特定調停の「調停調書」

執筆者

元弁護士ライター 福谷 陽子

借金がかさんで返済が苦しくなったら、特定調停という手続きを利用して解決するケースがあります。特定調停は、借金を整理するための債務整理の1種です。

特定調停を利用すると、借金の支払が楽になるので、完済するまで何とか返済を続けていくことができるようになる可能性があります。

特定調停をして債権者と合意ができたら、裁判所で「調停調書」という書類が作成されます。特定調停の調停調書には、どのようなことが書かれているのでしょうか?

また、特定調停の調停調書にはどのような効果があって、それを守れないときにはどうなるのかなども知っておく必要があります。

そこで今回は、特定調停の調停調書について解説します。

特定調停を利用すると調停調書が作られる

特定調停とは

特定調停を利用する場合には、調停調書という書類が作成されます。この調停調書とはどのような書類なのでしょうか?この問題は、そもそも特定調停がどのような手続きなのかということと深く関係しますので、以下ではまず特定調停手続きについて説明します。

特定調停とは、簡易裁判所で調停委員や裁判官に間に入ってもらいながら債権者と話し合いをすすめて、借金の返済金額や返済方法を決め直す手続きのことです。

特定調停を利用すると、借金の将来利息をカットしてもらって総返済額を減らすことができたり、借金返済期間を延ばすことによって、月々の借金返済の負担を減らすことができます。このことによって、苦しかった借金返済が楽になるのです。

調停調書とは

それでは、特定調停で作られる調停調書とはどのような書類なのでしょうか?これは、特定調停で調停が成立した場合に作成される書類で、調停で成立した内容が記載されているものです。

 特定調停の調停調書

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特定調停を利用すると、債権者との間で借金返済額と返済方法を決め直すので、両者に合意ができれば最終的に調停が成立します。

調停が成立した場合、口約束にしておくことはできないので、きちんとその合意内容を書類に残しておく必要があります。そこで、特定調停での合意内容をまとめた書類が「調停条項」なのです。

調停条項には、申立人(債務者)と相手方(業者側)の間で定めた合意内容が記載されます。具体的には、借金がいくら残っていて、その支払い方法をどうするかということが記載されます。

たとえば借金残額を30万円として、それを毎月3万円ずつ30回払いする内容で合意ができたのであれば、調停条項にはその旨記載されます。

また、調停が成立した場合には、その内容以外には互いに債権債務関係がないことを明らかにしておく必要があります。そうしないと、後日「やはり別の債務(債権)もあった」などと言い出して、争いが再発する可能性もあるからです。

よって、調停調書には、「本調停条項に定める以外、申立人と相手方には互いに債権債務関係がないことを確認する」という内容の条項が入れられるのが普通です。このような確認条項のことを、「精算条項」と言います。

特定調停が成立すると、裁判所において速やかに調停調書が作成されます。そして、できあがった調停調書は申立人の自宅と相手方の住所に送られてきます。

申立人や相手方自身が作成する必要はありませんし、作成のために印鑑も要りません。

調停調書の意味

特定調停で作成される調停調書には、どのような意味があるのでしょうか?

まずは、特定調停で合意された内容を明らかにして、証拠を残す意味があります。せっかく特定調停で合意をしても、その内容を裁判所に残しておかないと、後から「そんな約束はしていない」と言われてしまうおそれもあります。

次に、調停調書は裁判所の記録としての意味もあります。裁判所では、いつどのような事件が起こったかと言うことが管理されていますが、調停調書を作ることによって、そのような内容の事件があったことが裁判所に記録されます。

また、調停調書が作成されていると、自宅に送られてきた調書を紛失してしまった場合にも再発行してもらうことが可能です。

調停調書を発行してもらいたい場合には、裁判所に調停調書の謄本請求をします。そうすると、印紙代が数百円かかりますが、すぐに調停調書の謄本が交付されます。

調停調書の効力

特定調停の調停調書には、どのような効力があるのでしょうか?

この場合、一番大きな効力は「強制執行力」です。強制執行力とは、いわゆる差し押さえをする効力のことです。調停条項には、特定調停で決まった借金の支払い方法が記載されますが、その場合、通常2回分以上などの滞納をすると、分割払いができなくなって一括払いをしなければならない旨定められることが普通です。

すると、当然債権者は、調停条項にもとづいて、借金残金の一括請求をしてきます。この場合、債権者は債務者に対して、いきなり強制執行をすることができます。具体的には、債務者の財産の差押をして債権回収ができるのです。

差し押さえの対象になるのは、債務者名義の預貯金や生命保険、不動産や有価証券などあらゆる財産であり、勤務先での給料まで差押えられる可能性があります。調停調書には、裁判をした場合の判決書と同じだけの強制執行力があるのです。

もし任意整理をして単に当事者同士で合意書を作成しただけなら、債務者が滞納したからといって債権者がいきなり強制執行をすることはできませんが、特定調停で調停調書が作成された場合には、その内容に従っていきなり財産の差押を受ける効力があるので、充分注意する必要があります。

調停調書の内容を守らない場合

特定調停で決まった借金返済が、後日苦しくなることがあります。このように、特定調停の調停調書の内容を守らない場合には、何が起きるのでしょうか?

この場合には、先にも説明したとおり、債権者から借金残金の一括払い請求が行われます。借金を長期滞納することによって期限の利益(分割払いのこと)を喪失するので、分割払いができなくなるからです。

また、調停調書には強制執行力があるので、債権者は、特に支払の督促をすることもなく、いきなり財産を差し押さえてくることもあります。

調停調書にもとづいて強制執行を行う場合には、特に事前の通知をする必要はないからです。よって、調停調書の内容を守らないと、給料などがいきなり差し押さえられてしまうおそれがあります。

給料が全額とられることはありません(通常は手取金額の4分の1までが差し押さえられる)が、それでも生活に対する影響は重大です。

特定調停を利用する場合には、くれぐれも支払ができなくならないように慎重に合意内容を検討して、いったん決まった合意内容は必ず守る必要があります。

調停調書通りの支払ができない場合の対処方法

調停調書通りの支払ができないと、債権者から給料やその他の財産を差し押さえられる可能性があります。

そうなると生活もままならなくなるので、何らかの対処をとる必要があります。調停調書通りの支払ができない場合には、どのような対処方法があるのでしょうか?

この場合には、速やかに新たな債務整理手続きを利用すべきです。特定調停の支払が難しい状態であれば、再度特定調停をしたり任意整理する方法は難しいことが多いので、通常は弁護士に依頼して個人再生自己破産手続きを利用しましょう。

個人再生や自己破産の手続き開始決定があると、その後は債権者から差し押さえが行われることもありません。また、いったん差し押さえが起こっていても、その手続を止めることもできます。

早めに対処をとらないと、調停調書にもとづく強制執行が行われて状況が悪化してしまいますので、調停調書通りの支払が苦しい場合には、なるべく早期に対処することが必要になります。

まとめ

今回は、特定調停の調停調書について解説しました。特定調停を利用すると、債権者との合意内容をまとめた調停調書という書類が裁判所で作成されます。

調停調書には、調停で決まった借金返済額と返済方法が記載されます。調停調書通りの支払ができないと、債権者からいきなり預貯金や給料などを強制執行(差し押さえ)されるおそれがあります。

調停調書とおりの返済が苦しい場合には、個人再生や自己破産などの別の債務整理手続きを利用することによって解決ができます。

特定調停後の支払いが苦しくなったら、実際に支払ができなくなる前に、早めに対処しましょう。

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