債務整理後に自動車ローンはどうなる?

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執筆者

佐藤元宣FP事務所

FP 佐藤 元宣

現在、複数の貸金業者からお金を借りている場合やそれらに加えて自動車ローンを抱えている場合など、毎月の借金返済が苦しいという方は多いと思います。

これらの借金を合法的に解決する「債務整理」は、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の大きく4つの手続きに分けられる特徴があります。

そして、これらの手続きの仕方によって現在抱えている自動車ローンだけでなく、所有している自動車や他の財産にも大きな影響を及ぼすことになります。

本記事では、これら4つの債務整理後における自動車ローンの取り扱いやローンの対象となる自動車に焦点をあてて解説し、同時に現金や預金など他の財産との関係につきましても合わせて解説します。

債務整理後に自動車ローンはどうなる?

はじめに本記事のメインである債務整理後の自動車ローンと所有している自動車の取り扱いについて解説していきます。冒頭でも記述致しましたように、4つの債務整理によって、これらの取り扱いが異なりますので、それぞれの違いや特徴を押さえておくことが大切です。

任意整理の場合

任意整理の大きな特徴は、「任意整理の対象とする、任意整理の対象としないを自由に選択できる」ところにあります。

たとえば、A社、B社、C社と3つの貸金業者からの借金の他に、自動車ローンを抱えていたとします。この時、3つの貸金業者については任意整理をして、自動車ローンについては任意整理をしないといったことができる意味となります。

このような選択をすることで、自動車ローンの返済は従来通り続けていくことになるため、自動車ローンが無くなったり、減額になったりすることはありません。したがって自動車ローンを組んで購入した自動車が没収されることもありません。

一方で、借金の金額が大きいことなどの理由から自動車ローンを含むすべての債務について任意整理をした場合、一般にその自動車は、クレジット会社や保証会社等に没収されることになります。

この理由は、自動車の所有権の問題があるためです。仮に金融機関などを通じて自動車ローンを組んだ場合、購入した自動車の所有権はこの時点で購入者に移りません。これを「所有権留保」と言って、すべての自動車ローンを完済した後に完全に自分の所有物になるといった仕組みになっています。

そのため、自動車ローンを組んでいる途中で任意整理をした場合、その自動車の所有権はクレジット会社やディーラーの所有になっているため、乗っている自動車を所有者に返さなければならないといったイメージになります。

自動車の所有権移転の流れ

自動車ローンの流れ

こちらは余談ですが、自動車ローンをすべて完済しますとクレジット会社等から所有権を自分に変更するための必要書類が届きます。自動車の所有権は自動的に切り替わるのではなく、あくまでも自動車ローンの完済後に、自身で名義変更手続きをしなければならないことを知っておく必要があります。

自動車ローンを任意整理した場合における所有権移転の流れ

自動車ローンの流れ

住宅ローンの場合は、土地や建物の所有権が不動産業者から自分に移転しますが、自動車ローンの場合は、自動車の所有権が移転せずそのままのため、結果として自動車ローンを途中で返済できなくなってしまった場合は、本来の所有者であるクレジット会社やディーラー等に戻ることになるわけです。

特定調停の場合

任意整理は、弁護士や認定司法書士を代理人として立て、貸金業者等と交渉しながら借金解決を図る方法ですが、これらの代理人を立てず、自分自身で裁判所に赴いて貸金業者等と交渉を進めながら借金解決を図ることを特定調停と言います。

基本的な借金解決の方法は任意整理も特定調停も変わらないため、特定調停で債務整理をする場合も前項で解説した任意整理と内容が同じと考えて差し支えありません。

個人再生の場合

個人再生とは、裁判所に対して再生計画案というものを作成、提出し、これが認可されることで現在抱えている債務(借金)が大幅に減額される手続きのことを言います。

個人再生が任意整理や特定調停と大きく異なる特徴として、「すべての借金を債務整理の対象としなければならない」点が挙げられます。

つまり個人再生をするということは、現在抱えている自動車ローンを含めて債務整理を行うことになりますので、結果として「1-1-2.自動車ローンを任意整理した場合における所有権移転の流れ」と同じ結果になることが考えられ、自動車を手離さなくてはならなくなります。

場合によっては、自動車の所有権留保がない自動車ローンであったり、自動車の所有権がディーラーであった場合などにおきましては、自動車を手離さなくても良いこともあるようですが、個人再生の手続き前において所有権が誰になっているのか、所有権留保が自動車ローンの約款で確約されているのかなどを確認しておく必要があります。

これらの内容は、どちらかと言えば専門分野と呼ばれる内容になりますので、自己で調べて行動に移すよりも専門家である弁護士等へ自動車を残したい旨を相談して適切なアドバイスを求める方が負担も軽く最も望ましいと考えることができます。

自己破産の場合

自己破産を裁判所へ申し立てる場合においては、個人再生と同様にすべての借金を債務整理の対象としなければなりません。

したがいまして、現在抱えている自動車ローンも自己破産手続きに含まれることになるのと同時に、「原則として」自動車を手離さなくてはなりません。

ここで「原則として」といった表現をした理由は、自己破産手続きにおける財産の分類は、「自由財産」「差押禁止財産」「換価しない財産」といったように財産が細かく分類され、場合によっては必ずしも自動車を手離さなくても良い場合があるためです。次項では、これら3つの財産について解説していきます。

自由財産とは

自由財産とは、最低限の生活をするために保有することが認められている財産のことを言います。自由財産には、具体的に以下の様なものがあります。

  • 99万円までの現金
  • 生活のための衣類
  • 寝具
  • 家具
  • 台所用具
  • 1ヶ月分の食料や燃料
  • 実印
  • 位牌
  • 子どもの学習用具

上記の他、裁判所の裁量によって自由財産の範囲が拡張されることもあります。

自由財産の中でも「99万円までの現金」について、金額が多いのでは?と感じられた方も、もしかしたらおられるかもしれませんが、これは破産者の所得の低さや貯蓄の無さを考慮しています。保有できる現金が少なければ、不意の出費が発生した場合にヤミ金融などからお金を借りる原因にもつながり、その結果、借金に依存するだけでなく本来の生活再建を図る目的が果たせないといった悪循環に陥ることになります。

このような事態を避けるために、多めの現金保有が認められていると考えることができます。

差押禁止財産とは

差押禁止財産とは、その名の通り、自己破産の申し立てが裁判所から認可された場合においても差し押さえられない財産のことを言います。民事執行法第131条では、差押禁止財産について以下の様に規定しています。

  • 1.債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
  • 2.債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
  • 3.標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
  • 4.主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
  • 5.主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
  • 6.技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
  • 7.実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
  • 8.仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
  • 9.債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
  • 10.債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
  • 11.債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
  • 12.発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
  • 13.債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
  • 14.建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

出典 民事執行法 第131条(差押禁止動産)より引用

上記14項目の規定にざっと目を通すと何かに気付いた方もおられると思います。実は、先に解説した自由財産と内容が重複しておりますが、差押禁止財産も自由財産であると破産法で規定されています。

また、個別具体的な事情についてまで対応されていない法律であるため、実務上の実際問題として「預貯金」「生命保険の解約返戻金」「退職金」「自動車」についての取り扱いに問題が生じることがあります。

そこで、それぞれの裁判所が行う、「債務者財産の換価基準」について「現金以外」は、各々の裁判所が工夫して運用することが委ねられることになっています。

つまり、自己破産を申し立てした裁判所が、後述する「換価しない財産」として認定した場合は、没収されず、手元に残しておくことができるといった意味になります。

換価しない財産とは

自己破産は、すべての財産が没収されるイメージを多くの方がお持ちですが、「自由財産」「差押禁止財産」そして、これから解説する「換価しない財産」があるため、最低限、生きていくための財産を手元に残して人生の再スタートをすることができます。

換価しない財産は、自己破産を申し立てる裁判所によって異なる可能性がありますが、具体例として以下の財産は、手元に残すことが可能だと思われます。

  • 残高が20万円以下の預貯金(複数ある場合は合計金額)
  • 解約返戻金の見込金額が20万円以下の生命保険(複数ある場合は合計金額)
  • 処分見込金額が20万円以下の自動車
  • 居住用家屋の敷金
  • 電話加入権
  • 支給見込金額の「8分の1相当」が20万円以下である場合の退職金債権

換価しない財産に「処分見込金額が20万円以下の自動車」が含まれていることが分かります。これを言い換えますと、年式が古くて売却しても20万円以下にしかならない自動車や、いつ廃車になってもおかしくないような自動車であれば没収される可能性は、ほぼ無いと考えることができます。

地方など、住んでいる地域によって自動車は生活に欠かすことのできない財産であることを踏まえますと、自動車が没収されるか、没収されないかは大きな問題となることは言うまでもありません。実際に似たような問題を抱えた事例がありますので、次項ではこの事例について紹介していきます。

クレジットで購入した中古車を生活上の理由から残せるのか

Aさんは5年前に夫と離婚し、現在、2人の子どもと生活しています。様々な諸事情から今回、破産申し立てをするにあたり3年前に購入した中古自動車を残せるか気になっています。現状とAさんの希望は以下の通りです。

  • 自動車ローンを現在も抱えている
  • 普段の生活で自動車を毎日利用しているため無くなってしまうと困る
  • 売却価格は、数万円程度
  • 実父が保証人になっているため迷惑をかけたくないと思っている

事例における検討結果

自己破産を裁判所に申し立てることで認可された場合、現状から考えられることは、現在抱えている自動車ローンをAさんは今後返済しなくとも良いことになります。

また、Aさんの自動車を残したいといった希望とは別に、自動車の売却価格が数万円程度であることから「換価しない財産」として手元に残しておくことが可能だと思われます。ただしあくまでも、所有権留保をしているクレジット会社やディーラー等がこの自動車を引き上げないことが前提であると考えられます。

それ以前の問題で、今回の事例ではAさんの実父が保証人になっていることから、クレジット会社は保証人である父に対して自動車債務の返済を「一括」で求めてくると思われます。これについて父が一括返済に応じられない場合、クレジット会社は自動車の引き上げをする可能性もあり得ますが、価値が数万円程度の自動車をわざわざ引き上げるよりも、保証人である父から分割払いを履行してもらう方が得策だと考えるかもしれません。

いずれにしましても価値の低い自動車を手元に残したいというAさんの希望は叶えられる可能性は高いものの、保証人である実父に多少なりとも迷惑をかけてしまうことは免れそうにありません。

また、自己破産後の定期収入で、少しずつクレジット会社に分割払いするということであっても自動車を引き上げることはしないと考えることもできますが、Aさんの実父の保証債務は、「ローンを完済しない限り残る」ことになる点には注意が必要です。

やはり、専門家である弁護士に委ねるのが最も望ましいことは言うまでもありません。

まとめ

本記事では、債務整理後における自動車ローンの取り扱い等について解説してきました。改めて本記事の要点を以下に箇条書きでまとめて紹介していきます。

  • 任意整理、特定調停は自動車ローンを含めても含めなくともよい
  • 個人再生、自己破産は自動車ローンを含めなければならない
  • 債務整理に自動車ローンを含めた場合、原則として自動車は引き上げられる
  • クレジット会社やディーラー等の「所有権留保」が自動車引き上げに重要な役割を持つ
  • 処分見込金額が20万円以下の自動車は「換価しない財産」として扱われるのが一般的
  • 自動車ローンの保証人がいる場合は、自己破産後の保証債務は保証人に継承される
  • 自己破産はすべての財産を失うわけではなく、最低限必要な財産を残すことができる

法律上認められている借金解決方法は、4つの債務整理から成り立っていますが、これらの借金解決方法は、それぞれメリットとデメリットが当然に存在します。様々な事情から多くの借金を抱えてしまったとして、それをやり直すことは十分可能ですが、4つの債務整理のうち、どの手続きが最も適した方法なのかを一般の人が判断するのは困難です。

安易に自己破産して抱えている借金はすべて免除といった甘い考えで通る程、世の中は甘くない訳でありますから、やはり専門家である弁護士へ相談して現状分析と対策を提案してもらうのが望ましいと考えることができます。

自動車の事例で紹介したように、保証人が絡む場合は、自分だけでなく相手の人生にも大きな影響を与えることになりますので、やはり債務整理の方法を自分自身で選択するのは不適切です。

目先の費用だけに捉われるのではなく、将来も見据えた広い視野で物事を考え、借金解決につなげるといった余裕を持っておきたいものです。

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