「自然災害」が原因で借金が返せなくなった場合の債務整理

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

地震や津波などの自然災害に遭うと、それまで返済ができていた借金も返済が苦しくなることが多いです。

自然災害で家がなくなったら、仕事どころではなくなりますし、個人事業者などの場合にも、事業を行っていた店舗そのものがなくなってしまうこともあります。

会社員の場合にも、会社の営業再開の見通しが立たなかったり、会社そのものが倒産してしまうこともあります。また、高額な住宅ローンを組んで家を購入している場合などもあります。

自然災害によって借金が返済出来なくなった場合、どのような解決方法があるのでしょうか?今回は、自然災害で借金が返済出来なくなった場合の「債務整理」による解決方法をご紹介します。

自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインとは

地震などの大災害が起こると、多くの人が借金返済できなくなります。大災害によって仕事が失われることも多いですし、仕事がなくならなくても、一定期間は仕事ができなくなることも多いからです。

自然災害が起こると、日常生活を取り戻すまでの期間は、借金の支払どころではなくなってしまうことが普通です。

ガイドラインの概要

日本は複数のプレートが密集している地震大国です。平成23年3月11日には東日本大震災が。平成28年4月には、熊本で大きな地震被害がありました。このことによっても、たくさんの人が借金返済出来なくなる可能性があります。

そこで、国は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」というガイドラインを策定しました。

このガイドラインは、自然災害によって被害を受けた人が債務の支払ができなくなった場合に、専門家の力を借りて経済的に再生する手助けをするためのガイドラインです。

具体的には、専門の登録弁護士が債権者と交渉をして、借金の整理をしてくれるという手続きです。この手続きも債務整理の1種です。

ガイドラインによる債務整理手続きを利用するためには、債務者が「被災者」であることの証明が必要です。

具体的には、災害によって収入がなくなったり、家がなくなるなど、生活の基盤に大きな影響が出てしまっている状態であることが必要となります。その証明書としては、「罹災証明書」や「被災証明書」などがあります。

ガイドラインの利用方法

自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインにもとづいて借金の整理をする場合、まずは、借金をしている借入先の金融機関などに対して、ガイドラインにもとづいた債務整理をすることを申し出ます。

そして、このガイドラインを利用出来る自然災害の被災者であると認定されたら、ガイドラインにもとづいた支援ができる専門家である「登録支援専門家」に債務整理の依頼をします。

登録支援専門家には、弁護士や税理士、公認会計士、不動産鑑定士がいますが、債務整理手続をする場合には弁護士に依頼することになります。

ガイドラインにもとづいた債務整理手続きを依頼すると、弁護士は借入先の金融機関と交渉をして、ガイドラインに従った内容で、債務者が支払える内容の「調停条項案」を作ります。

そして、その調停条項案に同意するかどうかを相手方金融機関に打診して、合意が得られるなら簡易裁判所に特定調停の申立をします。そうすると、事前に合意していたとおり、金融機関との間で特定調停の合意ができるという方法です。

この方法によって、自然災害の被害者が効果的に住宅ローンや事業ローンなどの整理をすることができます。

まずは被災を証明する資料(罹災証明書や被災証明書など)を持って、借入先の金融機関に相談に行きましょう。

債務整理とは

国もガイドラインを策定するなどして、自然災害の被災者支援をすすめていますが、借金を整理するためには、ガイドラインを利用しなければならないわけではありません。通常の債務整理手続きを利用する事も可能です。

通常の債務整理手続きでは、被災者であることの証明は要りませんし、どの弁護士にも相談したり依頼することができます(ガイドラインにもとづく債務整理の場合には、登録支援専門家弁護士のみです)。

債務整理には、いくつか種類があって、それぞれ特徴があり、債務者の状況に応じた適切な手続きを利用すればたいていの借金問題は解決できます。

以下で、債務整理の種類と利用方法を説明します。

任意整理

債務整理には、任意整理という手続きがあります。任意整理とは、消費者金融会社やクレジットカード会社、銀行などの債権者と直接交渉をすることによって、借金返済総額と返済方法を決め直す手続きのことです。

任意整理をすると、債権者との合意後の将来利息をカット出来るので、債権者への総支払額がかなり減額できます。また、支払期間を延ばすことによって、月々の借金返済額を減らすことも可能です。このことによって借金の支払いが楽になるので、完済まで支払を継続していけるようにもなります。

任意整理後の支払期間は、債権者との合意後だいたい3年から5年程度にすることが多いですが、話し合いの内容によってはそれより長くすることも可能です。

たとえば、どうしても7年返済にしないと支払が困難などの事情がある場合には、債権者との話し合いによって返済期間を7年に延ばしてもらうことなども可能です。

特定調停

債務整理方法の1つとして、特定調停という手続きがあります。特定調停とは、簡易裁判所に申立をして、債権者と話し合う方法のことです。

特定調停でも、任意整理と同様、借金返済総額と返済方法について話し合って決め直します。上記で説明した自然災害の被災者のための債務整理についてのガイドラインも、この特定調停を利用した債務整理方法です。

特定調停を利用した場合も、調停成立後の将来利息はカット出来ることが多く、返済期間を調整することによって月々の借金返済金額を減らすことができます。

また、簡易裁判所の調停委員や裁判官が話し合いの間に入ってくれるので、債権者と直接交渉する必要がなく、債務者が自分1人でも利用しやすいです。

特定調停後の支払期間は原則的に3年程度にすることが多いですが、債権者との話し合いによってそれより長い期間を設定することも可能です。

個人再生

債務整理方法の1つとして、個人再生という手続きがあります。個人再生とは、裁判所に申立をして、借金返済額を大幅に減額してもらう手続きのことです。たとえば借金額が1,500万円以下の場合には、借金返済額は最大5分の1にまで減額してもらえます。

個人再生には「住宅資金特別条項」という制度もあります。住宅資金特別条項を利用すると、住宅ローンがある人の場合にも、住宅ローンだけはそのまま支払を続けて他の借金だけを減額してもらうことによって、借金やローンの返済が大幅に楽になります。

このように、個人再生は住宅ローンがある人でも自宅を守りやすいという大きなメリットがあります。被災後住宅ローンを抱えていてローンや借金の返済が苦しい場合には、とても有効な債務整理方法です。

個人再生後も債権者への支払い義務が残ります。個人再生後の支払期間は、原則的に3年間ですが、3年での支払が困難な事情がある場合には、5年に延ばすことも可能です。

自己破産

債務整理方法として、自己破産もあります。債務整理と言えば自己破産と思う人も多いくらい、自己破産はポピュラーな債務整理方法です。

自己破産は、裁判所に申立をしてすべての借金返済義務を0にしてもらうことができる手続きです。どれだけ多額の借金があっても自己破産すると完全に借金返済を免除してもらえるので、大変助かります。

たとえば借金額が1,000万円でも1億円でも自己破産をすればすべての借金支払い義務がなくなるのです。

被災して莫大な金額の住宅ローンが残ってしまってどうしようもない場合などにも、自己破産すると残ローンの支払の必要がなくなるので、大変有効な解決方法になります。ただし、自己破産をすると、目立った財産を持っている場合にはいったんすべて失うことになります。

たとえば、20万円を超える金額の預貯金や生命保険、車や不動産などの財産を持っている場合には、これらはすべて手放すことになります。自宅がある場合には、住宅ローンがあってもなくてもその自宅はなくなってしまいます。

ただ、自己破産をしても、生活に最低限必要な財産については手元に残すことができます。また自己破産後に受け取った給料などの財産をとられることもありません。

自己破産したからと言って、生活していけなくなる心配などはしなくて良いので、借金返済ができない場合に自己破産することをさほど恐れる必要はありません。

収入がなくなったら自己破産できる

自然災害に遭って被災してしまった場合、どのような状況であればどのような債務整理手続きが向いているのでしょうか?

まず、災害に遭って収入がまったく無くなってしまうケースがあります。個人事業者の場合には、店が壊れてしまったり、取引先も被災してなくなってしまうなどして、廃業を余儀なくされるケースがあります。会社員でも、いつ会社に戻れるかわからなかったり、会社が倒産してしまうこともあるでしょう。

このように、完全に無収入になってしまった場合には、自己破産を検討すべきです。自己破産以外の他の債務整理手続きでは、手続き後に一定の返済義務が残るので、まったくの無収入の場合には利用出来ないからです。

ある程度の財産がある場合には、その財産からしばらく借金の支払を続けて様子を見ることも可能ですが、財産がまったくなくて無収入になってしまった場合などには、自己破産によって失うものもありません。

たとえば、被災したことによって車や家などもなくなり、手持ちの財産がまったくなくなって借金だけが残ったケースなども考えられます。そのような場合には、躊躇することなく自己破産しましょう。

住宅ローンがあるなら個人再生を利用出来る

被災してしまった場合、住宅ローンを負っているケースがあります。この場合、被災によって収入が少なくなったりなくなったりして、一時的に住宅ローンの支払いが苦しくなる可能性があります。このように、住宅ローンをかかえていて借金返済が苦しい場合には、個人再生の利用がおすすめです。

個人再生を利用すると、先に説明した通り住宅資金特別条項を利用出来るので、住宅ローンはそのまま支払を続けたまま他の借金だけを減額できるので、家を守りやすいです。

個人再生では、自己破産と違って手持ちの財産がなくなることもありません。預貯金や生命保険、車などの財産があっても、そのまま借金だけを減額してもらうことができるのです。

ただし、個人再生を利用するためには安定した収入が必要になります。会社員でも個人事業者でも個人再生は利用出来ますが、まったくの無収入になってしまった場合には個人再生はできないので、注意が必要です。

収入や財産があるなら任意整理も可能

被災して一時的に借金の返済が苦しくなった場合でも、完全に失業したわけではないケースがあります。たとえば、しばらくして復旧したらまた会社に戻れるケースや、落ち着いたらまた事業を再開しようとしている場合などです。

このように、完全に失業したわけではない場合には、任意整理の利用もおすすめです。また、ある程度の財産があって、しばらくの間はその財産から債権者への支払ができそうな場合にも任意整理はおすすめです。

任意整理をする場合には、手続き後債権者への返済が必要になりますので、全くの無収入では利用出来ませんが、支払の見込みがある場合には利用出来ます。

今は仕事をしていなくても、債権者との合意後何とか貯金などから支払を継続して、その後就職するなどして収入を得て支払ができるようになるのであれば、任意整理は可能です。

任意整理をする場合にも、住宅ローン債権者を外して手続きをすれば、住宅ローン支払い中の自宅がなくなることもありません。債権者と直接交渉する任意整理は、とても柔軟に借金問題を解決できるので便利です。

自分で手続きするなら特定調停を利用する

債務整理をする場合には、債権者との交渉が必要になったり裁判所への申立が必要になったりするので、素人の債務者が自分で手続きするのは難しく、弁護士などの専門家に相談して依頼することが多いです。しかしそうすると、弁護士費用がかかってしまいます。

被災後債務整理をする場合、弁護士費用をかけずに自分で債務整理する方法としては、特定調停がおすすめです。特定調停では、簡易裁判所の調停委員や裁判官が間に入ってくれるので債務者が自分でも手続きしやすいですし、手続き自体もさほど難しくないので自分でもすすめやすいです。

特定調停を自分で行った場合、かかる費用は1万円程度で済むこともあります。

(参考:特定調停にかかる費用と相場

まとめ

今回は、自然災害で被災して借金返済ができなくなった場合の債務整理による解決方法を解説しました。国も、被災者の債務整理についてのガイドラインを定めるなどして、問題に取り組んでいますが、各種の債務整理を賢く利用すると、借金問題を解決することができます。

あきらめずに、まずは弁護士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

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