特定調停の申立先(管轄裁判所)を調べる方法

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

特定調停債務整理の1種ですが、特定調停は債務整理手続きの中でも、債務者が自分で手続きをすすめやすい債務整理方法として有名です。

しかし、特定調停は、どのような事案でも、全国どこの裁判所でも手続きができるわけではありません。事案によって適切な裁判所に申立をしないと、特定調停を受け付けてもらうことすらできないのです。このことを裁判所の「管轄」と言います。

特定調停を自分ですすめる場合には、裁判所の管轄も、自分で調べる必要が出てきます。それでは特定調停の正しい管轄裁判所は、どのようにして決まるものであり、またどのようにして調べれば良いのでしょうか?

今回は、特定調停の申立先の管轄裁判所を調べる方法について解説します。

特定調停の管轄裁判所とは

そもそも、裁判所の管轄とはどのようなものなのでしょうか?

特定調停を始めとして、どのような裁判手続きにも、正しい管轄があります。どの裁判所でもどのような事件でも扱えるというわけではないのです。

たとえば、自己破産個人再生は「地方裁判所」で申立をしますし、離婚訴訟や離婚調停は「家庭裁判所」で申立をします。

同じことが特定調停でも言えます。特定調停にも、その事案によって適切な裁判所の管轄があるので、正しい管轄の裁判所を調べて申立をする必要が出てくるのです。

管轄を間違えるとどうなるのか?

特定調停を申し立てる場合には、正しい管轄の裁判所に申立手続きをする必要がありますが、もし間違って管轄のない裁判所に申立をしてしまったら、どうなるのでしょうか?

この場合には、原則的にはその事件の申立は受け付けてもらえず、手続きが開始しない扱いになります。具体的には、そもそも申立書類を持っていっても受け付けてもらえないことになりますし、もし裁判所が書類をいったん受け取ったとしても、管轄違いが判明したら書類は返されることになります。

ただし、裁判所によっては、自庁処理と言って、管轄がない状態でも、その裁判所で事件を扱って処理してくれることもあります。

また、もし自庁処理をしてもらえなかったとしても、裁判所が管轄違いで書類を返してくる場合には、正しい裁判所を聞けば教えてもらうことができます。このようにして教えてもらった正しい裁判所に申立をすれば、特定調停の手続きをその裁判所で進めていくことが出来ます。

よって、管轄を間違って特定調停の申立をしてしまっても、取り返しのつかない失敗になるというわけではありません。ただ、特定調停の手続きが開始するのが遅れてしまったり、無駄な手間がかかることが問題になります。

特定調停の「事物管轄」

特定調停での正しい裁判所の管轄について、具体的に見ていきましょう。

まず、裁判所の管轄には、裁判所の種類に関する管轄があります。これは、取り扱う事件の種類によって、どの裁判所がその事件を処理するかという問題です。

たとえば、140万円を超える金額の金銭請求事件であれば地方裁判所になりますし、自己破産や個人再生であればやはり地方裁判所になります。

このような事件の種類に応じた裁判所の種類に関する管轄のことを、「事物管轄」と言います。事物管轄は、特定調停でも存在します。具体的には、「簡易裁判所」になります。

よって、特定調停を申し立てる場合には、簡易裁判所に申立をする必要があります。地方裁判所や高等裁判所、家庭裁判所などに申立をしても、特定調停を受け付けてもらうことはできないので注意が必要です。

特定調停の「土地管轄」

特定調停などの裁判所の管轄には、上記のような事物管轄以外に、「土地管轄」もあります。

以下で、具体的に見てみましょう。

土地管轄とは

土地管轄とは、全国にある裁判所の中で、どこの裁判所で手続きをするかという問題のことです。

たとえば、「簡易裁判所」とひと言で言っても、日本全国にはたくさんの簡易裁判所があります。特定調停を利用したいからと言って、これらのうちどの簡易裁判所で申立をしても良いわけではありません。特定調停をすすめるためには、正しい土地管轄の簡易裁判所を利用する必要があるのです。

たとえば、土地管轄が東京簡易裁判所の場合に、大阪簡易裁判所に申立をしても、特定調停を進めてもらうことはできないことになります。

具体的な土地管轄の内容

土地管轄の定め方

特定調停の土地管轄は、どのように定められているのでしょうか?

まず、原則的には、債権者の住所地や居所などが所在する地域を管轄する簡易裁判所が、特定調停の管轄裁判所になります

相手方債権者が法人の場合には、本店所在地や支店所在地、営業所などがある住所にある裁判所が土地管轄の裁判所になります。

本店所在地や支店所在地、営業所などが多数ある債権者の場合には、どれでも良いので、そのうち1つの管轄裁判所を利用することができます。

たとえば東京と千葉、静岡の3カ所に支店や営業所がある裁判所の場合には、東京簡易裁判所でも、千葉簡易裁判所でも、静岡の簡易裁判所でも特定調停を申し立てることができます。

このように、複数の裁判所に管轄が認められる場合には、どこに申立をしても良いので、債務者の通いやすい便利な場所にある裁判所に申立をすると良いでしょう。

土地管轄の調べ方

特定調停を申し立てる際の裁判所の土地管轄の調べ方は、どのようにすれば良いのでしょうか?

この場合には、上記のように、債権者の住所地が管轄裁判所になります。よって、まずは債権者の住所地を調べる必要があります。

債権者の住所地(本店所在地や支店所在地、営業所等)は、債権者の「現在事項証明書」を取り寄せれば、記載があるのでわかります。現在事項証明書は、法務局で申請をすれば誰でも取り寄せることができます。

そして、その地域をどの簡易裁判所が管轄するかについては、裁判所のホームページ内に全国の土地管轄に関する情報が掲載しているので、これにあてはめて調べることができます。

このように、特定調停の管轄を調べる場合には、まずは債権者の現在事項証明書を見て債権者の住所を確認し、それを裁判所の土地管轄にあてはめて正しい裁判所を知るというステップを踏むことになります。

相手方が複数の場合

特定調停では、債権者が1社ということは少なく、たいていは複数の債権者を相手にして申立をします。このような場合、それぞれの債権者に対して、別々に特定調停を申し立てなければならないのでしょうか?

債権者の住所が同じ地域であれば特に問題は起こりませんが、異なる管轄地域の債権者がいる場合に、それぞれの債権者の住所地で別々に特定調停を申し立てないといけないなら大変な手間になってしまいます。

そこで、以下では特定調停で複数の債権者を相手に申立をする場合の裁判所の土地管轄がどうなるのかについて、説明します。

1つの裁判所で同時に審理できる

まず、特定調停で複数の債権者を相手に申立をする場合には、それらの事件をまとめて1つの裁判所で申立をして、手続きを進めることが出来ます。債権者の住所が同じ裁判所の管内であればもちろんのこと、異なる裁判所の管内であっても、1つの裁判所で手続きが可能です。

よって、債権者の住所地がばらばらでも、いろいろな裁判所で別々に申立をしなければならないという手間は発生しません。

ただしそうだとすると、どこの裁判所で特定調停を申し立てればよいのかという問題が発生します。これについては、債権者のそれぞれの住所地に、管轄が共通するものがあるかどうかによって異なってきます。

そこで、以下では場合分けをして説明します。

同じ管轄の債権者が複数いる場合

特定調停を申し立てる場合の債権者の住所地について、同じ土地管轄の債権者が複数いる場合を考えてみます。

この場合には、債権者の数が最も多い地域を管轄する簡易裁判所に特定調停を申し立てることになります。

たとえば、債権者が7社あって、そのうち3社が東京に営業所があり、2社は千葉に営業所があり、2社は大阪に営業所があるとします。

この場合には、もっともたくさんの債権者の営業所がある東京の簡易裁判所に対して特定調停の申立をして、手続きを進めていくことになります。

千葉や大阪にしか営業所がない債権者も、東京簡易裁判所にて同時に手続きを進めていくのです。債務者が別途千葉や大阪でも特定調停の申立をしなければならないことはありません。

債権者の管轄がばらばらな場合

特定調停を申し立てる場合に債権者が複数いる場合、債権者の住所地の管轄裁判所がばらばらになっているケースもあります。このような場合には、どこの裁判所が適切な土地管轄になるのでしょうか?

この場合には、債権者の住所地を管轄する裁判所であれば、特定調停の申立ができます。たとえば、債権者が5社あって、東京と大阪、名古屋、千葉、静岡にそれぞれ住所地がある場合には、上記の5つの裁判所のどこでも申立をすることができます。

ただ、実際には消費者金融やクレジットカード会社などの多くは東京や大阪などの大都市に支店があります。よって、これらの地域の裁判所に申立をすれば、管轄が認められないことはまずないでしょう。

管轄の合意ができる

特定調停では、事物管轄としては簡易裁判所が手続きをしますし、土地管轄としては、債権者の住所地を管轄する裁判所が手続きをします。

ただ、これらの管轄については、当事者の合意によって、別の裁判所を利用することが可能になります。たとえば、債権者と合意ができている場合には、簡易裁判所ではなく地方裁判所で特定調停を進めることも可能です。

具体的には、債権者との間で「東京地方裁判所を特定調停の管轄とする」という合意があれば、本来東京簡易裁判所が管轄裁判所である事案でも、東京地方裁判所で特定調停を進めることが出来るようになるのです。

土地管轄についても同じです。

債権者と債務者との間で、土地管轄についての合意があれば、その合意された裁判所が特定調停を管轄することになります。

すなわち、債権者の本店や支店の所在地、営業所の所在地などがない場所であっても、債権者との合意ができればその裁判所で特定調停を進めることが出来ます。

たとえば、本来の土地管轄が静岡簡易裁判所である事案でも、債権者との間で「特定調停の管轄裁判所を東京簡易裁判所とする」という管轄の合意があれば、東京簡易裁判所で特定調停手続きを進めることが出来ます。

このような管轄合意をして本来とは別の裁判所で手続きを進める場合には、債権者との間で「管轄合意書」という書類を作成して裁判所に提出する必要があります。

もし債権者との契約書において、予め管轄の合意ができている場合には、その契約書の写しを提出して、管轄の合意があることを説明する必要があります。

管轄がわからない場合の対処法

特定調停での管轄裁判所がどうしてもわからない場合には、どのようにすれば良いのでしょうか?以下ではその対処法を解説します。

裁判所に相談する

特定調停の管轄がわからない場合には、まずは裁判所に相談してみましょう。自分で調べて、「ここの裁判所ではないか?」と思った場合には、その裁判所に問合せをして聞いてみるのです。

もし合っていれば「そのまま申立をしてください」と言われるでしょうし、間違っていれば正しい管轄裁判所を指摘してもらえるでしょう。

弁護士に相談する

特定調停の管轄裁判所がわからない場合、弁護士に相談する方法も有効です。弁護士の法律相談を利用して、正しい管轄裁判所についてアドバイスを受けましょう。

このとき、どの債権者を相手にするのかや、それらの債権者の現在事項証明書を持参して、弁護士が特定調停の管轄を判断できるようにすることが重要です。弁護士の無料相談を利用すれば、費用はかからないので負担も軽くて安心です。

まとめ

今回は特定調停の管轄について説明しました。

特定調停を利用する場合には、正しい管轄の裁判所に申立をする必要があります。裁判所の管轄には、事物管轄と土地管轄があります。事物管轄とは、事件の種類による管轄のことで、土地管轄とは地域による管轄のことです。

特定調停の場合には、事物管轄は簡易裁判所になり、土地管轄は、債権者の住所地を管轄する裁判所になります。

債権者が複数いる場合には、まとめて1つの裁判所で特定調停手続きを進めることができます。この場合、最も多くの債権者の住所地を管轄する裁判所で申立をすると良いでしょう。

もし債権者の住所がばらばらな場合には、債権者の住所地を管轄する裁判所であればどの裁判所でも申立ができます。

また、裁判所の管轄については、管轄の合意ができます。管轄合意があれば、本来の管轄裁判所以外の裁判所でも特定調停の手続きが可能になります。裁判所の管轄がわからない場合には、裁判所に確認したり、弁護士に相談してみると良いでしょう。

今回の記事を参考にして、正しい管轄の裁判所で特定調停を利用して、賢く借金問題を解決しましょう。

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