
人生においてお金を借りる時、そのお金を借りるための「動機」が必ずあります。
たとえば、住宅を購入するための「住宅ローン」、自動車を購入するための「自動車ローン」、お金の使い道を問わない「フリーローン」など実にさまざまです。
いわゆるサラ金(消費者金融)からの借入は、基本的に「フリーローン」と同じ性質の借金であり、急なお金が必要な時や交際費が必要な時などは利用しやすいメリットがあります。
一方で自分のお金と認識しづらいデメリットがあるため、2社、3社と複数の貸金業者からお金を借りて、気付けば自転車操業によって借金が雪だるま式に膨れ上がっているといったことも決して珍しくありません。
このような人を一般に「多重債務者」と呼びますが、この多重債務者を食い物にする整理屋・紹介屋・買取屋・提携専門家という存在がいることを読者のみなさまはご存知でしたか?本記事では、これらの悪質業者と業者に騙されないための対策方法について分かりやすく解説していきます。
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目次
多重債務者の現状について知る
冒頭で多重債務者について、2社、3社と複数の貸金業者からお金を借りて、気付けば自転車操業によって借金が雪だるま式に膨れ上がっているような人と記載しました。
実際に、多重債務者と推定される人は、「3ヶ月以上にわたって借金の返済が滞っている人」「3社以上の貸金業者などから借入のある人」とされています。そして、この多重債務者の人数は少なく見積もっても200万人から300万人はいるとされてきました。
多重債務に陥る原因には、「生活苦」「収入減」「低所得」「倒産やリストラによる失業」「事業の失敗」「浪費・ギャンブル」など実にさまざまですが、その多くは、消費者金融やクレジットカードのキャッシングを過剰に利用した個人をはじめ、中小企業の事業主などが大半を占めています。
中小企業の事業主の場合、事業を営むための運転資金が銀行などの金融機関から融資してもらえないことによって、商工ローン(中小企業向けのサラ金)を利用したことによる返済不能に陥るケースが多いようです。
多重債務者の自己破産理由と月収の関係を知る
多重債務者が、自転車操業によって借金が雪だるま式に膨れ上がってしまった場合、最後には夜逃げや自己破産したり、最悪の場合、自殺したりする事例も見受けられます。本項では、多重債務者が自己破産する理由と月収の関係を以下の表にまとめて紹介します。
多重債務者の自己破産理由
自己破産理由 | 割合 |
---|---|
生活苦・低所得 | 24.10% |
保証債務や第三者の借金の肩代わり | 10.87% |
事業資金 | 8.55% |
病気や医療費 | 8.29% |
失業や転職 | 7.94% |
保証以外の借金返済 | 6.87% |
住宅購入 | 6.42% |
給料の減少 | 5.39% |
生活用品の購入 | 4.49% |
教育資金 | 3.13% |
浪費や交際費 | 2.39% |
ギャンブル | 1.55% |
名義貸し | 0.84% |
冠婚葬祭 | 0.65% |
投資の失敗 | 0.48% |
出典 新日本法規出版 個人債務整理実務マニュアルより一部引用
すべての割合を足しても100%になりませんが、ここでは参考として、あり得る自己破産理由を掲載しております。多重債務者の自己破産理由に「浪費や交際費」「ギャンブル」といった個人の欲求を満たす理由が上位になっていないのが意外と思われた人も多いかもしれません。
あくまでも自己破産の理由は、1つの理由で自己破産しているのではなく、複数の自己破産理由が重複してもたらしているものだと考える方が自然なのかもしれません。
たとえば、自己破産理由をよく見てみますと、「生活用品の購入」がありますが、常識的に考えてみますと、生活用品の購入だけで自己破産するとはなかなか考えにくいのではないでしょうか?
しかしながら、「住宅購入」「生活用品の購入」に引き続いて「給料の減少」「病気や医療費」が偶発的に重なってしまったらどうでしょうか?これなら自己破産も十分考えられます。
ただ1つ伝えられるとするならば、上記表の自己破産理由は、自己防衛できることが実にたくさんあることに気付けると思います。
「借金の保証人には絶対にならない」「計画的な住宅購入をする」「計画的なお金の管理をする」など、ごく当たり前のことをするだけで自己破産は避けることができると考えられます。
多重債務者の月収
自己破産申し立て時の月収 | 割合 |
---|---|
5万円未満 | 20.24% |
5万円以上、10万円未満 | 16.61% |
10万円以上、15万円未満 | 23.63% |
15万円以上、20万円未満 | 17.26% |
20万円以上、25万円未満 | 8.55% |
25万円以上、30万円未満 | 6.05% |
30万円以上 | 6.53% |
出典 新日本法規出版 個人債務整理実務マニュアルより一部引用
上記表から月収20万円未満の収入が低い人の自己破産割合が極めて高いことが見て取れます。これは当然の結果であると言えますが、多重債務に陥っている場合、毎日の生活をしながら複数の貸金業者に借金返済を続けるのは困難であることは容易に予測がつきます。
多重債務者を食い物にする悪質業者とは
本項では、本記事のメインとなる「整理屋」「紹介屋」「買取屋」「提携弁護士」といった悪質業者の詳細について解説していきます。多重債務者は、これら悪質業者によって今抱えている借金以上に大きな債務を抱える、いわゆる「二次被害」に遭う人も少なくありません。
この二次被害の原因の1つに挙げられるのが、NPO法人(特定非営利法人)の認証を得た上で「借金の悩み相談や解決相談」を広告宣伝し、多重債務者を集めるといった手口です。
このような手口を使われてしまえば、多重債務者をはじめとした借金に悩みを抱えている人は、何を信じて、どこに相談すれば良いのか、すべてが疑心暗鬼になってしまいます。こちらにつきましては後述致しますが、まずは悪質業者の詳細から個別に解説を始めていきます。
整理屋とは
整理屋とは、弁護士や司法書士といった専門家でないのにも関わらず、弁護士等の名義を利用して債務整理事件を取り扱う業者のことを言います。
整理屋が弁護士等の名義を利用できるのには、弁護士や司法書士といった専門家と「提携」しているためであり、これらの専門家事務所に容易に入り込めるといった仕組みになっています。
さらに整理屋は、提携事務所の事務員や事務長といった肩書で債務整理を行うため、はたから見ると、専門家事務所の補助スタッフが債務整理を行っているように捉えることができるわけです。
整理屋が儲けるプロセス
整理屋は、弁護士や司法書士といった専門家と提携し紹介料を受け取ることで多重債務者を集めます。そして、専門家の名義を利用して債務整理を実行することで、結果として過払金などの報酬を依頼した多重債務者から受け取ります。
この受け取ったお金の一部について名義貸しをした弁護士や司法書士といった専門家に対して「名義貸料=謝礼」として支払う仕組みです。
専門家が儲けるプロセス
専門家は、整理屋に対して多重債務者などの紹介料を支払います。整理屋は多重債務者を集め、専門家の名義を利用して債務整理を実行します。そして、儲けた分の一部を専門家に対して名義貸料として報酬を支払い、専門家はこれを受け取ります。
余談になりますが、専門家が受け取る名義貸料は、月額50万円から200万円位が相場と言われており、専門家からすると「何もしなくとも入ってくるお金」になるのです。今さら言うまでもありませんが、これは弁護士法へ違反しており、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。
まとめますと、整理屋は債務整理の報酬で儲け、専門家は名義貸しで儲けるといった仕組みです。
紹介屋とは
紹介屋とは、多重債務者が利用していない他の消費者金融やクレジット業者などを紹介することで借金をさせて儲ける業者のことを言います。
紹介屋が儲けるからくりには、信用情報機関の「ブラックリスト」の仕組みが大きく関係しており、原則として信用情報機関が管理しているブラックリストに載ることでお金を借りることが数年間できなくなります。
多重債務者からすると、複数の貸金業者からお金を借りていることが原因の債務超過になっている中で、新たにお金を貸してくれる業者を探すのは至難の業です。
このような状態で紹介屋からお金を貸してくれる業者を紹介してもらえたとしたら、多重債務者の方々はどのように感じるのでしょう?
紹介屋の働きかけによってお金を借りられると知ったら、きっと素晴らしい業者だと思う人も中にはおられることでしょう。しかし、残念ながらこれが紹介屋のやり口なのです。
あたかも自分たちが貸金業者に働きかけたことによってお金を借りられるようになったと偽り、高額な紹介料をピンハネするのが紹介屋のやり口です。
多重債務者から借入金額の20%から50%もの高額な紹介料を騙し取っただけでなく、この多重債務者に債務整理をさせるために、提携している弁護士や司法書士を紹介することで多重債務者1人あたり5万円から10万円という紹介料をこれらの専門家から受け取る紹介屋もいます。
買取屋とは
買取屋とは、多重債務者がクレジットカードで購入した新幹線の切符や高速道路券などの「金券」をはじめ、パソコンなどの「電化製品」を多重債務者から安く下取りすることで、それらを「転売」して儲けている業者のことを言います。
少しでも「現金化したい」といった弱みに付け込まれている多重債務者からすると、損をしていることが分かっていたとしても、クレジットカードで購入した金券や商品を下取りしてもらってお金に替えたいと考えます。
買取屋からすると、この心理を逆手にとった悪質なやり方で不当に利益を得ていることになり、「詐欺罪」であることは言うまでもありません。
多重債務者からすると、一時的にお金を手にすることができるものの、後程、クレジットカードで購入したこれらの代金請求がされることになるため、結果として借金を膨らませてしまう原因になってしまいます。
提携専門家とは
提携専門家とは、先に解説しました「整理屋」や「紹介屋」といった悪質業者と提携している弁護士や司法書士といった専門家のことを言います。
債務整理は、弁護士や司法書士が「業」として行うことが許されておりますが、特に最近では、「認定司法書士」と呼ばれる専門家が「整理屋」や「紹介屋」といった悪質業者と提携しているのも増加しています。
司法書士の場合、債務整理を行うためには「認定司法書士」でなければならないことになっているため、どの司法書士でも債務整理を手掛けることができるわけではありません。
債務整理を依頼する債務者側からしますと、当然、専門家である弁護士や認定司法書士が手掛けてくれているものだと考えるのが普通です。
最初から悪質業者と提携しているなど考えませんが、残念ながらそのような専門家がいるのも紛れもない事実であるからこそ、債務整理を依頼する専門家選びは重要だと言い切ることができます。
借金の相談はどこにするのが「確実」なのか
ここまで悪質業者と提携専門家について解説してきましたが、このようなことを知ってしまうと、「いったい誰に借金の相談をするのが確実なのか?」といった疑問が生じると思います。本項では、いくつかの借金相談ができる箇所を挙げて簡単な解説を交えていきたいと思います。
弁護士
弁護士に債務整理の相談をしたり依頼するのは、やはり基本的なパターンと言えます。すべての弁護士が債務整理を得意としているわけではありませんので、あくまでも債務整理の実績や経験などを調べてから問い合わせることがポイントになります。
認定司法書士
債務整理を扱える司法書士は、認定司法書士と呼ばれ、弁護士に比べて債務整理の扱える金額が決まっております。一般に弁護士へ依頼するよりも費用が安価と言われますが、貸金業者と訴訟(裁判)になった時は対応ができませんので、別途、弁護士に依頼する費用や手間がかかります。
弁護士会や司法書士会
各都道府県の弁護士会へ問い合わせて、債務整理の得意な弁護士を紹介してもらうのは、より「確実」な方法と言えるでしょう。弁護士会としてもおかしな弁護士を紹介してしまうことは、信用を失墜し兼ねません。悪質業者との提携弁護士を紹介されるなんてことがあったら大問題になることを考えますと、最も無難な方法と思われます。
親族が直接知り合いの弁護士
親族に直接知り合いの弁護士がいる場合、悪質業者と提携している弁護士である可能性は低いかもしれません。付き合いがある弁護士であれば、どのような人なのかも把握できていることを考えますと、安心できます。
まとめ
本記事では、悪質業者である整理屋・紹介屋・買取屋、そして提携専門家の存在について解説しました。
とても酷な表現になってしまいますが、消費者金融や銀行系カードローンからお金を借りることができない程、多重債務の状態であることは「末期」の状況であると言わざるを得ません。
つまり、これ以上お金を借りることができない中で、もし、「お金を借りられる」「今よりも楽になれる」といったうまい話があった場合、これは「やばい」と感じることができなければなりません。
もちろん、そのように考えることができないからこそ、このような悪質業者に騙されてしまう被害が後を絶たないわけですが。
このうまい話に乗るか、乗らないかといった分岐点が重要なポイントになりますが、あえて言わせていただくとすれば、無駄に抗うよりも素直に債務整理を選択してリセットするのが正しい選択でしょう。
これは、人生の無駄な時間、苦しい返済、悪質業者からの二次被害といったことから解放されるための「合法手段」なのです。最後に改めて伝えさせていただきます。
うまい話、都合の良い話、楽な話はお金の貸し借りに存在しません。あるとすれば詐欺、悪質業者絡みであることをしっかりと肝に銘じておくようにしましょう。それがあなた自身を守るための確かな情報なのです。