特定調停と過払い金請求

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

キャッシングなどを利用しすぎて返済が苦しくなってしまったら、特定調停を利用して借金を整理することがありますが、特定調停の手続き中に「過払い金」が見つかることはあるのでしょうか?特定調停でも、利息制限法への引き直し計算をするので、過払い金が発見されることがあるように思えます。

また、特定調停の手続き中に過払い金が発生していることが判明した場合、過払い金請求をすることは可能なのでしょうか?その場合、どのような手続きが必要になるのかも知りたいところです。弁護士に依頼している場合と自分で対応している場合とで違いがあるのかなどの問題についても理解しておく必要があります。

そこで今回は、特定調停と過払い金請求の関係について解説します。

特定調停手続き中に過払い金が見つかることがある

借金整理の手続きである特定調停ですが、特定調停手続き中に過払い金が見つかることがあるのでしょうか?まずは、特定調停手続きと過払い金請求の関係について見てみましょう。

特定調停では、債権者から取引履歴を取り寄せて、それを利息制限法に引き直し計算します。

すると、利息制限法を超過した利率での取引があった場合には、当然払いすぎた利息が発生してきます。これを借金の元本から差し引くと、借金が減額されますが、払いすぎ利息の金額が大きくなってくると、元本を完済してもさらに払いすぎ利息の方が大きくなり、過払い金が発生することになります。

このように、特定調停手続きにおいては取引履歴を利息制限法に引き直し計算する過程があるので、その段階で過払い金が見つかることがあるのです。

特定調停手続きでは過払い金請求ができない

特定調停手続きの最中に過払い金が発見された場合、どのようにしてその過払い金を請求すればよいのでしょうか?せっかく裁判所の調停を利用して債権者と話し合いをしているのですから、同じ特定調停手続きを利用して過払い金請求をすることができないのかと考えるのが普通でしょう。

しかし、実際には特定調停手続き内では過払い金請求をすることはできません。特定調停は、あくまで借金の支払い方法を決め直す手続きであり、相手方に対してお金を請求するための手続きではないからです。

よって、特定調停手続き中に過払い金が見つかっても、同じ特定調停手続き内では過払い金請求ができず、別の方法で過払い金請求をする必要があります。

特定調停で過払い金請求が見つかった場合の請求方法

特定調停手続き内では過払い金請求ができないとしたら、具体的にはどのような方法で発見された過払い金を請求すればよいのでしょうか?

その方法は、いくつか考えられますので、以下で順番に説明します。

調停外で請求する

特定調停中に過払い金が見つかった場合には、まずは、調停外で相手方貸金業者に対して直接過払い金請求する方法があります。

特定調停とは無関係に、相手方業者に過払い金の計算書と過払い金請求を送って、個別に交渉をするのです。

この場合、すでに特定調停内で利息制限法引き直し計算自体は終わっていることが多いので、過払い金請求書を作成して相手方債権者に送って過払い金の返還金額や返還方法を交渉することになります。

調停外で相手方業者との間で過払い金返還についての合意ができたら、その内容に従った合意書を作成して、過払い金の返還を受けます。

過払い金請求訴訟を起こす

特定調停中に過払い金が見つかった場合の過払い金請求方法としては、相手方業者に対して過払い金請求訴訟を起こす方法もあります。

過払い金請求の交渉の段階を飛ばして、いきなり裁判手続きを利用するということです。過払い金請求訴訟は特定調停とは全く別の手続きになります。

特定調停と過払い金請求訴訟では、利用する裁判所も違いますし、担当の裁判官も異なりますし、手続きの進行方法などもすべて異なります。もちろん、裁判の期日が開催される日にちや法廷なども別々です。

過払い金請求訴訟を起こした場合には、特定調停の期日と過払い金請求訴訟の期日の両方に、裁判所に出廷しないといけないことになります。

過払い金請求訴訟によって、訴訟手続き内で相手方業者と和解ができた場合や、相手方業者へ支払い命令の判決が出たら、その内容に従って過払い金の返還を受けることができます。

特定調停後に過払い金請求出来る

特定調停が終わった後に過払い金請求ができるのかという問題もありますが、この点も問題なくできます。

ただし、この場合後述する、「5-2.片面的精算条項とは?」で説明するように、特定調停の合意内容や合意方法によっては過払い金請求権が封じられてしまうおそれがあるので、注意が必要です。

そのような問題がないように、きちんと配慮をして特定調停の調停条項を作った場合には、特定調停後に過払い金請求ができますし、その場合の請求方法も、基本的に上記の2つの方法から選ぶことになります。

自分で対応するか弁護士に依頼するか

特定調停手続き中に過払い金が発見された場合、自分で特定調停に対応している場合と弁護士に特定調停を依頼している場合とで違いはあるのでしょうか?また、特定調停自体は自分で手続きしていても、過払い金請求のみを新たに弁護士に依頼することはできるのかも知りたいところです。

以下で、確認してみましょう。

すべて自分で対応する場合

まずは、自分で特定調停に対応して、自分で過払い金請求もする場合の方法です。この場合、上記のように、2つの過払い金請求方法のうちから1つを選択して、過払い金請求をすることになります。

自分で調停外で過払い金請求をする場合には、自分で過払い金請求書を作成して相手方業者に送り、それに従って自分で相手方業者と過払い金の返還金額と返還方法を交渉することになります。

自分で過払い金訴訟を起こす場合には、自分で過払い金請求訴訟の訴状を作成して書類を整えて、裁判所に申立をしなければなりません。そして、自分で過払い金請求訴訟の期日に出廷して、裁判手続きを進めなければなりません。

このように、過払い金請求をする場合には、特定調停とは完全に別の対応が必要になるので、すべてについて自分で対応しようとすると、とても手間がかかります。

特定調停を弁護士に依頼している場合

次に、特定調停を弁護士に依頼している場合の対処方法です。この場合には、特定調停手続きにおいて過払い金が見つかったら、当然に弁護士がその過払い金請求をしてくれることが普通です。

調停外で過払い金を請求するか、訴訟を起こして過払い金請求をするかについては、弁護士が適切な方をアドバイスしてくれるので、それに従ってすすめていくことになります。

弁護士が対応してくれる場合には、過払い金請求手続きを自分ですすめる必要はないので、債務者としては手間が省けて楽になります。

過払い金請求のみ弁護士に依頼する場合

特定調停を自分で手続きしている場合に過払い金が発見された場合、特定調停手続きは自分で続けたまま、過払い金請求手続きのみを弁護士に依頼することができるのでしょうか?

このようなことができたら、手間がかかる過払い金請求を弁護士が代わりにしてくれるので、請求者としては手間が省けてとても楽になります。

実際に、特定調停を自分で進めている場合に、過払い金請求だけを弁護士に依頼することは可能です。その場合、弁護士に過払い金請求の相談に行って、債権者名や連絡先、概算の過払い金請求金額などを伝えて、過払い金請求に対応してもらうことになります。

このとき、調停外で直接請求する方法をとるか、過払い金請求訴訟を起こすかどうかは、そのときの状況に応じて弁護士が適切な判断を下してくれるでしょう。

過払い金請求を弁護士に依頼した場合には、過払い金請求手続きはすべて弁護士が代わりにしてくれますので、請求者は自分で手間をかける必要はありません。

ただし、特定調停を自分でしているので、特定調停については、今まで通り自分で対応して手続きを進めていく必要があります。

弁護士に依頼すると過払い金請求の分の費用もかかる

弁護士に過払い金請求手続きを依頼した場合、当然過払い金請求の分の弁護士費用がかかります。

特定調停自身を弁護士に依頼しており、追加で過払い金請求も弁護士に依頼した場合には、過払い金請求手続きの分の弁護士費用がかかりますし、特定調停を自分でしている場合に過払い金請求のみを弁護士に依頼する場合にも、やはり過払い金請求の分の弁護士費用がかかります。

過払い金請求の弁護士費用の相場は、着手金が2万円~4万円、報酬金が、返ってきた過払い金の15%~20%程度になります。

弁護士に過払い金請求手続きを依頼する場合には、これらの過払い金請求にかかる弁護士費用の問題もきちんと考えておく必要があります。

参考:過払い金請求にかかる費用(手数料)

特定調停の行方は?

特定調停の最中に過払い金が見つかった場合、調停外や訴訟を起こして過払い金請求をすることになりますが、もともと継続していた特定調停については、どのようにして解決することになるのでしょうか?そのまま放置しておくこともできないので、問題になります。

以下では、過払い金が発見された場合のもともとの特定調停手続きの行方について、説明します。

調停内容は「借金なし」

特定調停手続き中に過払い金が発見された場合にも、何らかの形で特定調停の合意をしなければなりません。この場合の特定調停の合意内容は、どのようなものになるのでしょうか?

この場合には、特定調停で話し合いをしようとしていた借金は既に完済されていることになります。よって、特定調停で合意する場合には、「もう借金は残っていない」という内容のものにする必要があります。

つまり、申立人と相手方業者との間で「すでに借金は完済されており、支払い義務は残っていない」という内容の調停条項を作成する必要があるのです。このように定めておけば、その後相手方業者からさらに借金の返済を求められる心配がなくなります。

片面的精算条項とは?

過払い金が発生している場合に特定調停の合意をする場合、注意しなければならない問題があります。それは、調停条項の定め方です。

通常、調停で合意をする場合には、「申立人と相手方との間には、本調停条項に定める以外に互いに債権債務がないことを確認する」という内容の精算条項を入れることが多いです。

これは、調停が終わった後、当事者が「やっぱりこのような問題もあった」などと言い出して、問題が蒸し返されることを防ぐためのものです。

よって、特定調停で調停合意をする場合にも、通常の場合には上記の精算条項を入れます。しかし、過払い金請求ができるケースでは、上記のような精算条項を入れることは問題です。

「互いに債権債務がない」としてしまうと、申立人の相手方に対する過払い金請求権もないことになってしまうからです。上記のような精算条項を作ってしまうと、後になって過払い金請求をすることができなくなるおそれがあります。

そこで、過払い金請求をする場合の精算条項については「申立人は相手方に対して債務を負担していないことを確認する」という片面的なものにする必要があります。これを、「片面的精算条項」と言います。

片面的精算条項なら、申立人が相手方業者に対して支払い義務がないことが確認されるだけで、相手方の申立人に対する債務については何ら触れられていないので、過払い金請求権が封じられることもありません。

このように、後に過払い金請求を予定している場合に特定調停をまとめる場合には、通常の精算条項ではなく片面的な精算条項にしてもらわなければならないので、注意が必要です。

まとめ

今回は、特定調停と過払い金請求手続きについて解説しました。特定調停手続き中には、借金を利息制限法に引き直し計算するので、その過程で過払い金が発見されることがあります。しかし、特定調停手続き内では過払い金請求をすることはできません。

過払い金請求をするには、別途調停外で相手方に対して直接過払い金請求するか、過払い金請求訴訟を起こす必要があります。

過払い金請手続きを弁護士に依頼することも出来ます。弁護士に依頼すると、請求者としては手間が省けて楽になりますが、その分過払い金請求についての弁護士費用がかかることには注意が必要です。

特定調停中に過払い金が発見されて、過払い金請求をする場合であっても、特定調停自体を終わらせなければなりません。

この場合には、特定調停の条項の作り方に注意が必要です。具体的には、通常の精算条項ではなく、申立人は相手方に対して債務を負担していないとする片面的な精算条項にする必要があります。そうしないと、後に過払い金請求しようとしても、過払い金請求が封じられてしまうおそれがあります。

今回の記事を参考にして、適切な方法で、賢く特定調停や過払い金請求を行いましょう。

匿名OK・無料!借金減額シミュレーター

ws000000

街角相談所-法律-無料シュミレーターは氏名、住所などを入力しなくても利用できる「完全匿名性」の借金解決サービスです。

「いきなり弁護士事務所に電話するのは少し抵抗がある...。」という方も利用しやすくなっています。


無料シミュレートしてみる

債務整理に強い弁護士

無料相談:0120-422-009

弁護士法人サンク総合法律事務所」は月600件以上の相談実績がある債務整理に強い弁護士事務所です。

全国対応・相談無料・365日24時間対応・初期費用0円・分割払いOK・弁護士費用が払えないなどの相談も可能です。


無料相談:0120-422-009