中小企業等対象「特定調停スキーム」とは?

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

特定調停というと、個人が借金した場合の債務整理手続きの1種のようなイメージがありますが、実際には、特定調停の利用者は個人とは限りません。

株式会社などの法人でも特定調停を利用する事ができるのです。中でも、近年は中小企業の事業再生を目的にして「特定調停スキーム」が注目を集めています。特定調停スキームとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

実際、多くの中小企業が経営不振に悩んでいますが、事業再生を目的とした特定調停スキームを利用すると、そのような問題が解決できる可能性があるので、中小企業の経営者は、特定調停スキームについて知っておく必要があります。

そこで今回は、中小企業を対象にした「特定調停スキーム」について解説します。

特定調停スキームとは

中小企業の事業再建を目的にした特定調停の利用方法に、特定調停スキームがあります。

特定調停スキームとは、どのようなものなのでしょうか?

中小企業金融円滑化法の終了

特定調停スキームは、中小企業金融円滑化法が終了することを見越して策定された中小企業の事業再生方法です。

リーマンショックなどによる大きな不景気が押し寄せて多くの中小企業が事業不振に苦しんだことから、平成21年12月4日、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(通称:中小企業金融円滑化法)という法律が施行されました。

この法律によって、中小企業の経営が苦しくならないように金融機関が貸し付け条件や返済方法などについて、柔軟に対応するように定められていましたが、平成25年3月末をもって、中小企業金融円滑化法は期限を迎えてしまいました。

そこで、これに代わる中小企業の事業再生方法として、特定調停を利用した特定調停スキームがすすめられるようになったのです。

特定調停を利用して中小企業の借金を整理できる

特定調停スキームは、中小企業が特定調停を利用して事業再生を図るための手続きです。

特定調停スキームでは、経営不振に陥った中小企業が金融機関を相手にして、特定調停を申し立てて借入金の返済額や返済方法を話し合います。

そして、金融機関などの同意が得られれば、その内容で借金額が減額されて、返済方法も変更することができます。

このようにして、特定調停を利用して中小企業の借金を整理することができるのが、特定調停スキームの骨子です。

想定されている債務者の事業規模

特定調停スキームは、どのような企業でも利用出来るわけではありません。特定調停スキームには、利用を想定されている債務者の事業規模があります。

具体的には、おおむね年商が20億円以下で、負債総額が10億円以下の中小企業が特定調停スキームの利用を想定されています。

これより年商が多かったり、負債額が大きい企業の場合には、通常の民事再生手続きなどの別の債務整理方法を利用することになります。

特定調停スキームのメリット

特定調停スキームを利用して事業再生を図る場合のメリットをご紹介します。

短期間で終了する

特定調停スキームを利用すると、短期間で負債の問題を解決することができます。

特定調停スキームを利用する場合には、通常は弁護士に相談に行って手続きをすすめてもらいます。弁護士に依頼すると、弁護士が調査をして債権者と調整をした上で、特定調停スキームの申立をしてくれます。

この場合、特定調停の調停期日が開催されている予定回数は、1~2回程度です。よって、特定調停スキームを利用する場合には、全体を合わせても、だいたい半年から1年程度で終了することが多いです。

このように、早期に借金問題を解決できることによって、債務者企業の手間や労力も省けますし、経営者の精神的にも大変楽になります。

費用の補助が受けられる

特定調停スキームを利用するメリットとしては、費用が安く抑えられることが挙げられます。

特定調停スキームを利用する場合には弁護士費用がかかりますが、そもそも、通常の民事再生手続きを利用する場合などよりは、特定調停スキームを利用した場合の弁護士費用の方が安いことが多いです。

特定調停スキームの弁護士費用の額は債権者の数や依頼する企業の規模などによって大きく変わりますが、数百万円程度になることが普通です。

さらに、特定調停スキームを利用する場合には、弁護士費用の補助を受けることができます。

特定調停スキームを利用する場合に、認定支援機関によって認定を受けた弁護士に手続きを依頼した場合には、かかる弁護士費用の3分の2の金額までの補助を受けることができるのです。この場合の上限金額は200万円になります。

信用を失わずに済む

特定調停スキームのメリットとしては、周囲の信用を失わずに済むと言うことも挙げられます。特定調停スキームを利用する場合には、その手続きは調停の相手方である金融機関にしか知られることはありません。その他の取引先などに対して債務整理が知られることがないのです。

もし、民事再生などを利用してしまった場合には、取引先などに知られずに手続を進めることは難しくなります。すると、当然「事業再生した企業」として信用を失うことにつながってしまいます。

これに対して、特定調停スキームの場合には、相手方の金融機関にしか手続きのことを知られませんので、それ以外の関係者などに経営不振を知られることがないのです。

このように周囲の信用を失わずに済むので、特定調停スキームで借金を整理した後も、そのまま継続して事業運営をしやすくなります。

債権者の同意が得られやすい

債務整理手続きを利用する場合には、金融機関と話し合って借金返済方法などについて合意していくことがあります。

特定調停スキームを利用すると、他の任意整理などの手続きを利用するよりも、債権者の同意が得られやすいです。

特定調停スキームは、事前に弁護士や公認会計士、税理士や中小企業診断士などがしっかり調査をしますし、裁判所を利用した透明性のある手続きです。よって、相手方である金融機関も、不正が行われているなどの不信感を持ちにくくなります。

特定調停スキームは、上記のとおり、中小企業円滑化法に代わるスキームなので、金融機関としてもなるべく合意をした方が良いというベースの考え方もあります。

よって、特定調停スキームを利用すると、債権者の合意が得られやすく、借金を整理しやすいというメリットがあります。

特定調停スキームの注意点

特定調停にはさまざまなメリットがありますが、反面利用の際の注意点もあります。

合意が得られなければ解決できない

特定調停スキームは、私的整理の1種です。私的整理とは、裁判所を介した強制的な手続きではなく、あくまで債権者と債務者の「合意」が必要になる債務整理方法だということです。

よって、特定調停スキームを成功させるためには、債権者の同意が必要になります。特定調停スキームを利用すると債権者の同意が得られやすいとは言っても、必ずしも同意が得られるわけではありません。

特定調停スキームを利用しても、債権者に借金の減額や借金返済期間の延長などについて、強制出来るわけではないのです。同意が得られなければ特定調停スキームで借金問題を解決することはできません。

特定調停スキームが失敗した場合には、そのときには民事再生などの別の債務整理手続きを利用する必要があります。

このように、債権者の合意が得られないと借金問題の解決ができないことは、特定調停スキームのリスクとなります。

事前の同意が必要になる

特定調停スキームを利用する場合には、金融機関などの債権者から、事前に同意を得ておく必要があります。

特定調停スキームの期日自体は1,2回程度で終了することが予定されているため、申立前の事前にしっかり再建計画を金融機関と話し合っておく必要があるのです。この事前手続きをきちんとしておかないと、特定調停スキームは成功しません。

このように、債権者の事前の同意が必要になることは、個人の特定調停利用の場合と大きく異なります。

また、事前に金融機関と交渉をして借金返済計画の変更について同意を得るためには、事前調査をしっかりして、根拠のある返済計画を立てて交渉することが重要です。

そのためには、中小企業の再生に長けた弁護士を探して特定調停スキームを依頼することが必要です。

特定調停スキームの進め方

特定調停スキームを利用したい場合の、特定調停スキームの進め方を順番に説明します。

事前準備(聞き取りや事前調査)

特定調停スキームを利用する場合には、まずは事前準備が必要です。特定調停スキームでは、調停期日自体は1,2回で終了されることが予定されているために、事前準備が非常に重要です。

特定調停スキームを利用したい場合には、弁護士に依頼することがほとんど必須になります。そこで、事業再生に長けた弁護士に相談に行きましょう。そして、認定支援機関による認定を受けている弁護士を探して手続きを依頼します。

すると、弁護士による調査が開始されます。具体的には、聞き取り調査や資料の収集や精査、債務者企業のデューデリジェンス(企業の適正価格の調査)などを行います。

このとき、税理士や公認会計士、中小企業診断士なども協力して調査が進められることになります。債務者企業としては、このような弁護士などの専門家による調査にはきちんと協力する姿勢が大切です。

事前調整

特定調停スキームを進める際、弁護士は、申立前に金融機関との間で事前に調整を行います。

具体的には、事前に金融機関に債務者企業の現状や、事業再生のスケジュールを組み直すことを説明して、債権者の理解を得ます。そして、再生計画に協力してもらえるように依頼します。

そして、弁護士は経営改善計画案などの書類を作成して、債権者の金融機関などに提示をします。そして、その内容について説明をして、金融機関などの意見も聞きながら内容を調整していきます。これらの手続きを繰り返しながら、経営改善計画案の内容を詰めていきます。

そして、債権者との間で合意ができたら、特定調停の調停条項案(調停の合意内容の案)を作成して、それについて金融機関に説明して、調停期日に債権者による合意を得られるように準備を整えます。

調停申立

弁護士が債権者と交渉をして、経営改善計画についての合意が整ったら、その時点で特定調停の申立をします。このときの申立は、債権者が複数でも一件の申立で済みます。

また、特定調停スキームの管轄の裁判所は、債権者の金融機関の住所です。具体的には、本店所在地や支店、営業所などがある場所の簡易裁判所です。また、この場合、地方裁判所に併置された簡易裁判所が適切であるとされています。

調停期日の開催

特定調停スキームの申立をすると、調停期日が開催されます。このときには債権者も出席します。

特定調停スキームでは、事前に金融機関の同意を得ているので、調停期日自体ではその確認と同意を得ることが目的になります。問題がなければ、調停が成立します。調停期日の開催回数は、1,2回程度です。

1回目には、調停委員から金融機関の意向を確認して、合意が得られれば調停が成立します。2回目に持ち越された場合には、期日間に弁護士と金融機関が再度調整や協議を重ねて、2回目での調停成立を目指します。

合意ができれば2回目で無事に調停が成立することになりますし、もしそれでも合意ができなければ、調停は不成立になります。

調停成立と支払開始

特定調停スキームで調停が成立したら、その後調停調書が裁判所から送られてきます。すると、その内容に従って借入金を返済していくことになります。

このようにして、特定調停スキームで借金を整理して、中小企業が事業再生を図ることが可能になります。

まとめ

今回は、中小企業の事業再生を目的とした特定調停スキームについて解説しました。特定調停スキームとは、中小企業金融円滑化法の終了にともなって、中小企業の事業再生を目的として策定された債務整理方法です。

特定調停スキームを利用すると、短期間で借金の整理ができますし、弁護士費用の補助などもありますので、費用が安く済みます。

ただし、特定調停スキームでは債権者に合意を強制することができず、合意が得られなければ失敗に終わります。

特定調停スキームを利用する場合には、認定支援機関の認定を受けた弁護士に手続きを依頼して、事前調査や事前調整をしっかりしてもらった上で、特定調停スキームの申立をします。

調停期日の開催自体は1,2回で終了し、調停が成立します。その後はその内容に従って返済を続けていけば問題ありません。このように、特定調停スキームを利用すると、効果的に中小企業の借金を整理できます。

事業再生に長けた良い弁護士を探して、上手に特定調停スキームを利用しましょう。

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