
監修者
元弁護士ライター 福谷 陽子
特定調停は、債務整理の中でももっとも費用の負担が少なく済む手続きです。
ほかの方法と異なり、債務者自身が行なうことができますので、弁護士費用をかけずに借金の整理ができます。
一方、書類の用意や裁判所への出廷などの手続きをすべて自分でしなければいけないため、手間や労力がかかる点がデメリットです。
特定調停の流れや、メリット・デメリットなどについてご紹介していきます。
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目次
特定調停とは?
特定調停は、簡易裁判所の仲介のもとで債務者と債権者が話し合い、借金の額や返済方法などを見直す手続きのことです。任意整理と同じく、おもに利息や遅延損害金をカットしてもらえるよう交渉します。
特定調停が任意整理と大きく異なるのは、弁護士を立てずに自分で行なえる点です。そのため、任意整理よりも費用負担は少なく済みます。
ちなみに、特定調停も弁護士に依頼することはできますが、そうなると任意整理と変わらない費用がかかりますので、弁護士を立てるなら最初から任意整理を選ぶことが一般的です。
特定調停の流れ
特定調停は、以下のような流れで進められます。
- 申し立て
- 調査(申立人への事情聴取)
- 調停(およそ3~4回)
→ 合意に至れば、調停調書の作成
→ 合意に至らなければ、調停不成立
特定調停は、まず債務者が必要書類をそろえて「特定調停申立書」を作成し、それを債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に提出することから始まります。
きちんと書類がそろっていれば、申し立てが受理されたことを示す「事件受付票」がその日のうちに交付されます。
その後、裁判所は通常2~3日中に、各債権者に特定調停が申し立てられたことを知らせる通知を送付します。通知を受け取った時点で、債権者は債務者に対して直接の取り立てを行なうことはできなくなります。
また、申立人には「調査期日」の通知がとどきます。この場合の調査とは、裁判所から選任された調停委員によって、申立書の内容をくわしくヒアリングされることです。
そして調査からおよそ1ヶ月後に、第1回目の調停が行なわれます。債務者と債権者はそれぞれ別室に待機し、順番に呼び出されて調停委員に主張を伝えるため、双方が直接顔を合わせることはありません。
第1回調停は、新しい返済計画を立てるために今後交渉を重ねていくか、それとも調停不成立になるかの大きな分かれ目となりますが、話し合いがうまく進まない場合でも、裁判所の権限で解決のために必要な決定を行なうことができます(通称「17条決定」)。
この決定には調停成立と同じ効力があるため、異議申し立てをしない限り特定調停に同意したものとみなされます。
債権者によっては、最初から17条決定に従う旨の上申書を提出しており、第1回調停には出席しないこともあります。
ただし、債権者から17条決定に対して異議申し立てがあった場合は調停不成立となるため、ほかの債務整理を考えなくてはいけません。
新しい返済計画を立てることで合意した場合は、さらにくわしい内容を決めるために第2回調停へと進みます。特定調停が開かれるのは大体月に1度のペースで、およそ3~4回の調停で最終合意に至ることが一般的です。
返済計画がまとまると調停調書が作成され、債務者はその内容にしたがって返済していくことになります。
特定調停のメリット
特定調停のおもなメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
債権者からの督促や返済がストップする
上述したように、特定調停の申し立てがあったことを知らせる通知を受け取った時点で、債権者は債務者に直接的な取り立て行為を行なうことはできなくなります。
また、特定調停の期間中は一時的に返済の義務がなくなるため、債務者は経済的にも楽になります。
調停委員を通して話し合いができる
債権者と直接交渉する任意整理と異なり、特定調停では調停委員が間に入ってくれるため、弁護士を立てなくてもスムーズに話し合いができます。
費用が安い
特定調停の大きなメリットが、費用の安さです。
任意整理の場合、弁護士費用として債権者一社につき20,000~40,000円がかかりますが、特定調停は自分で手続きできるため、交通費や切手代、印紙代などの実費(数千円程度)で済みます。
交渉したい債権者を選べる
特定調停は任意整理と同じく、一部の債権者だけを選んで行なうことができます。
たとえば車や住宅のローンを組んでいる場合、それらのローンを整理の対象から外すことで、引き続き車や住宅を所有することが可能です。
これに対し、個人再生と自己破産では債権者を選んで整理することはできません。
特定調停のデメリット
一方、特定調停には以下のようなデメリットがあります。
手間と労力がかかる
特定調停を自分で行なう場合、必要書類の準備や申立書の作成、裁判所への出廷などをすべて一人でする必要があるため、弁護士に手続きを代行してもらえるほかの債務整理に比べるとやや面倒です。
最初の申し立てを含めると、少なくとも3~4回は裁判所に足を運ぶ必要がありますし、調停は平日の日中に行なわれますので、人によっては仕事を休まなくてはいけません。
必ずしも希望通りの合意ができるとは限らない
特定調停を申し立てても、債権者によっては交渉がうまくいかないこともあります。
中には利息のカットに応じてくれない債権者もいるため、その場合は返済額があまり変わらない可能性も考えられます。
また、間に入ってくれる調停委員も弁護士のような専門家ではないため、調停能力に個人差がありますし、必ずしも申立人に協力的であるとは限りません。
そもそも、債権者が交渉に応じず調停不成立になる可能性もあります。
過払金の返還請求は別に行なう必要がある
特定調停は、あくまで借金の返済計画を見直すための手続きですので、過払い金が発生している場合は返還請求を別に行なう必要があります。その場合、結局は弁護士に依頼することになるかもしれません。
また、調停調書の中に「一切の債権債務がない」などの文言が盛り込まれていると、過払い金請求ができなくなることもあるため注意が必要です。
督促が止まるまでに日数がかかる
任意整理の場合、弁護士に依頼した時点でほぼその日のうちに督促が止まりますが、特定調停の場合は裁判所から各債権者に通知が届いてから督促がストップします。
特定調停を自分で行なう場合、申立書の作成だけでも時間がかかることが多いため、その間は督促が続くことになる点がデメリットです。
返済が滞ると強制執行されることがある
特定調停の最後には、合意した内容を記した調停調書が作成されますが、この調書は裁判での判決と同じ効力(強制執行力)を持ちます。
そのため、もし決められた返済を滞らせてしまうと、債権者に給与や財産などを差し押さえられてしまうおそれがあります。
まとめ
特定調停は、債権者が自分で行なえる唯一の債務整理です。
弁護士を立てないため、費用をかけずに借金を整理できる点が最大のメリットですが、一方でほかの方法に比べると手間や労力がかかる点がデメリットになります。
特に過払い金が発生している場合は別途手続きが必要になりますので、余計に面倒です。また、債権者が利息をカットしてくれなかったり、そもそも交渉に応じなかったりする可能性もあります。
このように、特定調停は必ずしも使い勝手のいい方法とはいえないため、最近は申立件数が減少しています。
場合によっては、弁護士に任意整理を依頼したほうがいいケースもありますので、まずは法律事務所の無料相談を利用するなどして、どの債務整理がベストなのかアドバイスしてもらうことをおすすめします。