財産を残せますが、任意整理や特定調停に比べるとやや制限があります。
現金や物品など
個人再生には、「清算価値保証の原則」というものが適用されます。これは、「手元に残す財産の総額以上の金額を返済しなければならない」というルールです。
たとえば債務が300万円ある人の場合、本来であれば最低弁済額は100万円となるのですが、もし300万円分の価値がある財産を手元に残す場合は、最低弁済額も300万円になります。
つまり、財産の額が多ければ多いほど返済額も増えることになりますので、場合によっては財産を処分し、その分を返済にあてるという方法がとられることもあります。
自動車
個人再生には「債権者平等の原則」というルールもあるため、任意整理や特定調停のように整理先を自由に選ぶことができません。
つまりローンの残っている車がある場合、強制的に個人再生の対象となり、債権者によって車は引き揚げられてしまいます。
個人再生でローンの残っている車を手元に残したい場合は、以下のような方法があります。
- ローンの残債を一括返済する
- 車の名義を知人や親族に変更する
- 債権者と「別除権協定」を結ぶ
- 「担保権消滅許可」を申し立てる
特に、仕事や生活環境などで車が必要不可欠な場合、特別に車のローンを個人再生の対象から外してもらう③の方法を選択できる可能性があります。
債務整理に強い弁護士に相談し、アドバイスをもらうようにしましょう。
住宅
個人再生の大きなメリットの一つが、「住宅ローンの残っている家も残せる可能性がある」ということです。
本来、個人再生はすべての借金が対象となりますが、家に関しては救済措置として「住宅ローン特則」(住宅資金貸付債権に関する特則)が用意されています。
住宅ローン特則を定めた再生計画が裁判所に認可されると、住宅ローンはこれまで通り支払うことで、家を引き続き所有することが可能です。
また、住宅ローンの支払いが苦しい場合は返済期間を延ばしてもらったり、個人再生の弁済期間中はローンの返済額を減らしてもらったりできる可能性もあります。
住宅ローン特則を利用するためには、「債務者本人が住んでいること」「債権者や保証会社の抵当権だけが設定されていること」などのいくつかの条件を満たさなくてはいけません。
自己破産の場合
自己破産は、税金や健康保険料を除くすべての借金の返済を免除してもらう手続きです。債務整理の中でも究極の方法になりますので、財産の所有については厳しく制限されます。
残せる財産
自己破産をする場合、手元に残せる財産は「1種類あたり20万円以内」のものに限られます。また、99万円までの現金と、衣服・寝具・仕事に必要な道具などの必需品も所持が認められています。
評価額が20万円を超える車や、解約金が20万円を超える生命保険などはすべて処分しなくてはいけません。
自動車
ローンが残っている車で「所有権留保」が付いている場合は、価値にかかわらず債権者によって引き揚げられます。
それ以外の車は財産となりますので、時価額が20万円を超える場合は処分の対象となります。
つまり、自己破産で手元に残せる車は「ローンが残っておらず、売却しても20万円以下の値打ちしかない車」です。
住宅
住宅ローンが残っている状態で自己破産をする場合、家は競売もしくは任意売却で処分されます。
一方、ローンの残っていない住宅は財産として扱われ、破産管財人によって売却されます。普通に考えて20万円以下の価値の家はありませんので、ローンが残っていようといまいと、自己破産をする場合は持ち家を手放すことになります。
自己破産をしても家に住み続ける方法としては、家を誰かに買い取ってもらい、今後はその人に家賃を納めるという方法があります(セール&リースバック)。この場合、親族や知人に買い取ってもらうか、専門の不動産業者に依頼することが一般的です。
その際に「買い戻し特約」をつければ、所定の賃料を納めた後で家の所有権を自分にもどすこともできます(セールバック)。
まとめ
債務整理と財産についてまとめてみましょう。
財産 | 任意整理と特定調停 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
現金 | 制限なし | 残せるが、額によっては最低弁済額が増える場合がある | 99万円まで |
車 | 自動車ローンを整理の対象から外せば、引き続き所有できる | 所有権留保付きの車は原則没収されるが、生活に必要な場合は別除権協定を結べることもある | 価値が20万円を超える車は残すことができない |
住宅 | 住宅ローンを整理の対象から外せば、引き続き所有できる | 「住宅ローン特則」を利用できれば、引き続き所有できる | 処分しなくてはいけない |
このように、財産を残せるかどうかは債務整理の種類によって異なります。特に厳しいのは自己破産で、必要最小限の財産しか残せませんので、住宅や車を残したい場合は個人再生を検討したほうがいいかもしれません。
必要な財産をなるべく手元に残すことができるよう、まずは債務整理に強い弁護士に相談してみてください。