
監修者
元弁護士ライター 福谷 陽子
多重債務の解決策には、「借金の一本化(おまとめローン)」と「債務整理」があります。
借金の一本化は、複数の借金を一つにまとめることで返済の管理がしやすくなる点がメリットです。また低金利のローンを利用できれば、おまとめ前より支払う利息も少なくなります。
一方、債務整理は借金を減額、もしくは全額免除してもらう方法です。信用情報に傷がつくデメリットはありますが、借金自体が減るため返済は確実に楽になります。
多重債務に苦しんでいる場合、どちらが本当にお得なのかをさまざまな観点から比較してみましょう。
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目次
借金の一本化(おまとめ)のメリットとデメリット
借金の一本化とは、複数の借金を一ヵ所でまとめることです。
たとえばA・B・Cの3社から計100万円を借り入れている場合、新たにD社で100万円のローンを組むことで3社に借金を一括返済し、その後はD社だけに返済していくことになります(もしくは、A・B・Cのうちもっとも低金利の会社で追加の融資を受け、そこでまとめる方法もあります)。
このように借金を一本化するためのローンを「おまとめローン」と呼びます。消費者金融にもおまとめローンを扱っているところがありますが、せっかく一本化しても金利が高いとあまり意味がないため、おまとめ先には金利の低い銀行を選ぶことが一般的です。
借金を一本化するメリット
借金を一つにまとめることには以下のようなメリットがあります。
借金の管理が楽になる
借金を一本化すると、その後は一社だけに返済していけばいいため、管理が楽になる点が大きなメリットです。
支払う利息が減る可能性がある
借金をおまとめしても元金自体は変わりませんが、現在の借入先より金利の低いローンでおまとめできれば、利息分を減らすことはできます。
たとえば3つの消費者金融から借り入れていた場合、低金利の銀行で借金を一本化することで支払総額を少なくすることが可能です。
ブラックリストに載らない
おまとめローンは「借金の借り換え」ですので、債務整理と異なり信用情報に影響はありません。その後も引き続き、クレジットカードや各種ローンを利用できます。
借金を一本化するデメリット
一方、借金の一本化には以下のようなデメリットもあります。
借金自体が減るわけではない
借金を一本化しても、元金が減るわけではありませんので、金利の低いおまとめ先を慎重に選ばなければ返済の負担は変わりません。
特に最近は法律が改正されて、消費者金融でも利息制限法の上限金利(年15~20%)がきちんと守られているため、銀行でおまとめしても支払う利息に大きな差が出ないケースが増えています。
逆に利息が増えてしまうこともある
借金を一本化したことに安心して毎月の返済額を少なくしすぎてしまうと、結果的に利息を多く支払うことになる可能性があります。
借金の利息は、金利だけではなく返済期間にもよります。おまとめ前より月々の返済額が少ないと、それだけ返済期間が長くなってしまうため、支払う利息がかえって増えてしまうこともあるのです。
新たな借金を作りやすくなる
おまとめローンを利用すると、以前の借入先の利用枠が空くため、そこでまた新たな借り入れをしてしまうリスクがあります。
また、おまとめローン自体の枠も大きいため、借り増しをして負債を増やしてしまう可能性もゼロではありません。
借金を一本化したなら、追加の融資を受けないよう厳しく自制することが大切です。
債務整理のメリットとデメリット
債務整理は、法的に認められた借金の整理方法です。自分でできるものもありますが、法律のプロである弁護士に依頼したほうが手続きはずっと楽ですし、成功率も上がります。
個人の借金の債務整理は、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4つです。
任意整理・特定調停・個人再生は借金を減額するための手続き、自己破産は借金を全額免除してもらうための手続きになります。
債務整理のメリット
債務整理のおもなメリットは以下の通りです。
借金の額が減る
おまとめローンと異なり、債務整理では借金の支払額が確実に減る点が最大のメリットです。
どれだけ減るかは、行なう債務整理や借金の額などによって異なりますが、基本的には以下のようになります。
債務整理の種類 | 減額される金額 |
---|---|
任意整理 | 遅延損害金および利息 |
特定調停 | |
個人再生 | 借金の額に応じて、元金の最大80~90% |
自己破産 | 税金や健康保険料などを除くすべての借金 |
たとえば任意整理の場合、損害遅延金と利息をカットしてもらえますので、残った元金を3~5年の間で返済していくことになります。
過払い金請求ができる
弁護士に債務整理を依頼した場合、まずは利息制限法に基づいて引き直し計算を行ない、過払い金が発生していないかどうかを調べます。
過払い金があれば借金の額が減りますので、返済はさらに楽になりますし、場合によっては借金がすべてチャラになることもあります。
債務整理のデメリット
一方、債務整理には以下のようなデメリットがあります。
信用情報に傷がつく(ブラックリスト入りする)
どのような債務整理を行なった場合でも、信用情報機関に事故情報が登録されるため、いわゆる「ブラックリスト入り」することになります(過払い金で借金がなくなったケースを除く)。
事故情報の登録期間は、任意整理と特定調停では5年間、個人再生と自己破産では5~10年間です。この間は新たにクレジットカードやローンを利用することができません。
弁護士費用がかかる
債務整理を弁護士に依頼した場合、弁護士費用を支払う必要があります。
特に個人再生と自己破産は手続きが複雑なため、30~50万ほどかかることが一般的です。
ただし最近は分割払いに対応する法律事務所も増えていますし、収入や資産などの条件を満たせば、「法テラス」で弁護士費用を立て替えてもらうこともできます。
生活に支障が出る場合がある
債務整理の中でも、借金が全額免除される自己破産を行なった場合は、信用情報に傷がつく以外にも生活に何らかの支障が出る可能性があります。
たとえば一定以上の財産がある場合は「管財事件」となり、20万円以上の価値のある住宅や車などは原則手放さなくてはいけません(ただし現金は99万円までの所持が認められています)。
また管財事件の場合、自己破産の手続き中は引っ越しや長期の旅行を自由にできないことになっています(破産法37条1項)。する場合は、裁判所の許可が必要です。
さらに、一部の仕事に影響が出る点にも注意が必要です。自己破産の申し立てをしてから免責決定が下りるまでの間(およそ3~6ヶ月間)に限られますが、弁護士や司法書士などの「士業」や、警備員、生命保険募集員、古物商などの職に就くことが制限されます。
また、個人再生と自己破産を行なった場合は、国が発行する「官報」という新聞のようなものに氏名と住所が掲載されます。
ただし、官報を毎日チェックするのはごく一部の人に限られますので、通常は特に問題ないことがほとんどです。
借金の一本化VS債務整理の比較まとめ
借金の一本化と債務整理の違いをわかりやすく表でまとめてみました。
借金の一本化 | 債務整理 | |
---|---|---|
元金 | 変わらない |
|
利息 | おまとめ先によっては 減る可能性がある | 原則カットされる |
返済先 | 一つになる | 複数のまま (ただし弁護士が「代行弁済」をしてくれる場合、各社への返済額を毎月一括で弁護士に振り込むことは可能。また自己破産の場合は返済の義務自体がない) |
返済期間 | 借入先による | 原則3~5年間 |
信用情報への影響 | なし | あり(5~10年間) |
仕事への影響 | なし | 自己破産の場合、免責決定が下りるまで一部の職業が制限される |
費用 | なし | 弁護士費用や実費がかかる |
過払い金 | もどらない | あれば請求できる |
一本化では元金も利息も変わらず支払い続ける必要がありますが、生活への影響がない点がメリットです。安定した収入があり、借金の額がそれほど多くないのであれば検討してみるのも悪くないかもしれません。
ただし、借金をまとめられたことに安心して月々の返済額を少なくしすぎたり、追加の借り入れをしたりすると、さらに状況が悪化するリスクもあります。
また、すでに負債がふくらみすぎている人は一本化しても根本的な解決にならないため、思い切って債務整理を行なったほうが建設的です。
債務整理は、信用情報に傷がつくというデメリットはあるものの、返済額を確実に減らせますし、約束通りに返済していけば3~5年できっちりと完済することができます。
多重債務で首がまわらない状態の人は、安易に一本化する前に、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。